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年収800万円の中間層だが…50歳会社員〈ねんきん定期便記載の見込額〉に取り乱した結果の大惨事。「オレもこっちの立場になったか」と複雑心境【CFPの助言】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年6月13日 11時45分

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(※写真はイメージです/PIXTA)

安定した企業のサラリーマンや公務員は、老後資金対策として不動産投資の勧誘を受けることがよくあります。節税効果もあり、家賃収入を生み出す不動産投資ですが、セールストークのメリットばかりに目が眩むと痛い目に遭うことも……。本記事では宮崎さん(仮名)の事例とともに、中高年世代が始める不動産投資の注意点について、ニックFP事務所のCFP山田信彦氏が解説します。

50歳で受け取る「ねんきん定期便」をみて動悸が…

50歳になった某中堅企業部長職の宮崎さん(仮名)の年収は額面で800万円弱です。宮崎さんには扶養範囲内のパートで働く妻と、大学生と高校生の子どもがいます。10年程前に買った自宅マンションの35年ローンは宮崎さんが75歳になるまで続きますが、60歳定年時にもらう予定の退職金で一括返済することを考えています。

一般に「住宅資金」「教育資金」と「老後資金」の3つを併せて「人生の3大資金」といいますが、宮崎さんの場合、これまで通常の生活費以外では住宅と教育関連の資金を賄うのに精いっぱい。老後資金にまではまったく手が回っていない状態でした。それでも60歳定年退職後は再雇用で働き続け65歳から公的年金を受け取り始めれば、自宅も確保済みなので夫婦2人の生活はなんとかなると思っていました。

ところが、50歳誕生月に受け取ったねんきん定期便をみて急に動悸が高まりました。50歳以降の定期便には現状収入ペースで60歳まで働き続けた場合の65歳以降の年金額が記載されているのですが、その金額は奥さんの分も併せてみると額面ベース月20数万円程度にしかならないのです。

自宅購入と教育費負担が大きく、これまでの貯えもあまりない宮崎さんは、初めて真剣に老後資金対策を意識するようになり、情報収集を始めました。

仕事上の知り合いに勧められた「区分所有マンション投資」

そんな宮崎さんに取引先知人が「自分もやっている」と勧めてきたのが、中古の区分所有マンションへの投資でした。老後資金対策に焦っていた宮崎さんは話だけでも聞いてみようと、彼の口利きで販売業者に会ってみることに。するとさっそく都内私鉄沿線の最寄り駅まで徒歩7分、広さ25m2で1Kの築15年程の物件を紹介されました。

販売価格は2,500万円弱ですが、頭金の一部と販売仲介手数料を含む諸経費合計の約200万円を準備できれば、宮崎さんの属性も踏まえて残金は物件を担保に30年ローンが組めること、賃貸管理は空き室家賃保証も含めて賃料10%でその販売仲介会社がすべて引き受けてくれることなどの説明を受けました。

また、毎月ローン返済額は当初の想定手取り家賃とほぼ同額になるものの「減価償却」という仕組みを通じて、給与から支払った税金の一部を毎年取り返すことができるため、その分がプラスになるし、インフレの世の中ではいずれ賃料も購入物件資産価値も上昇していくであろうとのことです。

「ローン完済後にはマンションは名実ともに資産となりますし、毎月家賃は年金の足しに生涯なります」との説明のあとに、ほかにも説明を受けた物件の購入希望者がいることを聞かされた宮崎さんは急いで購入を決意しました。

2年後「なんか変だな…」違和感の正体

宮崎さんが違和感を覚えたのは2年後に家賃の見直しについて業者から「近隣相場と比較して月5,000円の賃料値下げのお願い」との文書を受け取った時でした。最初の2年間ですら建物減価償却費による税金還付を加えてなんとか黒字になっていた程度ですから、家賃が下がると「マンション経営」はますます苦しくなります。

宮崎さんはリタイアメント後全般の資金計画も含めて、知り合いのFPにこのマンションについての意見を聞いてみることにしました。

FP「いい買物だったとはいえない」

「売買契約書」「住宅ローン契約書」「サブリースシステム契約書」に加えて「重要事項説明書」と宮崎さんが持参した書類すべてに目を通したあとでFPは解説を始めました。

「率直に申し上げてあまりいいお買物をされたとは思いませんね」FPによる指摘は以下のとおりでした。

1.金利上昇が起きると返済不能に!?

そもそも論として自宅住宅ローンもあと20年以上続くなかで投資用マンションのローンまで抱えた結果、個人資産のほとんどが現物不動産となる一方で、預貯金含めた金融資産残高がほとんどない状態であること。

→この状態でローン変動金利上昇等が起こると将来的な返済不能に陥るリスクが大きい。

2.割高で買わされてしまった

マンション価格は購入当初の管理費等を差し引いた毎年想定手取り家賃収入とローン返済額の差額が少しプラスかほぼ一致する計算で値付けられて、近隣の類似物件より高額であること。

→仮にいま売却するとしても、ローン残債より低い値段でしか売れない可能性が高い。

3.貸主に不利なサブリース契約

販売業者と長期間のサブリース契約を結んでしまったこと。

→借主である業者は借地借家法で守られており、家賃交渉や契約解除等が貸主にはとても不利となっており、結果、売却そのものが難しい物件となってしまっている。

インフレの世の中では一部資産を現物不動産化することに意味があります。しかしそのほぼ全額を変動金利ローンで資金調達すると家賃や物件価額が上がる以上に金利が上昇してしまうリスクが出てきます。その家賃ですら実質的に逃げられないサブリース契約という形で業者に生殺与奪権を握られてしまっていると、別途、管理費や修繕積立金が今後値上がりするのと同様のペースで上昇するかもわかりません。

また、自然災害などに遭い建物が損壊してしまうような場合、所有者居住のマンションと比較して団結力のない投資用マンション管理組合が機能して大規模修繕などに向き合える可能性は低いともいわれています。

さらには無事ローン完済をしたとしても、宮崎さんの場合でいうとすでに80歳で物件も築45年となっています。余程の立地で管理がしっかりしていない限り、「私的年金を生涯生み出してくれる資産」として存続していることができるかも疑問が残ります。

サブリース契約を含めての業者任せのマンション投資は「勝てない設計」になっているものが多く見受けられます。不動産投資は候補となる物件を自分の目で確かめて比較検討のうえで購入することはもちろんのこと、その後の賃貸管理も不動産会社を起用するにしても自らが空き室リスクを負って運営していく姿勢が必要です。

家賃値下げに同意後、販売業者から告げられたこと

FPの助言もあって宮崎さんは今回家賃値下げには同意し、しばらく不動産市況の上昇を待ち販売業者に売り戻すことができないかを模索することにしました。

一方、販売業者から宮崎さんに連絡が来たのは家賃値下げに同意した直後でした。

「今回はご理解いただきましてありがとうございます。ところで宮崎さんのお知り合いに不動産投資にご興味がある方はいらっしゃいませんか? もし紹介いただけて成約しましたら、ご紹介料として30万円お支払いしますので、それを今回の家賃減額の足しに受け取っていただければと思うのですが」

宮崎さんは2年前に自分にこの業者を紹介した取引先知人の顔を思い出して「オレもこっちの立場になったか」と苦笑せざるを得ませんでした。  

山田 信彦

ニックFP事務所

代表

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