二次相続では「相続税負担」が大きくなる?…税対策に「生命保険」の活用が有効なワケ
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年5月24日 11時45分
(※写真はイメージです/PIXTA)
最初の相続(一次相続)は、配偶者と子どもが遺産を相続しますが、その配偶者が亡くなった後に発生するのが「二次相続」です。この二次相続では、相続税の負担が大きくなる可能性が高いため、事前に十分な対策を講じることが重要です。本稿では、なぜ二次相続で相続税の負担が増えるのか、そしてどのような税対策が有効かについて詳しく解説します。
二次相続と一次相続の違い
亡父から遺産を引き継いだ母親が亡くなれば、その子どもは相続の手続きを行います。子どもが父親の遺産に続き、母親の遺産も引き継ぐ状態を「二次相続」と呼びます。
一次相続の場合は子どもと母親が法定相続人です。しかし、二次相続では法定相続人が子どものみとなります。
その分、相続税の軽減措置の利用が狭められ、相続税負担が大きくなる可能性もあります。
二次相続で相続税負担が大きくなる理由
二次相続では相続税負担が大きくなる可能性もあり、事前に相続税の軽減措置を取る必要があります。相続税負担が大きくなる理由は次の通りです。
相続税の控除制度の利用が制約される
相続税には基礎控除という税負担の軽減措置があります。こちらの基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」なので、両親とも亡くなり子どもだけが法定相続人になると、その分控除額は小さくなります。
例えば、一次相続の時点で母親と子ども(1人)が法定相続人の場合、
3,000万円+600万円×2人=4,200万円
相続税の基礎控除額は4,200万円です。
しかし、二次相続の時点で子ども(1人)が法定相続人の場合、
3,000万円+600万円×1人=3,600万円
相続税の基礎控除額は3,600万円となり、600万円もの差が出てしまいます。
また、一次相続の際は「配偶者控除」という極めて大きな相続税の軽減措置も利用できました。
配偶者控除とは、被相続人の配偶者が引き継いだ遺産のうち、課税対象となる額が
・1億6,000万円
・配偶者の法定相続分相当額
のいずれか多い金額までなら、相続税が非課税となる措置です。この控除制度は配偶者に限定されているため、子どもは利用できません。
子どもが引き継ぐ遺産が大きくなる可能性がある
一次相続では子どもの他に親も法定相続人となっており、その親が配偶者控除を活用し、被相続人の遺産の多くを非課税で引き継いだケースもあるでしょう。
一次相続以後の、次のようなケースでは注意が必要です。
例えば一次相続の法定相続人であった母親が働いていたら、その収入を預金するなどして、母親も資産を形成していた可能性があります。
二次相続では、母親が一次相続で引き継いだ遺産に加え、母親が蓄えてきた資産も合算されるため、相続財産が多くなるケースも想定されます。
相続財産が増えれば、その分、相続税の負担も大きくなるおそれがあります。
二次相続で起こりうる遺産分割争い
二次相続では子どもだけが法定相続人となりますが、次のようなトラブルが懸念されます。
遺産分割協議でなかなか話が進まない
子どもが1人ではなく複数いる場合、兄弟姉妹で遺産分割の際に誰が遺産を引き継ぐかで揉める可能性もあります。
また、親である被相続人が特定の子どもに一定金額の遺産を引き継がせたくとも、兄弟間の遺産分割の話し合いによっては、親の希望通りにいかない場合もあるでしょう。
そんな時は、遺言書で各相続人の遺産分与について指定しておくか、別の方法で対応する必要があります。
相続財産によっては誰も引き継がない状況もある
一次相続では被相続人の残した土地・建物を配偶者が引き継ぎ、預金・現金は子ども達が引き継ぐ形で遺産分割を取り決めたケースもあるでしょう。
しかし、土地・建物を引き継いだ配偶者が亡くなり、二次相続が発生した場合、相続財産である土地・建物をどうするかで揉めてしまうおそれがあります。子ども達が既に独立し、それぞれがマイホームを持っているなら、親の残した土地・建物を誰も引き継がない可能性はあります。
そのため、親が生前に土地・建物を売却後、シニア向けの賃貸マンション(例:サービス付き高齢者向け住宅)に住み、売却代金を遺産分割しやすい金融資産として残す等、工夫が必要です。
生命保険は二次相続の対策になるのか?
二次相続が発生し、子どもたちに重い相続税を負担させたくない、遺産分割協議で揉めるような事態を避けたい、子どもたちが分割し易いように資産を残したい、という場合は「生命保険」の活用を検討してみるのも良いでしょう。
生命保険とは生命保険会社が販売している任意保険です。二次相続の対策として加入する生命保険の場合、死亡保険金が下りる保険商品を選びます。
該当する保険商品は死亡保険(終身保険・定期保険)、養老保険、個人年金保険等があります。
二次相続対策のために生命保険を活用するメリット
二次相続の対策として生命保険に加入するメリットは、以下の通りです。
死亡保険金には非課税枠がある
生命保険から下りる死亡保険金には「非課税枠」が設定されています。非課税限度額は「500万円×法定相続人の数」なので、法定相続人2人ならば1,000万円もの非課税枠が利用可能です。
非課税枠は保険金受取人が相続人の場合に適用されるので、子どもを受取人にすれば相続税の軽減措置が受けられます。
平等に相続財産を分けやすい
遺産分割協議で誰が遺産をどのくらい取得するのか、兄弟間で揉めそうなときも、生命保険の活用は有効な方法です。
死亡保険金は受取人固有の財産なので、遺産分割協議の対象外となる財産であり、自分が渡したい人へ確実に財産を残せる方法です。
また、複数の保険金受取人を設定できるので、保険金額を平等に分割し、子どもたちに取得させることもできます。
生命保険を二次相続の対策に活用する方法
まず被相続人が生命保険会社と保険契約を締結します。
その際に、保険契約書や契約画面(インターネット申込の場合)で、死亡保険金の受取人を指定します。子どもを受取人に指定していないと、二次相続対策にはならないので注意しましょう。
受取人の指定の際は、1名だけを指定しても、複数人を指定しても構いません。また、保険加入後に保険金受取人の変更も可能です。
受取人に指定するとき当人の同意は不要です。ただし、事前に「自分の保険金の受取人を○○にしている」と受取人に伝えておいた方が、相続開始の際はスムーズに保険金請求手続きが行えます。
保険金請求後は、生命保険会社から早ければ即日、遅くても10日程度で受取人に保険金が支払われます。
死亡保険金は受取人の固有の財産なので、相続発生の際、金融機関から被相続人の預金口座を凍結されるような状況にもなりません。
生命保険を二次相続対策として活用した事例
母親の二次相続時には、多額の相続税負担となる可能性があったため、生前贈与および生命保険を利用した事例を紹介します。
【生命保険活用の背景】
母親は子ども3人の同意のもとで、配偶者控除を利用し、亡父の相続財産をすべて引き継ぎました(一次相続)。
配偶者控除で相続税の負担は0円に抑えられましたが、二次相続の際は子ども3人へ多額の相続税負担となる事実が判明します。
【生命保険等の活用】
母親と子ども3人は次のような対応を考え、実行に移します。
・母親は生命保険に加入し、保険金受取人を子ども3人にして、保険金額を平等に分けられるよう設定
・遺産分割が難しい土地・建物を売却し、売却代金を生命保険料にあてる他、子ども3人に生前贈与し、徐々に相続財産を減らしていく
【二次相続対策の効果】
生命保険を二次相続対策に活用したので、遺産分割協議の対象となる相続財産を可能な限り減らすことができ、将来の相続トラブル回避につながります。
また、相続税の基礎控除に加え死亡保険金の非課税枠(1,500万円)も適用され、大幅に税負担を下げる効果も期待できます。
生命保険を用いた二次相続対策のポイント
相続対策では終身保険が最適
死亡保険金が下りる生命保険は、各生命保険会社から数多く販売されています。
その中でも、「終身保険」が二次相続対策に最適です。
終身保険とは一生涯にわたり死亡保障が受けられる生命保険です。つまり、何歳で被保険者が亡くなっても確実に保険金は受取人へ支払われます。
一方、生命保険には「定期保険」という、一定期間にわたり保障される保険もあります。しかし、この保険には契約更新の上限年齢が設定されているので注意しましょう。
例えば「被保険者が90歳になれば保険契約終了」と取り決められ、所定の上限年齢を超えた場合、契約は失効し、保険が継続できないばかりか、これまで払い続けた保険料も戻ってきません。
契約条件をしっかり確認する
生命保険を契約する際は、複数の保険商品の保障内容(例えば保険金設定は何千万円まで可能か等)を比較し、最も自分にあった保険を選びましょう。
なお、加入できる年齢を超えていないか、健康告知項目(例:持病の有無や、手術歴等)に該当していないかをよく確認した上で申込をしましょう。
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