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年金繰下げ、70歳まで頑張ります!→懸命の先送りで増額も〈削り取られる金額〉に衝撃…「なにかの間違いでは?」【FPが助言】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年5月30日 11時15分

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(画像はイメージです/PIXTA)

老後資金を増やす手段として知られる、年金の繰下げ受給。しかし、場合によっては、繰下げ受給が不利になるケースもあるなど、単純な話ではありません。今回は、年金の繰下げ受給の失敗事例について、FP資格も持つ公認会計士・税理士の岸田康雄氏が解説します。

年金繰下げ受給、そもそも長生きしなければ「メリットなし」

生徒:先生、公的年金を受給している高齢者の方々から「繰下げて失敗した」「じっくり検討すべきだった」という後悔の言葉をよく聞きます。なぜこのようなことが起こるのでしょうか?

先生:年金の繰下げ受給とは、年金の受給開始時期を65歳よりも後にずらすことで、受給額を増額する制度です。66歳から75歳の間で受給開始時期を遅らせることができます。これによって、繰下げ期間1ヵ月につき0.7%ずつ受給額が増額し、それを生涯変わらず受け取ることができます。5年間繰下げるとすれば、0.7%×12ヵ月×5年=42%も増額されることになります。

生徒:私も70歳まで繰下げるつもりです!

先生:繰下げ受給を行っても後悔するケースというのは、せっかく繰下げ受給を行ったのに、早くに亡くなってしまうことでしょう。例えば、70歳まで受給を繰下げたとしましょう。その場合、受取り総額で65歳受給開始した人を上回るには、82歳まで生きる必要があります。男性の場合、平均寿命である81歳で亡くなれば、繰下げ受給したことで受取り総額が少なくなってしまいます。

生徒:では、なんとしてもがんばって、82歳よりも長生きする必要がありますね!

その1:厚生年金の繰下げで「加給年金」がもらえなくなる!?

先生:それだけではありません。厚生年金を繰下げると、加給年金が受け取れなくなるのも不利な点だといえます。

生徒:加給年金とは何ですか?

先生:加給年金とは、65歳になったときに扶養する配偶者や子どもがいる場合、老齢厚生年金に上乗せされて支給される年金のことです。年下の配偶者がいれば、年額22万円から39万円くらい、未成年の子どもがいれば、1人目と2人目が年額22万円、3人目以降は年額7万5,000円もらえます。いわば「年金における家族手当」のような制度ですね。

生徒:それがどうして不利になるのでしょう?

先生:加給年金をもらえるのは、配偶者が65歳になるまでの期間となっていて、年金受給開始を繰下げると、加給年金をもらえる期間が短くなるからです。ですから、厚生年金の繰下げは行わず、基礎年金だけ繰下げを行えばよいでしょう。

その2:年金額の増額で、税金&社会保険料がハネ上がる!?

生徒:ほかに繰下げで不利になることはありますか?

先生:繰下げ受給で年金額が増えると、税金や社会保険料の負担が重くなることもあります。

生徒:そんなばかな。なにかの間違いでは?

先生:ハハハ。間違いではありませんよ。所得税は、所得が高いほど税率が上がっていく累進課税方式が採用されているので、年金額が増えると適用される税率が上がってしまうことがあるのです。

生徒:ひええ!

先生:同様に、健康保険料や介護保険料も増えることになります。そもそも、少子高齢化で年金財政は厳しいですから、5年後の社会保険料は、いまより上がっている可能性があります。将来的に年金は減らされることはあっても、社会保険料や所得税が減ることはありません。

生徒:それならいっそ、早い段階で受け取っておいたほうがいいかも…(涙)。

その3:年金額の増額で、医療費の自己負担割合が高くなる!?

先生:不利な点はまだあります。医療費が重くなることです。繰下げ受給によって年金額が増えると、病院の窓口で支払う医療費の自己負担割合が高くなります。75歳以上の後期高齢者医療制度では、所得145万円以上になると自己負担割合が3割になってしまいます。年金額が42%増えても、医療費の支払額が増えてしまうと意味がありませんね。

生徒:私は高血圧の問題があるので、定期的な病院通いは必須ですし、高齢になれば、ほかにも持病が増えるかも…。自己負担割合が3割になるのは苦しいです。ですが、高額療養費制度がありますよね? それで取り戻せるのではないでしょうか。

先生:確かに、健康保険には、毎月の医療費の自己負担額が一定額を超えた場合にその超過分を払い戻してもらえる「高額療養費」という制度があります。しかし、年金額が増えて課税所得が145万円以上になると、高額療養費の上限額が1.4倍に上げられてしまうのです。

生徒:えええ…それはツラ過ぎる(号泣)。いろいろなことを、総合的に考えなければいけませんね。ありがとうございました。

岸田 康雄 公認会計士/税理士/行政書士/宅地建物取引士/中小企業診断士/1級ファイナンシャル・プランニング技能士/国際公認投資アナリスト(日本証券アナリスト協会認定)

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