年金の繰下げ受給してよかった!70歳男性「年金月24万円」に増額に歓喜も、自らの選択を後悔する「年金の真実」
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年6月12日 9時45分
原則、65歳から受け取ることができる老齢年金。ただ、年金を65歳で受け取らず、遅れて受け取り開始としてほうが、どうやらお得らしい……そんな噂が定着しつつあります。いわゆる「年金の繰下げ受給」。確かに年金の受取額を増やせるものの、知らずに損をしていることもあるという「真実」も。みていきましょう。
「ねんきん定期便」でも推されている「繰下げ受給」
毎年誕生月に送られてくる「ねんきん定期便」。そこに気になる文言、記憶のある人はいるでしょうか?
――年金の受給開始時期は、60歳から75歳まで選択できます。
――年金受給を遅らせた場合、年金額が増額します。
さらに例として、「70歳を選択した場合、65歳と比較して42%増額」「75歳を選択した場合、84%増額(最大)」と記してあります。
50歳未満の「ねんきん定期便」には、これまでの加入実績に基づいた年金見込額が記されていますが、50歳以上になると、このまま60歳まで年金保険料を払い続けた場合の年金見込額が記されています。つまり、50歳以上になると、より現実に近い年金額が記され、より老後の生活がイメージしやすくなっているのです。
そして50歳未満の「ねんきん定期便」には、前述の例は注意書き程度に小さく記されているのに対し、50歳以上の「ねんきん定期便」には、例も含めて大きく記されるようになります。それだけ「ここ、重要なポイントですよ!」と強調しているわけです。
全力で推されている感のある、年金の受け取りのタイミングで年金が増えるという仕組み。「年金の繰下げ受給」といわれる制度で、66歳~75歳まで、年金の受け取りを1ヵ月遅らせるごとに0.7%増えていくというもの。例に記されている通り、最大84%と、65歳で受け取る場合に比べて約2倍になるものだから、すごくお得な制度に見えます。
ここに65歳から年金月17万円をもらえるという、平均的な元・サラリーマンがいます。65歳で受け取らず、1年後、66歳から受け取ると、8.4%増の18.4万円に。さらに67歳になると19.8万円に。68歳になると21.2万円と、20万円の大台に。69歳では22.7万円。70歳では24.1万円……75歳まで受け取りを我慢すれば、1ヵ月に31.28万円と、夢の30万円台。50歳以上の「ねんきん定期便」で、強調されて訴えるだけあり、かなり大きなインパクトです。
65歳で「月17万円」の年金が、70歳で「月24万円」に!ただし喜びの裏側で…
現在、高齢者の就業率は、60代後半で5割。70代前半で3割、70代後半で1割です。日本の高齢者3,600万人とすると、1,800万人は65歳以降も仕事を続け、1,000万人強が70代になっても働き続けるという状況。800万人程度が70歳を基準に仕事をやめるともいえます。
――年金受給が始まる65歳以降も働くのだから、「年金の繰下げ」を選択したほうがお得!
と考え、いつまで繰下げるといえば、高齢者の就業率から考えて、「70歳」というのはひとつの区切りになるかもしれません。
まだ働くからと、65歳で年金を受け取らないと決めた男性。70歳、そろそろ仕事をやめて、年金生活に入ろうか……そう思っていたら、年金は17万円→24万円に増額。ちなみに年金月24万円であれば、手取りで20万円を超えます。
――やったー! これで老後も余裕じゃん!
思わず、歓喜する男性。しかも増額となった年金は一生続くのもポイントです。
――年金の繰下げ受給を選んで良かった
誰もがそう思う、おすすめ制度。しかし世の中、うまいだけの話はないことは、諸先輩方ならイヤというほど体験しているはず。そう、お得にみえる「年金の繰下げ受給」にもデメリットがあります。
1.本人が厚生年金に20年以上加入し、65歳未満の配偶者や18歳到達年度の末日までの子どもがいる場合にもらえる「加給年金」は、年金を繰り下げることで停止となり、繰下げ加算の対象にもなりません。
2.繰下げ受給中に亡くなれば年金は1円ももらえず、年金受給が始まったとしても、亡くなるタイミングが早ければ、年金受取総額が65歳で受け取ったときのほうが得、という場合も考えられます(関連記事:『【早見表】年金はいつ受け取るのが得?「額面」と「手取り額」の損益分岐点』)。
3.老齢年金は雑所得で課税対象。年金が増えることで、税金や社会保険料の負担が大きくなります。「年金額は増えたけど、想像していたよりもずっと少ない」ということになりがち。
年金の繰下げ受給は、確かに1ヵ月の年金受取額を増やすことができ、生活を安定させるのにひと役買ってくれます。しかし、「実は、損している部分もあって……」ということもあり、万能ではないことは明らか。デメリットもしっかりと知ったうえで繰下げ受給を選択しないと、「そういうことは、早く言ってよ!」と大後悔の原因になります。
[参考資料]
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