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高齢の「おひとりさま」はあらかじめ知っておくべし!…認知症に備える〈5つの財産管理方法〉

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年6月2日 11時15分

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(※写真はイメージです/PIXTA)

高齢の「おひとりさま」にとって、財産の管理方法はとても重要です。とくに、認知症になる前にしておいたほうがいい財産管理方法が5つある、と一般社団法人日本ホームステージング協会 代表理事の杉之原冨士子氏はいいます。杉之原氏の著書『おひとりさま最後の片づけ やるべきこと・やらなくてもいいこと』より、詳しくみていきましょう。

認知症と診断されてすぐ口座凍結されるわけではない

認知症になると、銀行口座が凍結されると聞いたことはありませんか? 口座名義人が亡くなった場合、口座が凍結されることはご存知の方が多いと思いますが、認知症になり、判断能力が低下した場合にも口座が凍結されます。

具体的には、預貯金の引き出しや入金、定期預金の解約や契約の変更などができなくなります。これは、判断能力の低下によって、詐欺や口座の不正使用などの犯罪に巻き込まれ、不利益をこうむることがないようにするためです。

口座は、認知症と診断されたからといって、すぐに凍結されるわけではありません。凍結のタイミングは銀行によりますが、口座名義人が認知症であることを銀行が把握し、判断能力が著しく低下している場合に、凍結の処置がされることが多いようです。

認知症になって口座が凍結されたら、医療費や介護費、生活費に使おうと銀行に預けていたお金が使えなくなります。それを未然に防ぐには、どんな対策があるのでしょうか。

〈対策1〉「キャッシュカード」のありかと「暗証番号」を伝えておく

→あまりおすすめできません

銀行口座の凍結対策としてまず思いつくのが、キャッシュカードを保管している場所と暗証番号をお子さんや親族に伝えておき、認知症になった場合に、代わりに預貯金を引き出して介護費用などを支払ってもらう方法です。

この方法で対応している方も実際には多いかもしれませんが、銀行のルールとしては、ATMでの取引も口座名義人本人に限られています。しばらくは、家族がキャッシュカードを使って出金できても、ATMで限度額いっぱいの金額を何度も引き出すなど、利用状況によっては銀行から本人に確認の連絡が入ることがあります。そこで認知症であることを銀行が把握すると、口座が凍結されてしまいます。このほかにも、デメリットは大きく2つあります。

(1)相続トラブルの原因になる たとえば、兄弟が何人かいて、そのうちの一人が親のキャッシュカードを預かっている場合、「自分の支払いに使っているのではないか?」と疑われることがあります。 実際には医療費や介護費を支払うために使っていても、ほかの兄弟には親のお金を独り占めしていると見えてしまい、相続の際に裁判になることもあります。

(2)キャッシュカードの再発行ができないことも キャッシュカードを紛失したり、磁気やICチップに異常があったりして、再発行しなければならないときに、銀行によっては本人でなければ手続きができなかったり、手続きに時間がかかったりすることがあります。 このように、キャッシュカードをお子さんや親族に託して、代わりに口座を管理してもらう方法は、さまざまなトラブルの原因になる可能性があるので、あまりおすすめできません。

〈対策2〉銀行の「代理人」サービスを活用する

→取り扱っている金融機関が限られる

認知症や病気や入院、介護施設への入居などにより本人が銀行へ行けなくなった場合に備え、一部の金融機関では、「代理人」を指名できるサービスを用意しています。預金者本人が元気なうちに代理人を登録しておくことで、本人が銀行へ行くことができなくなった際に、代理人が出金などができるサービスです。代理人を指定後も、本人による取引も可能です。

代理人の登録には、預金者本人による手続きが必要です。指名される代理人の来店が必要かどうかは、金融機関によって異なります。また、代理人として指名できるのは、「2親等以内の親族」など、金融機関によってそれぞれ指定があるため、該当の金融機関に問い合わせが必要です。代理人が行える取引は、普通預金の入出金、定期預金の入出金など、こちらも金融機関によります。あらかじめ確認しておきましょう。

「代理人」サービスのメリットは、利用料などの手数料が基本的にかからないところ。認知症など預金が引き出せない事態に、手軽に備えることができます。ネックとなるのは、導入している金融機関がまだ限られるところです。

金融機関によっては、定期預金を信託に切り替えられる特約を付けておくことで、介護や認知症が心配になった場合に、本人またはあらかじめ指定しておいた代理人が、定期預金を信託に切り替えられる商品を用意しています。

信託に切り替える前は、定期預金として自由に引き出しや預け入れが可能で、生活費やレジャー費など制限なく利用できます。信託に切り替え後は、このあと〈対策4〉で紹介する金融機関の信託商品と同じように、使用用途は医療費や介護費などに限られ、これらの費用の請求書や領収書を銀行が確認することで、お金を引き出すことができます。資産が医療費や介護費などの目的以外に使われることがなく、安心して管理できます。

このように、金融機関によって独自のサービスもありますので、まずは自分が利用している金融機関が「代理人」の指定に対応しているかどうか確認してみましょう。

〈対策3〉「家族信託」を利用する

→士業と呼ばれる専門家に依頼しよう

「家族信託」とは、認知症などによって自分で財産を管理できなくなった場合に備えて、「信頼のおける家族に財産を託し、管理や運用、処分をゆだねる仕組み」のことです。たとえば、あなたが預貯金や不動産などの財産の一部をお子さんに託したい場合、どの資産を、どのように管理・運用・処分し、そこで得た利益を誰のために使うのかといった内容を定めた信託契約書を作成し、お子さんと信託契約を結ぶことによって成立します。

少し専門的になりますが、財産を託す人(今回の例ではあなた)を「委託者」、託された財産の管理・運用・処分を行う人(お子さん)を「受託者」、財産からの利益を受け取る人を「受益者」と呼びます。受益者はあなた自身でも、あなた以外の個人や法人でも、複数人でも指定できます。

家族信託は、法律や税務に関する幅広い専門的な知識が必要となりますので、司法書士や弁護士、行政書士、税理士などの専門家に依頼するのが一般的です。

「家族信託」の3つのメリット

(1)財産を思いどおりに託すことができる あなた(委託者)が、お子さん(受託者)に財産を託す場合、それをどのように管理・運用・処分するか、その利益を誰が受け取るかなどを信託契約で決めておくことができます。受託者のお子さんには、その希望を達成するためのさまざまな義務があり、信託財産を自分のものにしたり、勝手に処分したりはできません。

(2)認知症対策として利用できる 家族信託の大きなメリットは、認知症による銀行口座凍結などのトラブルを未然に防ぐだけでなく、信頼できるお子さんや親族に財産管理を任せることで、あなたの今後の生活も守れるところです。認知症になり判断能力が低下した場合のための制度として、後ほどお話しする「成年後見制度」がありますが、成年後見制度では、財産は基本的に本人のためにしか利用できず、財産の運用も認められていません。

本人が居住する不動産を売却や賃貸に出したい場合には、家庭裁判所の許可を得なければならないなど、財産の管理・運用・処分が制限されることがあります。その点、家族信託では、信託契約で取り決めた目的の範囲内であれば、財産の運用や不動産の処分も自由に行うことができます。

(3)遺言書の代わりに財産の承継・事業継承を決められる 家族信託では、あなた(委託者)が亡くなったときに、信託財産の行く先(承継人)を契約で指定しておくことができ、遺言に残すのと同等の効果が得られます。さらに、承継人が亡くなったあと、残った財産を次に承継する人を決めることも可能です。これは通常、遺言ではできないことです。

「家族信託」の3つのデメリット

(1)身上監護のための契約はできない 家族信託は、あくまでも財産管理の制度のため、受託者に身上監護権(生活・医療・介護などの契約手続きを進める法律行為を行う権利)はありません。この点、成年後見制度では、身上監護のための契約を結ぶことができます。そのため、家族信託と、後ほど詳しく紹介する「任意後見人」をセットで準備しておくと、それぞれの弱点が補完できるのでより安心です。

(2)家族間のトラブルが起こることも 先ほどのキャッシュカードを預けるのと同じように、お子さんが複数人いて、そのうちの一人に財産を託した場合、「自分のために使い込んでいないか」といった疑いが生まれ、トラブルにつながることもあります。 家族信託を行う際には、推定相続人も含めた関係者全員が信託契約の内容を把握して、納得の上で進めていくことが大切です。

(3)信託した財産以外には効力が及ばない 家族信託で契約した財産の管理方法が及ぶのは、契約の際に託した財産のみです。それ以外に、不動産などの財産があり、あなたが亡くなった場合、それらの財産は通常の相続によって分割されます。もし、ほかの財産についても処分の仕方や承継に意向がある場合は、信託財産に含めておきましょう。

〈対策4〉金融機関の認知症に対応した信託商品を使う

→信託できるのは金銭のみ

近年、認知症による預金口座凍結の問題に対応するために、金融機関では、認知症に備えた信託商品を用意しています。これらの信託商品では、あらかじめ金融機関に一定額以上のお金を預け、お子さんや親族などを代理人に指定しておきます。

その後、もし本人が認知症になった場合には代理人が決められた手続きを行い、領収書や請求書を提出することで、医療費や介護費などを金融機関に預けた財産から受け取れるというものです。先ほど説明した、委託者と受託者が信託契約を結ぶ「家族信託」と、金融機関が提供する信託商品には、大きく2つの違いがあります。

一つ目は、家族信託では受託者となったお子さんや親族が託された財産を管理しますが、金融機関の信託商品では金融機関が金銭を預かり管理します。家族は代理人となり、本人が医療や介護を受けるために必要な費用を、金融機関に預けたお金から受け取り、支払いを代わりに行うのが主な役割となります。

二つ目の違いは、信託できる財産についてです。家族信託の場合、金銭や不動産、有価証券など、基本的に信託財産に制限はありません。一方、金融機関の信託商品の場合、預けられるのは金銭のみです。 金融機関により最低の信託金額が決められており、200万から1,000万円の間で設定されていることが多いようです。

このほか、信託の自由度についても、家族信託では自由に内容を決められるのに対し、金融機関の信託商品では、あらかじめ内容が決められており、自由度はほとんどありません。また、費用面についても、家族信託は専門家への初期費用(数十万円以上が一般的)のみの支払いが多いのですが、金融機関の信託商品では、初期費用に当たる信託設定時報酬(信託金額の1.1〜1.65%が一般的)に加えて、毎月の管理手数料や運用報酬などが発生する場合もあります。

このように、金融機関の信託商品は、前述の家族信託とは大きく異なりますが、信託したい財産が金銭のみの場合、口座凍結の対策としては、有効でしょう。

〈対策5〉「成年後見制度」を利用する

→元気なうちに任意後見制度を活用しよう

もし、あなたが認知症などにより判断能力が低下した場合、預金口座が凍結されてお金が引き出せないだけでなく、不動産を売却できなくなったり、介護サービスや施設に入所する契約が結べなかったり、遺産分割協議ができなくなったりと、さまざまな問題が起こります。

訪問販売で不要なものを購入したり、詐欺にあったりする恐れもあります。こうした判断能力が低下した人を保護し、法的にサポートするのが「成年後見制度」です。 成年後見制度には、大きく分けて次の2つのタイプがあります。

⃝ 法定後見制度…すでに判断能力が不十分な人の保護・支援のために家庭裁判所に申し立てを行い、支援する人を選任する制度です。 ⃝ 任意後見制度……元気なうちに将来サポートしてくれる人や内容を決め、あらかじめ契約を交わしておく制度です。

このように、判断能力によって利用できる制度が異なります。判断能力が十分にある場合は「任意後見制度」を利用することになります。

杉之原 冨士子 一般社団法人日本ホームステージング協会 代表理事

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