〈月収77万円〉59歳の大企業部長、60歳定年「再雇用」か、それとも「退職」か…会社を去る人たちの自滅パターン「何か間違いでは」
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年5月23日 7時15分
会社に残るか、それとも去るか……人生の岐路に立たされている、定年間近のサラリーマン。そこで突発的に退職を選んだばかりに、最悪の結果を招く場合も。みていきましょう。
60歳定年…「退職を決意するサラリーマン」は10人に1人
2013年、65歳までの雇用機会を確保するための法改正が行われました。2025年4月以降は、「①65歳までの定年の引き上げ」「②定年制の廃止」「③65歳までの継続雇用制度の導入」いずれかの措置を講じることが企業の義務となります。さらに2021年には、70歳までの就業機会を確保することが努力義務となりました。
厚生労働省が令和4年に行った調査では、定年制を定めている企業は94.4%で、60歳定年としている企業は全体の6割強。サラリーマンの多くが、60歳をひとつの区切りとしています。
60歳定年としている企業の多くが、本人の意向に基づき再雇用。正社員から嘱託社員や契約社員と雇用形態を変えて、同じ会社で活躍をしてもらっています。
定年を機に会社を去るか、それとも再雇用を希望するか……企業によって対応は異なりますが、通常、定年半年前までに本人に意思確認、そのうえで、定年3ヵ月前までに確認書の提出を求めるのが一般的です。
厚生労働省『令和5年高年齢者雇用状況等報告』によると、60歳定年到達者のうち、定年退職者(継続雇用を希望しない人)は12.5%。圧倒的多数が継続雇用を選択しています。
60歳定年を機に会社を選択するサラリーマン。選択の理由はさまざまです。
――40年近くも働きづめだったから、一度リフレッシュしたい(再就職の意志あり)
――仕事ばかりだったから家族との時間を持ちたい
なかでも、
――もう働き続けるモチベーションがない
――ここには自分の居場所はない
そう感じて退職を決意するサラリーマンも。特に定年を機に役職から外れるなど、変化が大きい人ほど、定年のインパクトは大きく、モチベーションを保つのが難しかったり、疎外感を覚えるなどして「定年退職」→「現役引退」を選ぶケースも多いようです。
大企業の部長でも「定年退職後」にまさかの老後破産
定年を境としてモチベーションが下がる要因のひとつが給与。厚生労働省の調査によると、大卒・大企業に勤務する59歳の部長職であれば、平均給与、月収で77.7万円、賞与も含めた年収は1,318.5万円にもなります。それが60歳定年で再雇用。役職なしの非正規社員になると月収は31.4万円、年収は519.5万円と、定年前の4割以下に……これでモチベーションを保て、というほうが無理な話です。
さらに元上司と元部下のコミュニケーションも難しいもの。「いつまで上司面しているのか……」と、元部下に陰口を叩かれることもあり、なんとも微妙な空気が漂うことも珍しくありません。
――こんな惨めな思いまでして、この会社にしがみつかなくても……
そう考えて、定年で会社を去る決意をするケースも珍しくありません。
仕事も意欲もあがらず、会社での雰囲気も微妙……そんな状況から逃れるためにも、定年で現役引退という選択肢も現実的です。しかし、きちんとしたマネープランのもと決断をしないと、最悪、老後破産というパターンもゼロではありません。
現在、公的年金の支給は原則65歳から。そのため60歳定年退職後、無収入の期間が5年間あります。その間、退職金や貯蓄を取り崩して生活していくことになります。
総務省の調査によると、世帯主60~64歳・無職(世帯人数2.51人)の1ヵ月の消費支出は28万5,152円。1年間で342万円かかる計算です。5年間では1,710万円ほどかかる計算になります。無収入の5年間は、これだけのお金がただ消えていくのを眺めている生活になります。
【世帯主60~64歳・無職世帯の1ヵ月の平均支出】
■消費支出
28万5,152円
(内訳)
食料:77,714円
住居:23,101円
光熱・水道:24,661円
家具・家事用品:12,838円
被服及び履物:6,405円
保健医療:13,602円
交通・通信:42,646円
教育:1,126円
教養娯楽:29,105円
その他の消費支出:53,954円
さらに住宅ローンがまだ残っていたら……平均的な住居費は2万3,101円。この数値には持ち家も賃貸も、ローン有もローン無、すべてひっくるめての平均。ローンを抱えていればさらに支出は大きくなります。そのような状況で無収入の5年を乗り越えることができるでしょうか。乗り越えられたとしても、その先の年金生活は苦しいものになります。
また前々から定年退職を決めていたのであれば、「家計の見直し」→「サイズダウン」ができますが、何の準備なしに退職を決め現役時代の感覚を引きずっている場合は最悪です。定年後に邪魔になるのは、サラリーマン時代の“見栄”。大企業の元部長、高給取りにふさわしい暮らしをしていたり、何かにつけて「支払いは私が」と、良い格好をみせていたり。見栄っ張りせいで支出がかさみ、生活水準も落とすこともできず。どんなに退職金が高額であっても、どんなに貯蓄があっても、無収入の5年間でスッカラカン。「こんなことになるなんて……何かの間違いでは?」と後悔したところで老後破産は確実です。
――家計の見直しを行い、定年後の生活設計もバッチリ
――無収入の5年間はもちろん、年金生活者になった後も困らないだけの貯蓄もある
――「大企業の部長だったんだぞ」という過去の栄光も捨てることができる。
そんな準備万端で定年を迎えることができるのであれば、60歳の定年とともに会社を去る選択をしても問題ありません。無収入の5年間も楽に乗り越えることができ、年金を受け取るようになる老後も安泰です。
[参考資料]
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