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「がんの治療法」を提示されたら…患者がまっさきに聞くべき“たった1つの質問”【医師が解説】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年7月3日 10時0分

「がんの治療法」を提示されたら…患者がまっさきに聞くべき“たった1つの質問”【医師が解説】

(※写真はイメージです/PIXTA)

がんの治療法とされているものは数えきれないほどありますが、もし自分や家族が「がん」と診断され、医師から治療法を提示された際、まずまっさきに確認しておかなければならない1つの事象があります。それはいったいなんなのか、医師である勝俣範之氏の著書『あなたと家族を守る がんと診断されたら最初に読む本』(KADOKAWA)より、詳しくみていきましょう。

がんには保険適用の「標準治療」が最も効果的

【登場人物】

■教える人……勝俣範之先生

あらゆる部位のがんを診られる腫瘍内科医として日々診療にあたっている。

■教わる人……編集者O

身近にがんに罹患する人が増えて、わからないことだらけで心配になっている。

編集者O(以下、O):治療開始に向けて、診断結果をもとに医師から治療法が提示されると思いますが、がんは情報が多すぎて何が最善なのか、困惑しそうです。治療法を選ぶ基準などはあるのでしょうか?

勝俣範之先生(以下、勝俣):世の中には、がんの治療法と称するものが数えきれないほどありますね。その中には医学的に真っ当なものから、まったくのインチキまで、さまざまなものが混在しています。そうした中から患者さん1人ひとりに合った最適な治療法として、保険が適用される「標準治療」を必ず受けてください

O:標準治療? それは、どのようなものですか? 普通の治療、一般的な治療というニュアンスが感じられますが……。

勝俣:標準治療とは、しっかりとした「科学的根拠(エビデンス)」に基づいた、現時点で患者さんが受けられる「最善」で「最良」の治療法です。つまり、現在利用できるがんの治療法の中で、最も効果が期待できる世界標準の治療法ということになります

O:ということは、標準というよりも、むしろ最高の治療法ということになりませんか?

勝俣:そう言ってもかまいません。問題は、標準という言葉に対する誤解です。標準と聞くと、私たち日本人は、「ありきたりな」「大したことがない」「並みの」「通常の」「必要最低限の」といったイメージを持つ人が多いと思います。

しかし、標準治療とは、英語の「スタンダード・セラピー」を単純に日本語訳したものです。英語のスタンダードには標準という意味以外に、「模範的な」「一流の」「権威ある」という意味があります。ですから本来のスタンダード・セラピーには、「誰もが模範にするべき一流の治療」という意味が込められています。

O:その標準治療は、誰が、どのように決めているのですか?

勝俣:標準治療は基礎研究やハードルの高い臨床試験から得られた結果を、世界のがんの専門家たちが集まって徹底的に調べ、検証し、その有効性や安全性を確認した信頼度のきわめて高い治療法です。

たとえば、がんの新薬として実際に標準治療で採用されるのは、1万個の新薬候補の中でもたった1個、わずか0.01%しかありません。薬に限りませんが、標準治療はそれだけ高く厳しいハードルをクリアしたものということになります。スポーツの世界にたとえるなら、オリンピックで金メダルを獲得するようなスーパーアスリート級の治療が標準治療なのです。

“スーパーアスリート級”のがん治療…治療費は?

O:そこまですばらしい治療法だと、治療費もかなり高額になるのではないですか?

勝俣:たしかに、がんの治療費は安くはありません。最新の抗がん剤などの中には、とても高額なものもあります。しかし、幸いなことに日本では標準治療に対して、健康保険が適用されることになっています。そのままではとても高額になってしまうがんの治療費も、標準治療として保険が適用されることで、患者さんの金銭的な負担が軽減されるようになっています。

これは世界に誇るべき日本のすばらしい医療制度の1つです。保険適用である標準治療こそが、最善・最良のがん治療です。ですから、がんの治療法を選ぶにあたっては、ぜひとも保険が適用される標準治療を選んでほしいと思います

O:逆に言うと、保険がきかない、いわゆる自由診療や自費診療のようなものは、標準治療ではないということですか?

勝俣:その通りです。自由診療はエビデンスに乏しい、まだ治療効果が確認されていない「未承認治療」ということになります。一般的に医師から提供される自由診療や非医療者から提供される民間療法は、代替療法に分類されます。なお、代替療法の中には、鍼灸や漢方薬など一部に保険適用になっているものもありますが、これはがん治療として効能をもっているのではなく、対症療法になります。

O:それでは、保険が適用される治療は、すべて標準治療ですか?

勝俣:そこが難しいところなのですが、必ずしもそうではありません。標準治療は医療の進歩にともなって、その内容が変わっていきます。「彼は昔の彼ならず」ではありませんが、かつて標準治療だったものでも、現在では標準治療と見なされていないものもあります。それでも変わらずに保険適用として残っているものがあるのです。ですから、提示された治療法が最新の標準治療なのかどうかは、必ず医師に確認したほうがいいでしょう

O:その標準治療なのですが、がんの治療を行っている病院なら、だいたいどこでも受けることができるのですか?

勝俣:まずは、がんの確定診断を受けた病院で標準治療を受けられるかどうかを確認することをお勧めします。残念ながらがんの診断や治療を行っているからといって、標準治療を主軸にしているとは限らないのです。

もし、そこで標準治療を受けるのが難しいということであれば、ほかの病院に転院することを考えていいでしょう。がんの標準治療は国が都道府県ごとに指定している「がん診療連携拠点病院」で受けることができます。もちろん、がん診療連携拠点病院に指定されていなくても、標準治療を行っている病院はあります。ご自身が治療を受けようとする病院で標準治療を受けられるかどうか、最初にしっかり確認していただければと思います。

「標準治療」とは具体的にどのような治療を指す?

O:さて、その標準治療には、どのようなものがあるのですか?

勝俣:がんの標準治療は、①手術、②放射線治療、③薬物療法(抗がん剤治療)の3つの治療法からなっています。これを一般的にがんの「3大治療」と呼んでいます。さらに緩和ケアも、4つめの標準治療として認知されるようになってきました。

現在の標準治療はこれらの治療法の順番や組み合わせを変えながら行うのが基本で、最適解のようなものがたった1つあるというわけではありません。がんの種類やステージのほかに、患者さんの意思、年齢、持病の有無や臓器の機能などの体の状況、仕事や生活様式など、1人ひとりの状況や背景を考えたうえで、がんの専門医をはじめとするさまざまな医療スタッフが集まり、相談しながら決めていきます。

O:つまり、標準治療は、患者さん1人ひとりに合わせた「カスタムメイド」の治療だということですね

勝俣:そうなんです。そして標準治療には、進化が著しいという側面もあります。世界中でがん医療のすさまじい進歩が続いているからで、医療の現場がそれに追いついていくのは実際にはなかなか大変です。たとえば抗がん剤で目覚ましい治療効果があって生存率が改善したケースでも、一方で副作用が強いことがある。そうすると病院側はその治療を安全に実施するために、態勢が整うまで採用できないこともありえます。

エビデンスが確固な標準医療は、真摯に取り組んでこそ最善の効果が出るからです。参考までに下表にあげたサイトではそれぞれのがんの診療ガイドラインを説明していますので、治療法選択の参考にしてください。

勝俣 範之 日本医科大学武蔵小杉病院腫瘍内科 教授/部長/外来化学療法室室長

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