憧れの「タワマン暮らし」だが…絶対に「やめておいた方がいい人」の特徴とは?
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年5月25日 11時30分
(※写真はイメージです/PIXTA)
タワマンの価格の上昇が止まらない。「オリンピック終了後は不動産が暴落」との噂を聞き、マンション購入を延期した人もいるかもしれないが、価格は下落するどころか上がる一方だ。ひと昔前、いわゆる「億ション」は一等地にあるマンションの部屋のほんの一部というイメージだったが、いまは人気エリアにあるタワマンの高層階や広い部屋の多くは1億円を超え、もはや億ションも特別感のない言葉となった。このような状況下、タワマンは、腹の足しにもならないステータスや、すぐに見慣れる眺望を理由に、生涯がんじがらめのローンを組んでまで買うべきものなのか。
所有者の「優越感」を心地よく刺激する、タワマン
家とは本来、快適な生活を送るために購入するもの。しかし、家を買ったがために、毎月のローン返済に追い詰められ、馬車馬のごとく働かざるを得ない…。そんな状況に陥っているタワマン住まいの人は、決して少なくない。
かわいいわが子が生まれても、仕事に追われて一緒に過ごす時間が持てなければ、なんのためにマイホームを買ったのかわからなくなってしまう。背伸びした結果のタワマン購入・ペアローンで、そんな状況になっては本末転倒だ。
しかし、逆に不思議でもある。少し考えれば、共働き前提のシミュレーションでは、出産などのライフイベントで収入が減って苦しくなると予測できそうなのに、なぜタワマンを購入したくなるのか。ほとんどの人にとってマイホームは人生最高額の買い物であるはずなのに、なぜ先々のことまで考えず、高額なタワマンを購入してしまうのか?
ホテルのような豪華なエントランス、充実したワーキングスペースに、プール、ジム、パーティールーム、ゲストルームといった、行き届いた共用施設。駅直結などの利便性。プラス、一般のマンションが追随でいない高層階の開けた眺望があれば、人気が高いのも頷ける。
湾岸エリアの人気のタワマンは、都心に近く利便性があり、名前からもわかるとおり、眺望は海を見渡せる「絶景」だ。眺望のすぐれた部屋は人気が高く、高値で取引されている。
実際、ここ数年の値上がりは顕著で、人気タワマンのひとつである「パークタワー勝どき」を例に挙げると、2020年の一次販売では多くの部屋が坪単価400万円だったのに、現在売り出されている市場価格を見ると、1,000万円超えも珍しくない。
だが、そのような不動産としての充実ぶりや資産性の高さだけが、購入への動機ではない。
強弱には個人差があるだろうが、人には自分の優位性を示したいという気持ちがある。そして、多くのタワマンは、周囲から羨まれる立地に建設され、見た目も共用施設も豪華で、なにより所有できる人は限られている。「そんなタワマンに住める自分」という優越感、そして「タワマンに住んでいます」というだけで、周囲に収入の高さ(=いまの日本における社会的ステータスの高さ)をアピールできる。「かっこいい!」「すごい!」「羨ましい!」といった、周囲からの羨望の言葉からも、存分に優越感をくすぐられるのではないか。
賢い人は気づいているタワマンの落とし穴
しかし一方で、賢い人は「マイナスの側面」に気付いている。たとえば、災害時のエレベーター問題だ。さすがに地震でタワマンが傾くと思っている人はいないだろうが、エレベーターの復旧には時間がかかる可能性が高い。
止まれば階段を歩くしかないのだが、いうほど簡単ではない。買い物や仕事など何かしらの荷物を持った状態で、階段を一歩一歩上がることを想像してみてほしい。住んでいるのが10階ぐらいなら汗をかく程度ですむかもしれないが、もし30階、40階、50階だったら? 年齢にもよるが、ほとんどの人は体力的に無理なのではないか。
水道が止まり備蓄もなくなれば、飲料水を階段で運ばなければいけない。もし家族4人で3日分必要な水を確保しようとすると、単純計算で36kg(4人×3リットル×3日)の重さになる。そもそも、災害時にそれだけの水を確保できるのかという問題はあるのだが。
2019年の台風19号で武蔵小杉のタワマンが水没した際には、地下にあった電源設備も落ちてしまい、エレベーターが止まり、全館が真っ暗に。加えてトイレも利用不可となったのは、ニュースでも大きな話題になった。
ほかにも、通勤の時間帯はエレベーターの混雑で、部屋からエントランスまで時間がかかる、管理費・修繕積立金が高額になる、駐車場に移動するまでが大変…などなど、実生活におけるさまざまなデメリットがあるケースも。建物の外に出ること自体に時間がかかるなら、自慢の駅近メリットも半減ではなかろうか。
絶対に「タワマン住み」をやめるべき人の特徴
上記のようなマイナスの部分を踏まえると、おのずと「タワマン暮らしをやめるべき人」が見えてくる。
例えば、小さな子どもがいる家族。保育園に連れて行く時間帯にエレベーターが混雑すれば、外に出るのも一苦労だ。しかも、ようやくエレベータを降りたタイミングで、
「あっ、連絡帳を忘れたわ!」
「ママ、おトイレ!」
そんな事態になれば目も当てられない。
また、一戸建てと違い、玄関を出てすぐに車に乗れない点もデメリットだ。もちろん災害時も食料の問題など、子どもがいるとケアするポイントも多い。
ほかにも、高層階は洗濯物を外で干せない、宅配ボックスの受け取りが面倒、隣接する部屋の騒音が気になる人にはおすすめできない。高額な維持費(管理費・修繕積立金)がローン返済とは別に徴収されることも踏まえると、それなりの金銭的なゆとりがない限り、ストレスを抱えないためにも、タワマンをあきらめたほうが身のためかもしれない。
いつまでも価格が上がり続けるとは限らない
タワマンは、その他の建造物と比較してもまだ歴史が浅く、メンテナンス面も運営面も、将来的に不確定な部分が多くある。なかでも大規模修繕は懸念点だ。実例が少なく、予想以上の修繕費が発生するなどして、追加徴収される可能性も考えられる。おしゃれで豪華な外観で、形状も複雑となれば、清掃や修繕の難易度は上がり、費用が通常より多く発生することも十分ありうる。
このような不安な要素が点在するものの、資産価値は上がり続けているから問題ないと考える人もいる。都心のタワマンは海外主要都市と比較すれば相当な割安ともいわれており、まだまだ上昇すると楽観的な予想をしている人も多い。
だが、投資に絶対がないのと同様、このままタワマンの価格相場が上がり続けるとは限らない。歴史的な円安局面により、海外投資家の参入が価格上昇を支えている面もあるが、何かの拍子にひっくり返る可能性もある。例えば地震だ。もし震災が起きれば、海外投資家は一斉に手を引くだろう。
「絶景の眺望を見て感じる自己充足感」「周囲の羨望の眼差しを浴びる優越感」…。これらの優先度が高い人を除いては、タワマンをマイホームにする前によく考えてみてほしい。リスクとリターンを冷静に判断できる賢い人の一部は、“負動産”になる可能性をはらむタワマンに手を出していないのである。
七海 碧
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