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年収5,000万円の40代フリーライター、高級ブランドバッグを経費計上→顧問税理士「これもプライベートだろうな」…〈税務調査〉の思いがけない結果に衝撃【税理士の実体験】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年6月18日 11時45分

年収5,000万円の40代フリーライター、高級ブランドバッグを経費計上→顧問税理士「これもプライベートだろうな」…〈税務調査〉の思いがけない結果に衝撃【税理士の実体験】

(※写真はイメージです/PIXTA)

個人事業主のもとへやってくる税務調査。度々論点となるのが「経費」です。税務調査で指摘され、多額の追徴課税に……そういった事態にならないためには? 本記事では、Aさんの事例とともに、税務調査の実態について鄭英哲税理士が解説します。

副業で始めたWeb広告のコンサル会社

筆者はもともと消費者金融に勤めていました。現在は公認会計士・税理士・証券アナリスト・宅建士・ファイナンシャルプランナーとして活動しています。ここでは、税理士をしていたら避けては通れない税務調査についてお話します。

これまでに法人・個人併せて、20回ほど担当した税務調査の経験のなかで、特に記憶に残っている実例を紹介しようと思います。

今回の税務調査は交渉が難しかったわけではないですが、どこまでが「経費」として認められたかという点において、非常に参考になった案件でした。

代表のAさんは、割とメディアにも多く出る個人事業主のライターさん。年齢は40代、年収は5,000万円ほどです。Aさんには、主な収入源であるライターのほかにもWeb広告のコンサルタントとしての副収入もありました。そして、副収入のほうは法人を設立して、売上を計上することにしたのです。

副業用の法人は、会計判断が難しい

実は、副業用に法人を設立する人は結構多いのです。

たとえば、会社勤めしている人が自分のスキルを活かして副業をするとします。個人事業主として、売上を「事業所得」として計上してしまうと、勤務先の「給与所得」と合算した所得税がかかることになります。日本の所得税は「累進課税」制度を採用してるため、高い税率がかかることになるのです。

また、住民税の問題から、「事業所得」を個人で申告したくないという人もいます。「事業所得」を個人に計上すると、住民税にも影響をおよぼします。原則的に、住民税は会社の給与から天引きをする「特別徴収」が採用されています。これにより会社勤務の人の住民税は、いったん会社に通知書が来たあと給与から天引きされます。つまり、住民税の金額は会社の目に触れられる状況にあるということです。

よって、会社の給料から想定できる住民税の金額を著しく超える住民税の金額であれば、会社の人事部が副業の「事業所得」を疑う可能性もあります。それを回避するために、副業の収入を設立した会社で計上するという人が多いのです。

ただ、税理士として判断が難しいのが、「経費」の計上。まず、副業用の会社にはほとんどの場合、「給与」がありません。というのも、もともと個人でやるかどうかの判断をしているくらいなので、自分の片手間の範囲でやる、というケースが多いのです。

次に、経費の領収書が大量にある点です。そもそも片手間の副業なので、自身の給与もなければ従業員の給与もありません。その場合、たくさんの飲食、タクシーの領収書が送られてきます。もちろん事業に関連する経費なのでしょうが、それを裏付ける証拠もない。

つまり、本当に事業に関する経費かどうかわからない限り、事業経費であると主張する経営者の言うことを信じるしかないのです。この場合、経営者の言うことを信じて、事業経費として交際費や旅費交通費として計上することになります。

コロナ明けにやってきた税務調査

Aさんの副業用の会社にもコロナが明けたくらいのタイミングで税務調査が入りました。推測の域を出ませんが、税務調査の対象になった理由は、特に狙い撃ちにされた感じではなく、「単なる順番」ではないかと考えられます。しいて言えば、「中間」で納付した消費税の一部が、期末決算時にいくらか還付になったことで、目立つ対象になってしまったかなというくらいです。

税務調査の概要は、よくある税務調査と比較して、

・対象期間:3年→普通の期間 ・調査の日程:2日間→やや短い

という内容ではありました。もちろん、当日の朝、急に会社やAさん宅に突撃されたわけでもなく、顧問税理士である筆者のもとへ事前連絡もありました。

問題となった「大量の経費の領収書」

結論、計上した経費が認められるかどうかは、税務署次第になります。税務調査が入ったときに求められる資料は以下のとおりです。

1.総勘定元帳

たとえば、旅費交通費、交際費、会議費、消耗品費といった勘定科目別の一覧が記載されています。

2.会社の預金通帳

提出を求められますが、税務署の調査力であれば事前に調査してきています。これは税務署職員から直接言われたことではないので、事実として書きます。

参考までにお伝えしますが、とある税務調査で実際にあった話です。

ある会社の預金通帳から、代表者やその家族の口座にいくつかの出金がありました。会社の通帳には、「振込」と書かれただけで、出金先は書いてありません。それのすべてを税務署職員はすでに言い当てました。

つまり、通帳の入出金情報について、税務署はすでに調べてきていると思ったほうがいいでしょう。

税務調査で聞かれること

話を戻します。その後、提出した旅費交通費や交際費といった総勘定元帳のなかから、税務署が気になる取引を抽出し、該当する取引の領収書類をこちらで準備するという流れになります。もしくは、取引のあった領収書類を税務署に全部持って帰るからいつまでに準備するようにいわれるケースも。

会社の規模にもよりますが、10日~14日後に疑念の対象になっている取引の一覧が送られてきて、それらの内容についての回答を求められます。たとえば、

・取引の目的

・会食であれば誰と行ったか

・高額な洋服であれば、なんのための購入なのか

などを聞かれます。もちろん、回答するAさんは、事業と関連している旨を主張します。ただ、その理由が、本当に事業に関連しているのか、経費処理を認めてもらうためのこじつけなのか、税理士としては知る由もありません。税理士の立場としては、これもあれも、プライベートで使った経費だろうなとは内心思うわけですが。とはいえ、納税者である経営者の主張ですから、Aさんに聞いた内容を税務署職員に伝えます。この時点で、税務署から追加資料を求められることはありません。

あとは、税務署からの連絡を待つだけ。

その後の連絡はほとんどの場合、「この経費だけは認められない。これについて承認してくれれば税務調査は終わりにしたいです」といった内容になります。

まさかの結果「えっ、こんなに少ないの?」

Aんのケースも通常どおり、しばらくして税務署から課税について連絡が来ました。

税務署職員「これとこれの経費はちょっと認められない」

筆者「それらを否認した場合、だいたい100万円の追徴になりそうですかね」

税務署職員「そんな感じです。AさんからOKが出たら、通知書を作成します」

というやり取りになりました。正直筆者は「そのほかの経費は認められたんだ……」という感想でした。経費として認められたもののなかには高級ブランドのバッグや、国内旅行の費用なども含まれていたため、驚いたのです。

ほぼ勝ちに等しい結果でしたので、顧問税理士として、Aさんにはこの結果を飲むように説得しました。Aさんは当初100万円の追徴に不満そうでしたが、筆者はよく100万円で済んだなという感覚。とにかく今回の税務調査も無事に済みました。

YouTubeや書籍によくある、「税務調査で、追徴を受けないための裏ワザ」みたいなのは真に受けないほうがいいと筆者は考えています。ケースバイケースである税務調査では、裏ワザが通用しないことも多いためです。

経験のある顧問税理士と常にコミュニケーションを取っていくことが一番の防衛策といえるでしょう。

鄭英哲

株式会社アートリエールコンサルティング

税理士/公認会計士/証券アナリスト/CFP/宅地建物取引士

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