「絶対に来ないで」年金20万円、都内高級タワマンに1人で住む85歳母が、55歳娘を頑なに家へ入れない衝撃理由…強行突破の先の〈目を疑う光景〉【CFPが解説】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年6月19日 11時45分
(※写真はイメージです/PIXTA)
父、もしくは母の一方に先立たれ、ひとり暮らしとなった親。心配ではありますが、小さな変化にすぐさま気が付くことは難しいかもしれません。本記事では安田真奈美さん(仮名)の事例とともに、老後の後半戦に待ち構えるリスクについて、FP相談ねっと・認定FPの小川洋平氏が解説します。
都内の高級タワマンでひとり暮らしをする母
安田真奈美さん(仮名/55歳)は都内に暮らす会社員です。子供たちも独立し、真奈美さんと同様にごく普通の会社員の夫と2人で生活しています。
安田さんの母、好美さん(仮名/85歳)は、都内の高級タワーマンション在住です。母の住まいは亡き父が母に遺したもので、父が亡くなったあとはひとりで住んでいます。両親は資産家というほどでもありませんが、父が遅咲きながら事業で成功したため、懐には余裕があります。
毎月1~2回は母の様子を見に行くようにしたのですが、あるときから母は「今日は〇〇へ出かけるから」など、なにかと理由を付けて、真奈美さんが訪問しようとしたときに不在ということが多くなりました。会うことがあっても外食したいというので、母のマンションに行くことがなくなってきたのです。しかし、たまたまタイミングが合わないだけかとあまり気にしないでいました。
しかし、母のマンションを訪れなくなってから1年が経ったころ、ふとした会話を機に母の異変に気が付きます。
同じ話を繰り返しするようになったり、同じマンションの人が自分のことを常に監視しているというようになるなど、被害妄想と思われる発言が増えたり……。
ほかにも気になった点が。身だしなみがあまりできていないのです。母はもともとおしゃれが大好きな人で、父から贈られた美しい宝石をネックレスと指輪、ブレスレット、イヤリングでいつもお揃いになるよう付けていました。しかしこのごろは、違うブランドのものを組み合わせたり、服と合っていなかったり。また、靴下の色まで気を遣うタイプでしたが、左右で違うものを履いていることもありました。化粧もそこそこになった母は、以前と雰囲気が変わっていたのです。
そして、なんとなく自宅に招くことを拒んでいたことと結びつき、「絶対に来ないで」という母の制止を押し切って、強行突破で母のマンションの一室へやってきました。
そこで目にした光景に、真奈美さんは目を疑います。高級マンションの一室とは思えぬほどのゴミ屋敷状態となっていたのです。
何ヵ月も貯めたと思われるゴミ袋が床を敷き詰め、床は足の踏み場がない状況。冷蔵庫のなかには腐ってドロドロに溶けたようなものが入っていました。リビングは何日分かわからない食べたあとのものが片付けられておらず、ひどい悪臭がしました。昔、よく自慢していたブランドのバッグや服、アクセサリーが大切に仕舞われていた部屋も、服が散乱し、イヤリングやネックレスがそこら中に転がっています。こんなひどいところで母は毎日過ごしていたのかと、真奈美さんはショックを隠せません。
好美さんが安田さんを自宅に招き入れたくなかった理由は、こんな部屋の状態を見せたくなかったからだったのでした。
認知症になっていた母
安田さんが感じていた好美さんの違和感、そして自宅がゴミ屋敷となっていた理由は認知症のためでした。
安田さんはなんとか好美さんの部屋を片付けようと手をつけてみましたが、片づけても片づけても減らないゴミに限界を感じ、特殊清掃の業者を呼ぶことにしました。片付けが終わるまでのあいだ、好美さんを自宅に泊め、特殊清掃の甲斐もあり、部屋は匂いもほぼ取れて、なんとか人が入れるような状態になったのでした。
しかし、「このまま母をひとりにしてはおけない」と、不安に思うようになり、真奈美さんはしばらく母のもとへ泊まることにしました。
その後はデイサービスに頼み、有給も溜っていたため、母の送迎時間の確保のため時間を遅らせて出社し、早めに退社するなどしてしばらく対応することにしましたが、有給も限られていますしいつまでもそんな生活を送ることもできません。
そのため、親を施設に預けることに罪悪感を感じ悩んでいた真奈美さんでしたが、好美さんを老人ホームに入れることに決めました。
せめて母にはいい環境で暮らしてもらいたいと、高級老人ホームへの入居を考えるようになります。
高級老人ホームの費用
高級老人ホームについて調べ始めた真奈美さんでしたが、その費用に驚きます。真奈美さんが調べたホームのなかには、首都圏近隣では入居費用は2,500万円、毎月の費用が数百万円にもなる施設もあり、非常に高額でした。
好美さんの年金は月に20万円ほどですが、真奈美さんにとっての救いは、好美さんが住んでいたタワマンが高値で売れる見込みがあり、また、父が残した遺産と合計すると1億円以上の資金を確保することができることでした。複数の施設を調べた結果、自宅から1時間半程度で通える地方の施設であれば、高級老人ホームでも入居金800万円、月額20万円程度で入ることができ、残された資産でゆとりを持って入居させることができました。
高級ホテルのようなエントランスや設備、個室を見て、これまで住んでいたタワマンのような高級感のある施設を見て、「ここなら母を安心して預けられる」と考え、自宅からも通いやすいために入居を決めます。
当初は嫌がっていた好美さんでしたが、施設が気に入ったようで無事入居することになりました。母に会いに行くための時間と費用は掛かり少々負担が増えましたが、母の幸せを手にすることができたのでした。
老後の後半戦まで見据えた準備を
2024年5月に行われた厚生労働省認知症対策推進関係者会議にて公表した、認知症と軽度認知障害(MCI)の患者数の推計結果によると、2040年には認知症の高齢者が584万人、軽度認知障害(MCI)の患者数は613万人にもなると予測されています。高齢者の7人に1人が罹患する予測です。
自分が認知症になるなどなかなかイメージし難いことでしょうが、誰もが認知症になる可能性があり、やがて訪れるであろうと予想される状態に備えておく必要があるといえます。
新NISAの普及で資産形成への意識が高まりつつありますが、こういった認知症や誰かの手を借りなければならない状態になった際にも備えておく必要があります。
また、老後の後半戦においては、単に資産形成の効率のみでなく家族や自分の面倒をみてくれる人が資産を管理しやすい仕組みを考えることも重要です。家族信託、後見人制度、生命保険などを活用しながら、家族への負担が少なく、笑顔で迎えられるようなマネープランを構築しておきましょう。
小川 洋平
FP相談ねっと
CFP
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