お金を使え!といわれても…日本の個人金融資産2,000兆円のうち7割を占める高齢者が「お金の使い道がわからない」と嘆く根本原因【和田秀樹の見解】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年6月17日 11時15分
(※写真はイメージです/PIXTA)
現役時代に必死で働き、資産を積み上げてついに定年退職……しかし、いざ引退すると「何をしてよいかわからない」と悩む人も少なくありません。そこで、『老害の壁』(エクスナレッジ)の著者で東大卒の精神科医・和田秀樹氏が、医師の見解からシニアにすすめたい「趣味」を紹介します。日本の個人金融資産2,000兆円のうち約7割を占める高齢者におすすめな“お金の使い道”をみていきましょう。
定年後「なにをしてよいかまったくわからない」ワケ
自分の持っているお金は好きなように使ってよい。そう言われても、何をしてよいかまったくわからないという人もいるでしょう。でも深く考える必要はありません。
これは日本の高齢者の特徴なのかどうかわかりませんが、「何でも好きなことをしてよい」と言われると、そんなに興味もないのに難しい本を読み始めるとか、スポーツクラブに入会して体を鍛えるとか、人からほめてもらえるようなことをしようとする傾向があるような気がしてなりません。
心理学者のアドラーは、「承認欲求の奴隷になるな」と言っています。人がほめてくれるようなことばかり考えるから、することが思い付かないのです。自分が好きなことなら、何だっていいと思います。1人でフラッと旅に出るのもいいですし、ラーメンが好きなら、ラーメン屋めぐりを始めてもいいでしょう。
“やることがない”なら…医師が趣味としてすすめる「外食」の魅力
ラーメンに限らず、外食めぐりはやることが思い付かないという人におすすめです。仕事をリタイアすると、基本は3食を家で食べることになります。特に今70歳前後の人たちは、日本がまだ貧しかった頃に子ども時代を過ごしているので、「毎日外食するなんてぜいたくだ」という意識を持っているかもしれません。
でもランチなら、そんなにお金はかかりません。ラーメンなら1,000円以下で食べられます。ニューヨークでもラーメンは人気ですが、1杯2,000〜3,000円くらいするのが普通です。そのくらい日本のランチはリーズナブルなのです。
都会に住んでいるなら、歩いて行ける距離に、たくさんお店があるでしょう。歩くから健康によいですし、「今日は何を食べようかな?」と考えることで、脳の刺激にもなります。新しい店だけでなく、しばらく行っていなかった店を再訪するのも楽しいでしょう。
一方、地方に住んでいても、車を使う(免許返納はしない)から、いろんなところに食べに行くことができます。地元の名物料理店を観光客だけに楽しませてはいけません。いろいろグルメ情報を調べて、おいしそうな店だったら、少し遠いところまでランチに出かけてみてはいかがでしょうか。
車で行くランチは、プチ旅行。食べることだけでなく、店に着くまでの道をファン・トゥ・ドライブしながら楽しむことができます。
日本は高齢者向けの商品やサービスが皆無
お金があるなら、ドーンとぜいたくに使ってもよいのです。日本人の個人金融資産は約2,000兆円で、そのうちのおよそ7割を高齢者が占めていると言われています。逆に言うと、今の日本は消費不況なのですから、高齢者がお金を使わないと、日本は半永久的に景気がよくなりません。
でも「ドーンとお金を使え」と言われても、何に使ってよいかわからないという人も多いのではないでしょうか。
そうなっている理由の1つに、高齢者がお金を使いたくなるような、わくわく感のあるサービスが少ないからだと私は思っています。
ゆとりのある高齢者に人気の「ジャパネット・クルーズ」
そんな中、私が新しい試みの1つだと思ったのが、テレビ通販で有名なジャパネットたかたが始めたジャパネット・クルーズです。全室貸切の大型豪華客船で、日本各地および韓国の都市を10日間でめぐるツアーですが、船内のサービスも豪華で、食事はもちろん、さまざまな船内イベントも用意されています。
大型豪華客船によるクルーズというと、2020年にダイヤモンド・プリンセス号で、コロナの大規模クラスターが発生して以来、人気がガタ落ちになりましたが、ジャパネット・クルーズは2023年前半のツアーがほぼ予約でいっぱいだそうです(2022年9月末現在)。ツアー代金はやや高めですが、お金を持っていて、時間もたっぷりある高齢者に人気のようです。
これは一例にすぎませんが、サービスを提供する側は、もっと高齢者に寄り添ったサービスを考えるべきです。例えば、ゲームクリエーターの人は、高齢者が楽しめるようなシンプルかつ楽しいゲームを開発すべきだと思います。
また、グルメ産業だったら、高額だけど、舌の肥えた高齢者を満足させるようなフルコースディナーなども考えられるのではないでしょうか。1品の量を減らしてみたり、料理そのものだけではなく、お酒を飲んでも安心して家に帰れるように、タクシーで帰宅できるサービスを組み合わせるとか、1人暮らしの高齢者のために、一緒に食べてくれる人付きのサービスというのも考えられます。
知恵をしぼれば、高齢者を引きつける商品やサービスは、いくらでも考えられます。しかし、日本の経営者の頭の中には、「高齢者=消費者」という概念がないのか、そんな商品やサービスはほとんど生まれていません。
和田 秀樹 精神科医 ヒデキ・ワダ・インスティテュート 代表
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