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税務調査で個人営業の居酒屋に〈追徴課税2,000万円〉…「どこからのタレコミですか?」→税務調査官の“誇らしげな回答”【税理士の実体験】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年6月11日 11時45分

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(※写真はイメージです/PIXTA)

個人で事業を営んでいる場合、つい面倒な税務申告を疎かにしてしまう人は少なくありません。しかし、「申告がなければバレない」という考えは大間違い。領収書や通帳の管理をしないまま放置していると、どんどんトラブルが大きくなってしまうようで……。本記事では、Aさんの事例をもとに、税務調査の実態について鄭英哲税理士が解説します。

開店から7年間、1度も税務申告をしたことがなかった居酒屋

筆者はもともと消費者金融に勤めており、現在は公認会計士・税理士・証券アナリスト・宅建士・ファイナンシャルプランナーです。今回は、税理士をしていたら避けては通れない税務調査についてお話しようと思います。

いままで法人・個人併せて、20回ほど税務調査を担当しました。その経験のなかで特に記憶に残っている税務調査の実例を紹介します。自分史上、最も難しく、最も時間のかかった税務調査となりました。

ことの始まりは、筆者の友人からの紹介。居酒屋を経営しているAさんと出会いました。相談内容は、居酒屋を始めて7年になるが一度も税務申告をしたことがない。いつ税務調査が入ってもおかしくないため、帳簿を作成したいとのこと。

ただ問題は、過去に領収書がほとんど残っていない年度があること、振込処理をしている預金通帳についても業務用とプライベートが混在して、すでに区別もつかなくなっていることです。

問題は多いですが、ほかに頼る税理士もいないとのことで引き受けることに。案の定、分量も非常に多く、さらに会計入力をしようにも抜けている伝票も多かったため、なかなか作業が進まない状態でした。

そしてある日、本当に税務調査がやってきて…

帳簿作成を依頼されて2か月ほど経ったある日の朝、Aさんから電話が入りました。

「税務調査が『家』と『店』に来ました。どうしたらいいですか!?」

税務署職員が来たのは、朝8時台。Aさん宅と、たまたま従業員がいたタイミングで店に税務調査が入ったのです。

誤解のないように説明しますが、税務調査は、事前に税理士に税務署から電話が来ることが通常です。内容は、

・株式会社〇〇の税務調査をしたい ・対象になる年度 ・税務調査の対応が可能な日 ・税務調査の場所(事業所が代表者の自宅の場合、税理士事務所でやることも多い)

などを話し、税務調査が入る旨を代表者に伝えます。つまり、連絡がきた日から、実際に税務調査を行う日までに何日かの余裕があるということです。

今回の場合のように、急に税務署職員が入ってきたのは、いままで無申告で連絡すべき税理士がいなかったことが理由でしょう。ただし、ある程度大きな会社の税務調査になると、税務申告を毎年していても急に会社に入ってくることもあります。

そして、いったん電話を代わってもらい、顧問税理士である旨、名前、電話番号、税理士番号などを伝え、その日は帰ってもらいました。

代表者には「Bさん」を登録も、税務調査は「Aさん」宅に来た

ここで驚いたのが、Aさん宅に税務署が突撃した点。

飲食店を始めるには、保健所で営業許可を受けなければなりません。理由はわかりませんが、Aさんは別の代表者として従業員Bさんの名前を登録していたのです。

言うまでもなく、居酒屋の代表者はAさんではなく、Bさんになります。もちろん商売上、Aさんの名前はどこにもありません。しかしながら、税務署は、Bさん宅ではなくAさん宅に来たのです。Aさんの自宅にたどり着いたことは、筆者も非常に驚きました。

余談になりますが、税務署の調査力を舐めてはいけません。預金通帳の履歴、実質的な代表者の住所、家族関係など調べうることはたいてい調べたうえで税務調査におよんでいます。

つまり、税務調査が入ると通帳のコピーなどの提出を求められますが、その裏ではすでに調べられていると思ったほうがいいです。

家族関係も同様です。調べうる限り家族関係も調べてきます。従業員がいる会社であれば、給与台帳を見て家族の名前を使って架空の給料が出金されていないか調べられます。よく、税金を免れるための共謀策について相談されますが、無駄なのでやめておいたほうがいいです。

通常の税務調査の対象は「3年」、悪質と判断された場合は「5年」

話を戻します。今回の税務調査は、過去「5年分」が対象であることが告げられました。通常の税務調査の対象は、「3年分」というのが多いです。それなりに悪質な場合が、「5年」。つまり今回の税務調査はそれなりに「悪質」だと判断されたのでしょう。

「5年」というのは、税金に関わるの時効が「5年」であることに由来しています。さらに悪質だと7年に遡られることもありますが、筆者自身まだ経験はありません。

ちなみにですが、税務署の職員の名刺を見ると、肩書はたいてい「国税調査官」となっています。

これを見て、「国税が入った!」とか「マルサだ!」という方が多いですが、国税庁が入ることはほんとないし、名刺には「〇〇税務署」と入っています。いわゆる「税務調査」というものなので、無駄に慌てることはありません。

筆者自身、マルサや国税の対応はしたことはありませんが、Aさんに入ったときのように税理士が対応したとしても、そのまま帰ってくれることはなく、そのまま調査開始になるそうです。

税務調査の期間は6ヵ月

通常、税務調査となると、実際に税務署職員が会社や税理士事務所に滞在するのはせいぜい3日程度。その後、税務署に持ち帰って、電話での追加質問。その後、ざっくりの調査の概要を聞かされ、その後追加で払う税金について提示を受けるという流れになります。

今回の場合、いままで無申告かつ領収書類を紛失しているため、調査が難航。税務署職員に資料を渡してから、税金の確定が出るまでになんと6ヵ月。そして、悪質な税金逃れの場合に、請求される「重加算税」もかかり、5年で2,000万円程度の追徴課税。

ちなみに、失くした売上や経費の領収書については、売上と経費の予測からこのくらいの利益が出ていたはずだということで、利益予測から税金を計算されることに。こんな感じで自分史上最も難しい税務調査が終わりました。

ここで知ってほしいのが、

・税務申告をしていなくても税務調査は来ます。 ・税務署の調査力を舐めてはいけない→なんでも調べてきます。 ・領収書を失くした、は通用しない。

という点。

最後に、税務署職員と話しながら聞いた話です。「今回の税務調査はどこかからのタレコミですか?」と聞いたところ、税務署はそんなことで動きません。独自の調査部隊があるとのこと、でした。

鄭英哲

株式会社アートリエールコンサルティング

税理士/公認会計士/証券アナリスト/CFP/宅地建物取引士

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