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診断されたら人生終わり?「すぐボケる・暴れる・徘徊する」マイナスイメージの裏側にある「認知症の真実」【鎌田實×和田秀樹】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年6月13日 11時30分

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(※写真はイメージです/PIXTA)

高齢化が進む中、ますます身近なリスクとなりつつある「認知症」。その数は予備軍の患者も含めると1,000万人を軽く超えます。しかし、認知症といっても症状はひとそれぞれ。決して診断されたらアウトというわけではない、と言います。鎌田實氏と和田秀樹氏の共著『医者の話を鵜吞みにするな』(ワック)より、認知症の誤解と生活について、詳しく見ていきましょう。

「認知症」が始まっても10年間は大丈夫!

鎌田 さて、人間が長生きできるようになって、にわかにクローズアップされてきたのが「認知症」です。認知症の患者さんは現在約600万人、予備軍が約670万人。合計約1,270万人が危機にさらされています。

和田 そうですね。そうなるまで生きていられるのは人間だけだから。でも、ひと口に認知症といっても、軽いものから重度なものまで症状はいろいろ。確かに、重症になると会話も通じなくなる、子供や奥さんの顔もわからなくなる、自分の名前まで忘れることもあるわけですが、実は、軽いうちならそれまでと変わらず、仕事も日常生活もできます

鎌田 でも一般には認知症と判断されたらもうアウト、日常生活は営めない、正常な意識は失われ、人生も終わりという誤解がありますよね。

和田 運転免許問題でも、認知症が進んで運転に危険が生じるようになったので免許失効というのなら話はわかります。でも、認知症=即失効というのは筋違い。

鎌田 認知症についてのもう1つの誤解は、大声を出して暴れるとか、徘徊するとか、便をこねるとか、そういう異常行動を起こす病気だと思われていることですね。

和田 厚生労働省の推計では、認知症患者は2025年に700万人になるそうですから、現在は全国に少なくとも650万人はいると考えられますね。するとだいたい国民の20人に1人は認知症だということになる。もしも認知症の人が全員徘徊して回ったら、一度に1,000人が渡る渋谷のスクランブル交差点は青信号ごとに50人の認知症患者が徘徊することになる。認知症の人がそんなに大勢歩いているなんて想像できません。

鎌田 徘徊するのは、せいぜい認知症患者の数パーセントくらいでしょうね。

和田 大声を出すという例も、私の見る限り、そんなに多い症状ではない。認知症というのは、実はほとんどが脳の老化現象ですから、基本的にはだんだんおとなしくなって何もしなくなる。

「お母さん、最近あまり出かけなくなったな」とか、「着替えをしなくなったな」とか思っているうちに、急に息子に敬語を使い出したりして、それで初めて気がつくというようなことが多いんです。

物忘れがひどくなったって会話は普通に成り立ちますから、気づくのが遅れる。それはやはり、目立たない病気だからです。

鎌田 でも、認知症の診断を受けたら「2、3年後にはもう何もできなくなる」と考えてしまう人がほとんど。「仕方ない、施設に入るほかないか」とすぐ思う人が多い。

和田 そんなことはないんですよ。最近は進行をある程度遅らせる薬もあるし、介護保険では、脳を刺激したり体を動かしたりするデイサービスも受けられます。それを使って認知症の進行を遅らせることもできます。

認知症と診断されてから「ボケ」るまで

鎌田 でも多くの人は、物忘れが始まったらすぐにボケてしまうと思っている。実際にはそんな状態になるまでにどれくらいの時間があるんですか?

和田 だいたい10年程度の余裕はあるんです。だんだん物忘れがひどくなり、迷子になったりするので、外に出なくなる。やがて話が通じなくなっていく。でもそこまでには10年。軽症の間はそれまでと同じように仕事も生活もできるのです。

鎌田 僕の友人に認知症当事者会の共同代表をやっているSさんという人がいます。50歳で若年性アルツハイマー病を診断されて、いま70歳。絵が好きで、ボランティアと美術館通いをしているうちに自分でも描き出して、それをTシャツにデザインしてもらったりしています。

この前、電話をかけてきて「肝臓を休ませたいと思うんだけど、休肝日は連続で2日間続けないといけないのか?」と聞くから、「好きなら、たくさんじゃなければ毎日でもいいけども、「今日はいいかな」と思う日ぐらいは休肝日にしたら」と話したら、「そうか、それもあるよね」と、うれしそうに笑っていました。

和田 アルツハイマーになったから終わり、というわけじゃないんですよね。

鎌田 彼は当事者会の共同代表として講演にも呼ばれるようになり、それが大きな張り合いになっています。彼はいまも施設で一人暮らしですが、自由にランチやジムに行っています。

例えばボケたくないと思っている人は、これもダメ、あれもダメと細かなことを気にする人が多いけど、そうなってみたらそうなったで、やっぱり新しい世界が広がります。もちろん、残酷な現実はありますが、でも認知症になると、見える世界が変わってくるような気がしますね。

年をとることって、全般的にそうで、足腰が弱って車椅子になったら終わりだと思っていたら、いざ車椅子を乗って好きに動いていると、それはそれなりに「この世界も悪くないな」って思うようになるんだと思います。

和田 見えない世界を恐れて生きるよりは、そうなっちゃったときに出現する新しい世界を楽しむのが賢い老い方なんだということですね。状況の変化に応じて楽しさを見つけられるかどうかが、大事になってくるんですよね。

鎌田 實 医師

和田 秀樹 精神科医

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