アジアで2番目に電気料金が高い「フィリピン」…マニラ電力、さらなる値上げを発表
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年6月3日 7時15分
写真:PIXTA
一般社団法人フィリピン・アセットコンサルティングのエグゼクティブディレクターの家村均氏が、フィリピンの現況を解説するフィリピンレポート。今週は、フィリピンにおいて長年の課題である高電力料金に対する産業界と政府の考えなどを解説していきます。
電気料金の高いフィリピンだが…
フィリピンの平均電気料金は1キロワット時あたり8.96ペソで、アジアで2番目に高額であるとされています。マニラ電力(メラルコ)は今月、一般家庭向けの料金を1キロワット時あたり11.41ペソ値上げすると発表しています。
そのようななか、フィリピンの大手財閥サンミゲルの最高経営責任者(CEO)であるラモン・アン氏は、電気料金の引き下げに向けて、南シナ海での石油埋蔵量の調査と、政府による補助金制度の開始を提言しました。
西フィリピン海はフィリピンの排他的経済水域(EEZ)に含まれる海域であるものの、中国との領海紛争を抱えています。同氏は、西フィリピン海には大きな天然ガス田があり、将来的に開発に注力すべきだとし、埋蔵量調査を行うべきだと主張しました。
また、フィリピンの電力は、政府による補助金制度がないため、電気料金が高いと指摘しました。2001年の電力産業改革法は、フィリピンの電力産業の規制緩和を行い、国営の発電・送電資産を民営化しています。
一方で、エネルギー省は電力に対する補助金制度を否定し、民間の投資家がフィリピンのエネルギーセクターに参入して投資してくれることを信じるのであれば、なぜ補助金が必要なのかとしています。経済開発計画庁(NEDA)も、燃料の最大消費者は富裕層であるため、一般的に電力や燃料への補助金は避けるべきとの見解を示しています。
「半導体」「再生可能エネルギー」成長を促進させるためには
フィリピン政府は「半導体」および「再生可能エネルギー分野」を経済成長の柱として注力しており、官僚的な手続きの簡素化や外国資本の誘致に取り組んでいます。
フィリピンの最大の輸出品である半導体および電子機器分野を優先する方針を示し、特に半導体やその他の電子機器の組み立て、テスト、パッケージング能力を増強することでさらなる成長が見込めるとしています。一方で、半導体産業は利益を生むものの、依然として付加価値の低い領域にとどまっていおり、より高い付加価値の生産領域に移行するためには包括的で戦略的な産業政策が必要であるとの指摘があります。
2024年第1四半期には、電子機器が引き続きフィリピンの主要な輸出品となっており、輸出額は104.7億ドルで、前年同期の92.3億ドルから13.43%増加しました。半導体の輸出も15.3%増加し、71.4億ドルから81.4億ドルとなっています。フィリピンは、アメリカのCHIPS(半導体生産促進法)から利益を得ることを目指しており、同法は52.7億ドルの連邦補助金を同盟国など海外企業も含めた半導体製造支援に充てます。
また、再生可能エネルギー(RE)分野も主要な成長の原動力とされており、2023年にフィリピンがREプロジェクトへの外国資本の完全所有を認めました。実際、外国直接投資(FDI)の関心がこの分野に集中しています。
4月1日時点で、1.57兆ペソ相当の51のREプロジェクトが政府機関で迅速な承認と登録のための「グリーンレーン」を通過することが承認されています。現在、フィリピンのエネルギーミックスに占める再生可能エネルギーの割合は22%ですが、2030年までに35%、2040年までに50%に引き上げることを目指しています。
フィリピンへの「外国直接投資」を阻むものとは
フィリピンへの外国直接投資(FDI)拡大の障害とは……「官僚的な手続き」と「政府機関の腐敗」であると指摘され続けています。
フィリピンの発電所の開発における最大の障害は、多数の許認可や署名を取得する必要があり、承認に長期間を要することで、再生可能エネルギープロジェクトの許認可を簡素化することで、建設期間を1年未満に短縮できるとされています。
許認可を迅速に処理すれば、再生可能エネルギーの発電所は、従来の発電所に比べて建設期間が短くなるとされ、(太陽光は9ヵ月、風力は18ヵ月、バイオマスや水力は2ヵ月で建設可能)、政府機関をエネルギー省に許認可事項を集約して簡素化すべきだとの意見があります。
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