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やたら左の鼻だけつまる、花粉症かな…年収600万円の42歳会社員、小さな予兆からまさかの「副鼻腔がん」診断。“2ヵ月前”に加入も「がん保険無効」で呆然【CFPが解説】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年6月8日 11時45分

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(※写真はイメージです/PIXTA)

契約更新のお知らせをきっかけに、がん保険の見直しを考える人は少なくないでしょう。しかしがん保険には、一般的な生命保険契約とは異なる「特有のルール」があることをご存じでしょうか? 見直し前に正しく理解していなければ、後々公開することも……。本記事では鼻腔がんに罹患した池田由紀さん(仮名)の事例とともに、がん保険加入の注意点について、株式会社ライフヴィジョン代表取締役のCFP谷藤淳一氏が解説します。

自らの「決めつけ」を後悔

東京都三鷹市在住、IT系企業勤務の会社員で年収600万円、42歳の池田由紀さん(仮名)。先日病院で思いもかけずがんの告知を受け、さらにその後保険会社にがん保険の請求の電話をしたところ『がん保険契約が無効に』という通告をされ、衝撃を受けました。

しかし考えてみるとつい2ヵ月前、そのリスクについて承知しながらも、その可能性はほとんどないと決めつけて対処しなかったことを、いま深く後悔しています。

更新を機にがん保険を見直し

いまから3ヵ月前。池田さんのもとに、加入していた10年満期のがん保険があと1ヵ月で契約満了というお知らせが届きました。もともとがんが心配であったわけではないものの、会社で案内があり、会社経由で加入すると団体割引があるということで、10年前になんとなく加入したものでした。

「もう10年か……」などと時の流れの早さを感じつつも、40代になり乳がんなどのリスクも高まっていると思っていた池田さん。「いい機会だわ」と近所の来店型保険ショップへがん保険見直しの相談に行くことに。

ショップでは30代前半と思われる男性スタッフに担当してもらい、加入中のがん保険の内容を確認してもらいましたが、ずいぶん古いタイプのものであることがわかりました。最新のがん保険をいくつか紹介してもらい、2ヵ月前にそのときお勧めのがん保険の新規契約手続きをしました。

手続きの際、担当者からは「新しいがん保険は90日間(約3ヵ月)は保障されないため、現在のがん保険をいったん更新(継続)して、90日経過後に解約してください」と案内が。ただ池田さんは老後不安から、日々無駄遣いせず貯蓄を頑張っていたということがあり、2つのがん保険の保険料を支払うことはもったいないと感じてしまいました。

そして先日、健康診断と乳がん検診を受けてどちらも異常なしだったので、「来年まで検査を受ける予定がないからがん診断を受けることもないだろう」と、それを担当者に伝えました。担当者は、「たしかにそうかもしれませんが……」と少し歯切れの悪い反応でしたが、最終的には自己判断で、加入中のがん保険は更新せず満期で終了となりました。

想定外の診断も、がん保険無効の悲劇

近所のショップでがん保険に加入してから2ヵ月、仕事で忙しい日々を送り、がん保険のことなどすっかり忘れていた池田さん。

ただどうもここ最近、左の鼻だけつまっているというか、なにか違和感があり、鼻をかんだときに時折出血が確認されることがありました。今年もつい先日まで花粉症で悩まされていたため、その影響で炎症を起こしているのかと思っていた池田さんですが、仕事へ影響が出るのがイヤで耳鼻科を受診。

ところが耳鼻科では医師から「手術が必要かもしれません」という見立てで大きな病院で精密検査を受けることを勧められました。花粉症と思っていたら、まさかこんな大事になるとは……と驚きつつも「早めに受診してよかった」と、池田さんはいわれたとおり別の病院で精密検査を受診することになりました。

花粉症かと思いきや…まさかの副鼻腔がん発覚

精密検査から10日後、池田さんは検査結果を聞きに病院へ。手術が必要となったら「仕事も休まなければならないし入院費もかかるしイヤだな」と思っていたものの、そこまで深刻な病気の可能性は感じていなかった池田さん。

ところが検査結果を伝える医師の口から出たのはまさかの『悪性腫瘍』という言葉。わかりやすくいうと『副鼻腔がん』ということでした。

「まさか……私ががん?」「しかも鼻……?」事態がよく呑み込めず、頭が真っ白になった池田さん。医師からは最初に抗がん剤治療を行い、その後に手術という治療方法を勧められ、いわれるままに入院の予定を入れ帰宅しました。

「治るの……? 仕事は……? お金は……?」さまざまな不安が頭をよぎります。ただがん保険は最新のお勧めのものに入ったばかり、その点だけは唯一の救いと思っていました。

がん保険請求して思い出した「90日不担保」

がんの告知から数日後、池田さんはようやく現実を受け止められるようになりました。会社の上司にも相談したところ、「仕事については心配しなくていい」と伝えられ、まずはこれから受ける治療に集中することに。

お金もかかるのでがん保険の請求も早めにしておこうと保険会社コールセンターへ電話。すると池田さんのがんの診断日がいつか尋ねられました。「日付が関係あるのですか?」と尋ねたところ、池田さんのがん保険は加入から間もないため6月25日以前のがん診断の場合、契約が無効となる旨の案内が。

この日は27日、ただ医師からがんを告げられたのは一週間前の20日、池田さんは再び頭が真っ白に……。電話を終えしばらく放心状態に、そしてしばらくしたとき、がん保険相談に行ったショップでのやりとりを思い出しました。そして、「花粉症でがんがみつかるなんて……」呆然とします。

軽視してはいけない「90日ルール」

一般的に生命保険の契約は診査が通れば、

1.申込日

2.告知日

3.第1回保険料の入金日

上記3つのうち最も遅い日付から保障が開始されます。ただし、がん保険の場合は「その日から90日間保障されない期間が設定される」ということが通常で、保険契約の重要事項説明の中で下記のような案内を受けます。

被保険者が責任開始期(責任開始期の基準日からその日を含めて90日を経過した日の翌日)の前日までにがん(上皮内がん等を含みます)と診断確定されていた場合には、保険契約者または被保険者がその事実を知っているといないとにかかわらず、ご契約は無効となり、給付金のお支払いや保険料払込の免除はできません。

ほかの保険にはないルールですが、その理由は保険契約者間での公正性の確保で、保険会社は以下のような事例を想定しています。

・たとえばがんは自覚症状がないなかで進行していて、がん保険加入後すぐにがん診断という可能性もあること ・乳がんなどはあらかじめしこりを自分で認識できて、病院へ行く前にがん保険に駆け込みで加入といったことも可能

症状が出て初めてみつかるがんもある

「がんはがん検診を受けてみつかるもの」というイメージがあるかもしれません。ただ今回の事例のように、全然関係なさそうなちょっとした症状での受診からみつかることもあります。自覚症状が出てがんがみつかる場合、すでにがんが進行していて、治療費の観点からがん保険の重要性はより大きくなる可能性があります。

最近は著名人がご自身のがんについて公表することも多くなっていますが、最近の事例では、タレントの見栄晴さんが2024年1月に下咽頭がんであることを公表されました。報道によると見栄晴さんは2023年中からのどの不調を訴えていたようで、症状が改善されないため年が明けて精密検査を受けたところがんの診断を受けたということです。

90日間は必ずがん保険契約の重複を

今回の事例の池田さんは老後のために貯蓄を頑張っていて、新規がん保険契約後「2つのがん保険の保険料を負担することがもったいない」という理由で古いがん保険をすぐに終了させてしまいました。

ただ自分でも40代になり乳がんのリスクについて気にしていたという点からすると、90日間の空白期間を作ってしまうことは不適切であったかもしれません。

「がん保険に限らず保険はもともと確率が低いもの。だけど起きたら経済的に困るから加入しておく」というものです。今回の事例のように小さな予兆から突然がんの診断を受けることもあり得ます。

そういった意味ではがん保険の見直し時には、古いもの新しいものを90日間は必ず重複させるべきであるといえます。

がんに対する適切な知識を付けることの重要性

今回の事例では来店型保険ショップで契約手続きをした際、池田さんが「来年まで検査を受ける予定もないからがんの診断を受けることもない」と担当者に伝えたところ、「たしかにそうかもしれませんが……」という反応で、古いがん保険との重複を強く勧めなかったことも池田さんにとっては不幸であったかもしれません。

残念ですが担当者の側にも健康診断・がん検診以外から見つかるがんについてのイメージがなかったものと推測されます。がん保険を扱う保険担当者はがん保険については一定の知識は有していますが、がん自体をよく知っているかどうかには大きな差がある可能性があります。

そういったことを踏まえると、もしこれからがん保険の相談をする場合には、がん保険だけではなくがん自体をよく知る担当者に相談することが大切といえるかもしれません。

谷藤 淳一

株式会社ライフヴィジョン

代表取締役

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