月100万円のがん治療、自己負担3割なら30万円だが…70歳未満・年収500万円の人が「高額療養費制度」で取り戻せる“驚きの金額”【医師が解説】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年7月31日 10時15分
(※写真はイメージです/PIXTA)
がん治療にかかる高額な療養費は大きな負担ですが、日本にはその負担を軽くするための公的制度がいくつかあります。なかでも「高額療養費制度」は、所得によって自己負担限度額が変わってくるため、ぜひ確認しておきたいところ。勝俣範之医師の著書『あなたと家族を守る がんと診断されたら最初に読む本』(KADOKAWA)より、いざという時に利用したい制度について、詳しくみていきましょう。
治療費の負担を軽く…高額療養費支給の条件をチェック
【登場人物】
■教える人……勝俣範之先生
あらゆる部位のがんを診られる腫瘍内科医として日々診療にあたっている。
■教わる人……編集者O
身近にがんに罹患する人が増えて、わからないことだらけで心配になっている。
編集者O(以下、O):治療費の負担を軽くできる公的な制度があるということでしたが、どんなものがあるのですか?
勝俣範之先生(以下、勝俣):まずは「高額療養費制度」です。これは比較的よく知られていて、だいたいどこの病院でがんの治療を受けても利用を勧められる制度です。海外ではこうしたものを聞いたことがありません。日本が誇る医療費の支払いに関するすばらしい制度の1つだと思います。
なお、ここでいう病院の窓口での支払額には入院時の食事代や差額ベッド代は含まれません。そのほかの支給条件については、[図表1]を参考にしてください。また、70歳以上と70歳未満の方では自己負担限度額も異なります。
O:仮に私が70歳未満だとして、年収が500万円、1か月の医療費が100万円、窓口での負担が3割だとするとどうなりますか?
勝俣:[図表1]に従って計算すると、自己負担限度額は8万7,430円です。窓口ではいったん30万円支払うことになりますが、差額の21万2,570円が高額療養費として戻ってきます。
「高額療養費遺制度」はいつ、どのように申請すればいい?
O:それは大きいですね。どのように申請すればいいのですか?
勝俣:基本的には、ご自身が加入している健康保険組合や市町村国保などの公的医療保険の窓口に高額療養費の支給申請書を提出することで支給が受けられます。
O:申請したらすぐにもらえるのですか?
勝俣:だいたい受診した月から3か月程度かかるものと思ってください。というのも、高額療養費は申請後に医療保険機関で審査したうえで支給されるのですが、この審査は病院などから医療保険へ提出する診療報酬の請求書(レセプト)の確定後に行われるので、ある程度時間がかかってしまいます。
もし、至急に医療費を支払うのが困難なときには、無利息の高額医療費貸付制度もあります。貸付の条件などはご加入の医療保険によって異なりますので、問い合わせていただきたいと思います。
O:なるほどです。ところで、多数回該当というのは、なんでしょうか?
勝俣:過去12か月以内に3回以上、上限額に達した場合は、4回目から自己負担額の上限が引き下げられることですね。さきほどの例なら、1か月4万4,400円になります。
治療後、申請を忘れていた場合は諦めるしかない?
O:治療を受けてしばらくたってからこの制度のことを知ったとか、知ってはいたが忙しかったり、うっかりしていたりして、申請するのを忘れていたという場合は、諦めるしかないのでしょうか?
勝俣:心配しなくても大丈夫です。高額療養費の支給を受ける権利は、診療を受けた月の翌月の初日から2年間です。この2年間の高額療養費であれば、過去にさかのぼって支給申請をすることができます。
O:それを聞いて安心しました。もっとほかに治療費の負担を軽くする仕組みなどはありませんか?
勝俣:下の図でも解説していますが、あらかじめ医療費が高額になるとわかっている場合には、「限度額適用認定証」を取得しておきましょう。それがあれば、医療機関での窓口支払い時に、支払いが最初から自己負担限度額までになります。要するに、高額医療費支給の申請をいちいちしなくても済むというものです。これも、加入している医療保険の窓口に申請することで、取得することができます。
また、世帯合算という仕組みもあります。これは同じ医療保険に加入していることという条件がありますが、1人1回分の支払い額が自己負担額の上限を超えない場合でも、同じ世帯の人がそれぞれに支払った自己負担額を1か月単位で合算して、それが一定額を超えたときは、その分を高額療養費として支給してもらうというものです。詳しいことは、加入している医療保険に問い合わせてください。
O:高額療養費の支払いに関しては、いろいろと助かる仕組みがあるのですね。利用しないと損ですね。
勝俣 範之 日本医科大学武蔵小杉病院腫瘍内科 教授/部長/外来化学療法室室長
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