「急転直下」55歳・年収1,000万円超男性…早期リタイア後に直面した「貧乏定年」という現実
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年6月11日 20時45分
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(※写真はイメージです/PIXTA)
「下流老人」「老後破産」…なんとも辛い言葉が多くなった昨今。老後に必要なお金、貯められていますか? 厚生労働省『令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況』などとともにみていきます。
「1,000万円プレーヤー」何の不自由もなかったはずが
不動産デベロッパーにて働いていた下野さん(55歳・男性/仮名)。俗に言う「1,000万円プレーヤー」でしたが、もう十分に働いたと、早期退職を決意。その後は比較的裕福な生活を送っていました。
国税庁のレポート『令和4年分 民間給与実態統計調査』によると、正規社員の平均給与は約523万円です(非正規社員の平均給与は約201万円)です。平均よりもはるかに多い給料をもらっていたことに加え、勤続年数が長かったこともあり、退職金はなんと2,000万円。世間を騒がせた「老後2,000万円問題」もこれで解決、と一安心でした。
下野さんが住むのは、首都圏近郊、築20年の1LDKタワマンです。賃料は25万円。家族3人暮らしでしたが、結婚を機に娘は地方に移住、ここ数年は妻と2人で仲良く暮らしていました。
しかし、突然の悲劇が下野さんを襲います。亡くなった父が、実は連帯保証人であったことが判明したのです。一人っ子長男だった下野さん。母はすでに他界しており、遺産はすべて相続していました。
いきなり1,500万円もの請求が届いたのです。弁護士に相談すればよかったものの、下野さんは言われるがまま債務を完済しました。弁護士に相談していれば相続放棄が認められた可能性もあります。
老後の生活も一安心……だったはずが、急転直下の事態に。
厚生労働省の発表によると、現在日本人の平均寿命は女性87.09歳、男性81.05歳です。老い先20年超。恐ろしいほどの老後不安に襲われました。退職金を除き、貯蓄は1,000万円ほどありましたが、無職2人世帯として生きていくには心もとない数字です。
「老後資金を貯めなければ」。そう決意した下野さんでしたが、間もなく、厳しい現実に直面しました。生活レベルを下げることの難しさを痛感したのです。
「娘も嫁いでいったことだし、妻と『もっと狭くて安い家に移ろうか』という話になったのですが、どこもしっくりこない。今のタワマンが居心地よすぎるんです。とにかく景色もいいし、利便性も高い。
普通の分譲マンションを見ても、部屋が狭かったり、今より見た目が古かったりと、懸念要素がある。都心からは出たくないんです。
一軒家も考えましたが、今の広さと同等の家を探すと、なかなか厳しい値段だった。この年齢ですから、融資の面も不安がある」
定年後に「困窮する人」の決定的特徴
「現役時代、豊かに暮らしていた分、本音を言えば、今より狭い家には移り住みたくないんです。節制なんてのも、特に気にしたことはなかった(妻は違うかもしれませんが)。よい食事を摂りたいし、美味しい酒だって毎日呑みたい。今後に備えて我慢が必要なのはわかりますが、消費を抑えることの難しさを感じています」
実は下野さんのような例は、めずらしくありません。専門家も「お金のコントロール」の難しさを指摘しています。
“明暗を分けるもっと大きなポイントは、お金を計画的にコントロールしているか否かにあるといえます。
意外なことに、収入が少なくても生活を切り詰めながらやりくりできていた人は、定年後もあまり困窮しません。逆に、現役時代に年収が1,000万円を超え、生活が派手だった人ほど貧乏定年になりやすいのです。
彼らは節約とは無縁の暮らしを送ってきました。定年後に収入がガクンと下がっても、おいそれとはギャップに対応できません。いままでと同じようにお金を使いまくっていたら、毎月大赤字になって当然です。”長尾義弘・中島典子『金持ち定年、貧乏定年』
下野さん、年金の受給は65歳からです。その金額にも不安を感じていると話します。
「年金もらえないってニュース多いですし、まあ自分も期待していないです。夫婦合わせて20万円ぐらいですかね」
実際、年金受給額の平均値はいくらほどなのでしょうか。厚生労働省年金局発表『令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況』により、現在の受給状況をみていくと、公的年金受給者数(延人数)は、令和4年度末現在で7,709万人。厚生年金保険(第1号)受給者の平均年金月額は、老齢年金が14万4,982円です。一方、国民年金受給者の老齢年金の平均年金月額は、5万6,428円となっています。
「……本当は、もう一切労働する気はなかったんです。今まで馬車馬みたいに働いてきましたから、十分だと思ってたんです。でも、人生そうもうまくいかないですね。再就職を考えています。給料は前より少ないでしょうけど、不動産業界にツテはある。身体はまだ動きますし、どうにかして雇ってもらおうかと」
「しんどいですが、仕方ないです。生活レベルを下げたくない。それなら、働くしかないでしょう」
昨今の労働者、特に高収入の人々においても、定年後の生活に直面する経済的課題が増えています。「高収入に慣れた生活水準の維持が困難」「突発的な支出への対応力不足」「年金収入の不安定さ」などが挙げられます。
こうした課題に対処するためには、早い段階からの資金計画の策定や節約、ファイナンシャルプランナーへの相談といった対策が有効です。しかし、下野さんのように再就職を検討しなければならない厳しい状況も多く見られるのが現実です。
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