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「食生活のせい」「家系のせい」と決めつけないで…がんができる「最大の要因」とは【医師が解説】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年6月19日 10時0分

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(※写真はイメージです/PIXTA)

日本人の2人に1人が経験するといわれる「がん」。原因としては、タバコやお酒、食生活、寝不足といった生活習慣の乱れを思い浮かべる人も多いでしょう。しかし、がんができる最大の要因はそのどれでもないのです。では、日本人ががんを発症する最大の要因はなんなのか、『あなたと家族を守る がんと診断されたら最初に読む本』(KADOKAWA)からみていきましょう。著者の勝俣範之氏が解説します。

“原因探し”をしがちだが…がんの6割は「偶然」による発症

【登場人物】

■教える人……勝俣範之先生

あらゆる部位のがんを診られる腫瘍内科医として日々診療にあたっている。

■教わる人……編集者O

身近にがんに罹患する人が増えて、わからないことだらけで心配になっている。

 

編集者O(以下、O):がんの診断や告知をする際に、患者さんからさまざまなことを聞かれると思いますが、どんな質問が多いのでしょうか?

勝俣範之先生(以下、勝俣):それは、がんの原因は何かという話ですね。「なぜ私は、がんになったのでしょうか?」と、質問する方がたくさんおられます。ところで、がんの原因は、何がいちばん多いと思いますか?

O:やっぱり、生活習慣ですか。タバコやお酒、食生活、寝不足……。

勝俣:実は、がんができる最大の要因は「偶発的要因」、つまり偶然によるものです。これが原因の6割を占めます。

O:えっ? 偶然? そう聞いても、いまひとつピンとこないのですが……。

勝俣:偶然とは、簡単に言ってしまえば、遺伝子の異常(突然変異)です。偶発的な何らかの原因によって遺伝子に異常が起こり、それが積み重なったりすることで、がんになる確率が高まります。

この遺伝子の異常は、加齢とともに蓄積されていくことが知られていますから、年齢を重ねるほど、偶然に、がんができてしまう確率が高くなっていきますね。

O:偶然が6割以上も関係しているということは、「食生活が悪かった」とか、「お酒を飲みすぎたりしたから、がんになった」とか、「うちはがん家系だから」とか、簡単にはいえないわけですね。

勝俣:その通りです。そもそも「なぜ私は、がんになったのでしょうか?」という質問の奥底にあるのは、「自分が悪いことをしたから、がんになったのではないか」という、自分を責める気持ちですね

でも、タバコも吸わなければ、お酒も飲まない、食生活や運動にも気をつけている、がん検診もマメに受けている、がんで亡くなった親族もいない、そういった方でもがんになる人はたくさんいます。ですから、「がんになったのは、過去の行いが悪かったからだ」と、自分を責め立てる必要はまったくないのですよ。

O:自分が悪いことをしたからがんになったのでもなければ、誰かのせいでがんになったわけでもないのですね。

がんは「生活習慣病」ではない

勝俣:がんのショックで、原因探しを始め、自分を含めた誰かのせいにしたり、何かのせいにしたりするという気持ちはわかります。でもそれは、かえって自分を落ち込ませるだけなんですね。

日本人には「因果応報」という考えが根強いためか、どうしても病気の原因を自分の過去のせいにしがちです。

また、がんになると、周囲からもそうした偏見の目で見られているように感じて、がんになったことを隠す人も少なくありません。でも、がんは偶然に発症する確率が高い病気です。過去とはほとんど無関係なのです。

O:そうなのですか! では、環境的要因としては、主にどんなものがあるのですか?

勝俣:タバコですね。タバコが原因で起こるがんはとても多く、肺がん、食道がん、口腔がん、咽頭がん、喉頭がん、胃がんなどがあります。喫煙期間が長ければ長いほど、肺がんのリスクは高まります。今からでも禁煙すれば、肺がんのリスクは下がるとされています。お酒も多量に飲むと、肝臓がんを引き起こすリスクを高めますね。

O:[図表]の環境要因の中で最も多い「感染」というのは何ですか?

勝俣日本人のがんの原因の約20%を感染が占めると推計されています。B型やC型の肝炎ウイルスによる肝がん、ヒトパピローマウイルス(HPV)による子宮頸がん、ヘリコバクター・ピロリ(H.pylori)による胃がんなどがその大半を占めます。

野菜不足をがんの原因にあげる人がよくいますが、野菜を食べないからといって、それだけでがんになる人はほとんどいませんよ

ストレスもがんの原因に大きく影響しているとはいえません。ストレスががんの原因になるという科学的根拠は、一致した結果はないのです。一部の研究のみ関連があるとしています。

「がん家系」って、本当にあるの?

O:遺伝はどうでしょう。「がん家系」というのは本当にあるのですか?

勝俣:たしかに、乳がんや卵巣がん、大腸がんの一部など、遺伝的要因で起こるがんはあることはあるのですが、発生確率としてはとても少ないのが実状です。

ですから、自分の親族にがんが多いからがん家系、遺伝だと一概にいえないのです。もしかしたら、高齢化するほどがんが増えていくので、何となく親族にがんが多いように感じてしまうのかもしれませんね。

O:そうなんだ! 「がんは生活習慣病」ではないのですね!!

勝俣:「生活習慣病」という言葉をやめてほしいと思っています。もし、生活習慣について言うなら、「一部の生活習慣が原因となって発症する確率が高まるがんもある」というのが正しい表現です。

タバコ以外の要因で、過去の生活習慣やストレスでがんになったと自分を責めることはしなくてよいと思います。

勝俣 範之 日本医科大学武蔵小杉病院腫瘍内科 教授/部長/外来化学療法室室長

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