年金の繰下げ受給がいいらしい…65歳で「年金175万円/年」だったが、70歳での「受取額」に思わずハイタッチ
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年6月1日 10時15分
![写真](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/goldonline/goldonline_60770_0-small.jpg)
複雑怪奇な日本の公的年金制度。その理解度を調査したところ、年金の受取り時期を遅らせる分だけ増額となる「年金の繰下げ受給」の理解度は7割を超えました。しかしメリットだけでなく、デメリットも知っているかといえば不安が残ります。みていきましょう。
「老後の生活を支える公的年金」どれほど知っている?…世論調査より
内閣府『生活設計と年金に関する世論調査(令和5年11月調査)』によると、「老後の生活設計の中で、公的年金をどのように位置づけていますか」の問いに対して、「全面的に公的年金に頼る」は26.1%。「公的年金を中心に考えている」という人も合わせると8割に達し、老後、いかに年金に依存するかが分かります。
【年齢別「公的年金の重要性」への意識】
18~29歳:55.5%
30~39歳:65.1%
40~49歳:76.6%
50~59歳:83.1%
60~69歳:87.6%
70歳以上:89.4%
※数値は「全面的に公的年金に頼る」と回答した割合と「公的年金を中心とし、これに個人年金や貯蓄などを組み合わせる」と回答した割合の合算
年齢別にみていくと、「年金が頼り」と考える割合は年があがるほど増えていくことが分かります。若年層の数値が低いのは、「将来、年金は充てにならない」と、年金制度への失望による可能性も。ただいずれにせよ、まったく年金に頼らず生きていけるというのは今はかなりの少数派ですし、今後もその傾向は変わらないでしょう。それだけに、年金に対する理解は、少しずつでも深めていきたいものです。
知っておきたい年金の知識に関して、その理解度は以下の通り。
●学生を含めた20歳以上の国民は、国民年金に加入する義務がある
→82.0%
●本人の希望により60歳から75歳の間で受け取り始める時期を選択できる
→73.0%
●現役で働いている世代が、年金を受け取っている高齢者を扶養する制度である
→66.8%
●保険料の納付状況に応じて年金額が変動する
→62.5%
●生涯にわたり年金を受給できる
→56.4%
●物価や賃金の変動に応じて年金額が調整される
→42.3%
●「ねんきんネット」という、年金記録や、将来受け取る年金の見込額などご自身の年金に関する情報をパソコンやスマートフォンから、手軽に確認できるサービスが活用できる
→30.2%
●「公的年金シミュレーター」という、働き方・暮らし方の変化に応じて将来受給可能な年金額を簡単に試算できるツールが活用できる
→8.4%
●いずれも知らない
→5.1%
年金の繰下げ受給…実際に年金の受取り時期を遅らせると「年金額」はいくら?
このなかでも昨今、理解度の向上がみられるのが「本人の希望により60歳から75歳の間で受け取り始める時期を選択できる」というもの。60~64歳で受け取りを希望する「年金の繰上げ受給」、66~75歳で受け取りを希望する「年金の繰下げ受給」と呼ばれるもので、特に「年金の繰下げ受給」については年金の受取り時期を遅らせた分だけ受取額が増えることが毎年誕生月に送られてくる「ねんきん定期便」にも記されていることもあり、「どうやら年金の繰下げはいいらしい」という人が増えているようです。
実際に年金の繰下げ効果についてみていくと、1ヵ月受給を遅らせるごとに、0.7%年金額がアップ。1年で8.4%、3年で25.2%、5年で42.0%、10年では84.0%と、ほぼ2倍にもなります。日本の60代以上の就業率は「60~64歳」で73.0%、「65~69歳」で50.8%、「70~74歳」が33.5%、「75歳以上」が11.0%。こうしてみると、70代になると半数が仕事をやめ、年金に頼る生活に突入……年金をもらうなら「70歳」という人は多いのではないでしょうか。
厚生労働省『令和4年度厚生年金保険・国民年金事業の概況』によると、厚生年金保険(第1号)の老齢給付の受給者の平均年金月額は、併給の老齢基礎年金を含めて老齢年金が14万4,982円。1年で173.9万円です。そんな人が70歳まで受け取りを延ばしたら……42%アップで246.9万円、月20.5万円になります。
年金も、20万円の大台にのると、それだけで気持ちに余裕が生まれ、思わずハイタッチしたくなるほど。ただ年金の繰下げ、メリットだけでなく、デメリットとされる部分も。まず、当然、繰下げ中に亡くなるようなことがあれば「1円も年金がもらえない」ということになりますし、早く亡くなれば「65歳で受け取ったほうがよかった」ということになります(関連記事:『【早見表】年金はいつ受け取るのが得?「額面」と「手取り額」の損益分岐点』)。
また収入が増えれば、その分、税金や社会保険料の負担は大きくなり、「年金額は増えたけど、思ったほど、手取り額は増えないなあ」ということに。さらに加給年金(厚生年金の被保険者期間が20年以上ある人が65歳到達時点で、その人に生計を維持されている65歳未満の配偶者や18歳までの子どもがいるときに加算される年金)や、振替加算(配偶者が65歳を迎えるなどで加給年金が打ち切られたあと、配偶者の老齢基礎年金に対し年齢に応じた加算が受けられるもの)は、年金を繰り下げることで受け取れなくなります。
「年金の繰下げ受給」の理解度は年々上昇しているものの、デメリットまで知っているかは疑問符。これらもしっかりと理解、納得のうえで、繰下げ受給を選択したいものです。
[参考資料]
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