会社に届いた行政からの「指導書」…無視したらどうなる?→弁護士の回答
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年6月4日 10時15分
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(※写真はイメージです/PIXTA)
行政や役所から突然文書が届くと、どのように対応すればよいのか戸惑うこともあるでしょう。行政から文書によって何らかの指導・勧告がされる場合、その内容が法的にどのようなものなのかは、個別の文書によって異なります。もしこのような文書を無視したらどうなるのか、また、その内容に不満があった場合はどのように対応すればよいのか、Authense法律事務所の西尾公伸弁護士が解説します。
勧告書を無視したらどうなるか
行政・役所から「勧告書」「指導書」といった表題の文書が届くことがあります。
一般的にもなじみ深い例でいえば、労働基準監督官が事業所調査や臨検をした場合において交付される「指導票」「是正勧告書」などです。
このような労働関連法令に関わること以外でも、行政から「勧告書」などといった文書を交付する例はたくさんあります。
これらの文書の性質は、後述のとおり、一概にはひとくくりにできない面もありますが、ある程度は分類することも可能と思われます。
行政から勧告書・指導書などが届いた場合、もしかすると、無視してもよいのではないかと考える方もいるかもしれません。
仮に、勧告書・指導書などを無視した場合、どうなるのでしょうか。
⑴そもそも勧告書とは
行政から文書によって何らかの指導・勧告がされる場合、当該文書の表題は、「勧告書」以外にも、「指導票」、「指導書」、「是正勧告書」、「是正指導書」など、様々なものがあり得ます。
行政からの指導・勧告が法的にどのようなものなのかは、文書の表題よりも、文書の内容を見る必要がありますので、厳密には、個別の文書の内容を見てみないと断言はできません。
一般論としては、「勧告書」などでなされている行為は、法的には、それを単体で見れば、いわゆる「行政指導」というものに整理できます。
「行政指導」は、法的には、指導を受けた者に義務を負わせるものではありません。
したがって、語弊を恐れずに言えば、あくまでも、「行政指導」に従うか否かは、任意に決めることができることになります。
しかし、「任意」ということは、あくまでも、その指導・勧告を単体でみた場合のことで、本当に「任意」に判断してよいのかどうかは、根拠法規の仕組みを調べる必要があります。
⑵根拠法規の仕組みを調べる必要がある
根拠法規の仕組みを調べてみると、勧告などに従わなかった場合にどのようなことになるかが規定されている場合があります。
具体的には、勧告などに従わない場合に、①公表されるケース、②許認可などを取り消されるケース、③他の許認可が取れなくなるなどの不利益を課されるケースなどがあり得ます。
また、法令には定められていないものの、行政の内規によって、④命令などの行政処分をする前段階として勧告などの指導を行うと定められているケースもあります。
この場合には、後続の行政処分が予定されているといえます。
さらに、⑤勧告などに従わない場合の不利益などは法定されていないものの、事実上、勧告に従わないことによっていわば行政から目を付けられた状態となり、立入検査などを受けるケースもあり得ます。
いずれにしても、勧告などに従わない場合には、一般論としては、不利益を受けるリスクがあるといえます。
行政の勧告に不服がある場合、どうすればよいのか
それでも勧告書などに不服がある場合には、どうすればよいでしょうか。
勧告などに不服がある場合にどのような法的手段を採るべきか、どのようなタイミングで対応すべきかは、当該勧告などの根拠法規、関連法令や裁判例を調べ、検討しなければ分かりません。
考えられる法的手段の例としては、以下のようなものがあります。
1.後続処分の行政手続(聴聞・弁明の機会の付与)において処分を阻止すべく対応する。2.後続処分の差止め・仮の差止めを申し立てる。
3.後続処分がされた後に取消訴訟を提起し、執行停止を申し立てる。
4.勧告の取消訴訟・執行停止を申し立てる。
5.勧告に従う義務のないことの確認訴訟を提起する。
また、行政事件訴訟の場合、訴えの提起などには出訴期間の制限という期限があります。
したがって、素早い対応をすることがとても重要となります。
勧告書などが届いた場合には、これらの手段のうちどれを採用すべきかなどについて、専門的知見に基づいて検討することが必要になりますので、お早めに行政事件訴訟などに詳しい弁護士に相談することをおすすめします。
西尾 公伸
Authense法律事務所
弁護士
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