投資初心者の資産形成術…株式投資「安く買って、高く売る」をシステマチックに実現するスキーム【経済評論家が助言】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年6月2日 9時15分
(※写真はイメージです/PIXTA)
資産形成のため、株式投資を検討する投資家が増えています。株式投資はハイリスクですが、リスクを大きく下げる方法として「投資信託」の積立がお勧めです。そこからさらに効率的に結果を出す方法として、ぜひ知っておきたいテクニックもあります。経済評論家の塚崎公義氏が解説します。
ハイリスクな株式投資も「投信の積立」ならリスクが軽減できる
株式投資にはリスクがありますが、投資信託の積立をすれば、リスクは大幅に減らせます。投資信託を買うということは、数多くの銘柄の株を少しずつ買うのと同じ効果がありますから、そのなかには値上がりする株も値下がりする株もあり、大儲けは狙えなくても大損は避けられるからです。
また、投信を積み立てるということは、毎月買うわけですから、結果として高いときも安いときも買うことになります。これも、大損を避けるための有効な手段でしょう。
「高いときには休み、安いときに多く買う」がお勧めなワケ
毎月1定額を買うと決めるのが一番簡単で、金融機関に積立を依頼しておけば、あとはなにもしなくてすみます。ただ、一手間かけることで「安いときに多く買い、高いときに少なく買う」ことができるなら、検討の余地があるでしょう。
ひとつの選択肢は「過去10年のPER(株価収益率)の平均より今のPERが高ければ積立を休み、低ければ2倍積み立てる」という方法です。過去10年のPERよりいまのPERが高ければ割高だと判断し、積立を休む、というわけです。
なお、日本株の投資信託であれば、日経平均かTOPIXのPERを使えばよいと思いますが、たとえば小型株投信であれば東証の小型株指数を使う、といった工夫は必要でしょう。
とはいえ、理屈はその通りなのですが、実際に過去10年のPERの平均を毎月計算するのは大変なので、簡便方も検討しましょう。それは、資産残高の目標を定める、というものです。
資産残高の目標額を設定する
毎月1万円ずつ積み立てるとした場合、1年後には投資総額は12万円になっているはずです。そのときの資産残高が12万円より多ければ、今の株価が過去1年の平均より高いということですから、積立を休みましょう。
一方で、資産総額が12万円より少なければ、今の株価が過去1年の平均より低いということなので、2倍の2万円積み立てましょう。これを続けていけば、40年後には投資信託の資産総額が480万円になっているはずです。
この方法の優れたところは、簡単だということです。資産残高が過去の投資総額を上回っているか否かをチェックするだけでよいからです。一方で、単純な積立と比べると、意思の力を強く持つ必要はあるかもしれません。
休んだときも贅沢をすることなく…
最も重要なのは、株価が暴落したときに狼狽して積立をやめたり、口座を解約したりせず、「淡々と積立を続ける」ということです。
ただでさえ心理的に不安で売りたいようなときに「2倍買いましょう」といわれても、コワいかもしれませんが、あとから振り返ると「暴落したときに2万円分買った分で大きな利益が得られた」となる可能性が高いのですから、意思を強く持って自分で決めたルールを破らずに積み立てましょう。
反対に、株価が上がっているときには積立をしなくてよいわけですが、その月は贅沢をするのではなく、しっかり銀行に預金しておきましょう。つい気が緩んでしまうかもしれませんが、将来株価が下がったときには2倍積み立てる必要が出てくるのですから、そのときに備えてしっかり預金しておく必要があるのです。
老後の取り崩しも資産残高の目標額で!
積み立てるときには、毎月1定額を積み立てるだけでも問題ありません。安いときに多く買え、高いときには少なく買うことになるからです。しかし、老後に毎月取り崩すときには、毎月1定額を取り崩すことによって「高いときに少なく売り、安いときに多く売る」ことになってしまうかもしれません。
そこで、取り崩すときも、たとえば「毎月2万円ずつ目標資産残高が減っていく」ようにしておくといった方法が有効でしょう。40年かけて積み立てた資産を20年で取り崩すとすれば、資産総額が毎月240分の1ずつ減っていくように「資産残高目標」を立てるのです。積立時の目標残高が毎月1万円増えていくなら、取り崩し時の目標残高は毎月2万円減っていくわけですね。
たとえば老後の生活費を年金プラス4万円に設定し、「投資信託から2万円、預貯金から2万円を捻出する」というのが基本計画だとすれば、「投信資産残高が目標を上回っているときには投資信託を4万円分解約し、預金は引き出さない」「投資信託残高が目標を下回っているときには投資信託の解約は行わず、預金を4万円引き出す」という決め方がわかりやすいでしょう。
さて、現役時代の終了と同時にバブルが崩壊して株価が暴落したら、どうなるでしょうか。実は、なんとかなるのです。現役時代の最後の数年間は、株価が高騰しているので投信の積立をせず、預金が積み上がります。そこで、老後の初期は投信を取り崩さずに預金を引き出して生活することができるからです。
上記は基本的な考え方ですので、これを参考にして各自の好みや事情によって微修正していただければと思います。たとえば「老後資金のピーク時に投資信託が480万円」という目標が低すぎるのか高すぎるのかは、各自の老後資金の目標額によるでしょうし、「インフレが怖いのか株価の暴落が怖いのか」ということも関係しているでしょうから。
本稿は以上ですが、投資判断等は自己責任でお願いします。なお、本稿はわかりやすさを重視しているため、細部が厳密でない場合があります。
塚崎 公義 経済評論家
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