テクニックは不要!人間関係を円滑にする「気軽なひと言」の使い方【心理コンサルタントが解説】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年7月7日 10時0分
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会話が苦手な人と、コミュニケーションを円滑にとれる人は、それぞれに共通点があります。では、後者が高度なテクニックを使っているかというと、まったくそうではありません。円滑なコミュニケーションのコツとはいったいなんなのか。『「嫌いな人」のトリセツ 人付き合いがラクになる37の習慣』(総合法令出版)より、著者で心理コンサルタントの林恭弘氏が詳しく解説します。
人間関係は「ひと言」の積み重ね
コミュニケーションが苦手な人は、「軽い対人恐怖症」であることがほとんどです。このような人の特徴は、相手に話しかける前から疑心暗鬼になっています。
「話しかけると迷惑じゃないかな」
「厚かましいヤツだと思われないかな」
「変なことを言うヤツだと思われるかな」
「好感を持たれる言葉で話しかけないと」
頭の中は“変に思われないように”“嫌われないように”という思いでいっぱいいっぱいなのです。
言わせてもらいますが、
“そんなことは、あるいはあなたのことなんか、ほとんど誰も気にしていません”
完全に自意識過剰なのです。まったくの疑心暗鬼です。
コミュニケーションを円滑にとっている人たちの共通点は、「すぐ話しかけている」ことです。相手が何をしている最中でも、まったく気にせずに話しかけています。
相手が取り込み中であれば、「ごめん、ごめん。じゃあまたあとで」と言って、その場を離れます。すると、手の空いた相手が逆にやって来て、「さっきは何だったの」と会話が始まるわけです。
このようなやり方であれば、対人恐怖を感じる前に話しかけることができ、疑心暗鬼になる暇もありません。
対人恐怖、疑心暗鬼になる暇もなくコミュニケーションを取っている人たちは、「シャレた会話」などしていません。めちゃくちゃオモロいジョークを飛ばして、抱腹絶倒させ、絶賛されているわけでもありません。
「気軽なひと言」をかけているだけです。「気軽なひと言」だから、相手だって「気軽に」話を返してくれます。そこから「気軽な会話」へと入って、親しくなってゆくのです。
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吉田兼好が徒然草で唱えている「もの言わざるは、腹ふくるるわざなり」のとおり、「話をしなければ、どんどん腹(胸)の中に言いたいことをため込んで、心にも体にもよろしくない」ということです。特に“沈黙”は、恐ろしい時間となるはずです。
まずは、「たったひと言」でいいので、相手にかまわずに声をかけてみることです。そこから「へたくそな会話」でいいので、話をつないでいくようにするだけで、立派な「親しい会話」になるはずです。
そしてあなたが気になっていること、聞きたかったけれど聞き逃していたことなどを会話として入れてゆくだけです。
アメリカ・ニューヨーク市に「カーネギー・ホール」を寄贈した、鉄鋼王アンドリュー・カーネギーは、実業家として大成功を収めました。莫大な財産を築き、後に慈善家として世界中に働きかけた人でもあります。
彼の墓標には「自分より賢きものを近づける術知りたる者、ここに眠る」とあります。「自分がすごかったんだ」などと言うつもりはなく、「自分の周りにいた能力のある人、素晴らしい人の協力があったからこそ、自分の人生は豊かだったのだ」という、彼の人生において出会った人たちを称賛する言葉を墓標にしているのです。
カーネギーの名言の一つに、「雑談を厭うな」というシンプルなメッセージがあります。雑談というのは「くだらないおしゃべり」のことではありません。「朝の挨拶を明るく交わし、相手の家族の様子を聞いてあげ、疑問があれば尋ねて、相手の意見に耳を傾け、自分の考えを丁寧に伝える」ということです。
対人恐怖にならず、朝の挨拶を明るく交わし、ごく簡単な会話のやり取りを継続すれば疑心暗鬼にもなりません。そして心を開いた相手に協力を呼びかければ、自分のサポーターがどんどん増えてゆくわけです。
カーネギーに限ったことではなく、成功者(私は“成幸者”と呼んでいます)の共通点は、生まれ持った並外れた才能ではなく、“協力者”がとても多かったことです。
すべての“成幸者”が実行していたことは、レベルの高い流暢なコミュニケーションではなく、素朴な「ひと言」の積み重ねを大切にしていたことなのです。
意地を張ると、どんどん自分を追いつめる
相手に対して意地を張ってしまい「ひと言」が言えなくなり、人間関係がこじれてしまうことがあります。
例えば夫婦ゲンカをした翌朝、険悪な空気が朝の食卓で流れていたとします。それでもどちらからともなく、「おはよう」のひと言が出れば、昨夜の“決着”がつかなくても険悪な空気は収束してゆきます。
「おはよう」のひと言が言えない夫婦は、険悪な空気のまま何日か、何週間かを過ごすことになります。それは互いに“くだらない意地を張る”からです。
おそらくは心の中で、「くそー、オレ(ワタシ)は悪くないぞ。悪いのは、間違っているのは相手なんだから。あやまってなんかやるものか。機嫌とって挨拶なんかしてやるものか」なんてつぶやいているはずです。「負けないぞ。負けてなんかやるものか」という、子どもじみた“勝負”をしているわけです。
誰にでも自分を“正当化したい”という思いはあるものです。それは当然のことかもしれません。「自分にも非があった」と認めるのは、ちっぽけなプライドが傷つくからです。しかし、そのちっぽけなプライドを守るために意地を張って、家庭や職場の空気を険悪なものにするのであれば、考え直してみる必要があるでしょう。相手もイヤな空気を吸い続けるのはつらいでしょうし、あなた自身も同じ空気を吸い続けることになるわけです。
そもそも、意地を張って“勝負”に出ても、何の意味もありません。
仮に勝ったとしても、自分の幼稚さにどこかで嫌気がさすはずです。相手との関係が良くなるはずもありません。
「大人の対応をした」相手からすると、“子どもじみた”あなたが醒めた目に映っているかもしれません。
人間関係において、“勝負”に出て、勝利して幸せになることはありません。勝てば勝つごとに、人が離れて行って孤独になるばかりです。ちっぽけなプライドを守るために、相手を攻撃したとしても、収穫など何もないわけです。
社会の変化によって、時間的・精神的な余裕がなく、価値観も多様化する中で、円滑なコミュニケーションが難しくなってきていると言われています。
企業のリーダークラスの人たちは、会社から用意された研修会に参加し、2日間、3日間のトレーニングを受けて現場に帰ってきます。そしていざ、学んできたコーチングやカウンセリングのコミュニケーション・テクニックを使ってみるのですが……。
失礼かもしれませんが、彼らは見事に“スベッて”います。
「ぎこちない」「わざとらしい」「慣れていない」などの理由も考えられるのですが、部下や後輩からすると、ただ一言「信じられない」わけです。
今までさんざん“勝ち負け”で意地を張り続けてきた人が、研修から帰ってきたある日突然、「話し合おう」なんて言うことを信じられないわけです。「うまく動かしてやろう」という魂胆が見え見えなのです。
コミュニケーションに関して、心理学の理論や手法を学ぶ人が急激に増えています。しかし、かえってコミュニケーションが下手になっている人のほうが多いような印象を受けます。それは、自分に少しでも非があれば、「ごめんね」と言える素直さが欠けているからではないでしょうか。そして相手が未熟な部下・後輩であっても、「ありがとう」と言える感謝の気持ちが欠けているからではないでしょうか。
「ありがとう」「ごめんね」と言える素直な心がなければ、理論もテクニックも通用はしません。
あなたがもし、イライラしてムカついている人がいて困っているのなら、それは相手のせいばかりではないのかもしれません。自分を“正当化”するために、そしてちっぽけなプライドを守るために、意地を張り優位に立とうとしていないか、確かめてみる必要があるでしょう。
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林 恭弘 ビジネス心理コンサルティング株式会社 代表取締役
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