【過去最大】直近のドル売り・円買い介入「約9.8兆円」…その“原資”が判明【解説:三井住友DSアセットマネジメント・チーフマーケットストラテジスト】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年6月13日 13時15分
(※写真はイメージです/PIXTA)
チーフマーケットストラテジスト・市川雅浩氏(三井住友DSアセットマネジメント株式会社)が解説します。
●財務省が発表した外貨準備残高の増減から直近実施されたドル売り・円買い介入の原資を探る。
●4月末の証券残高は3月末から169億ドル減、4月29日とみられる介入は米国債売却で実施か。
●5月2日も米国債売却で実施とみられ介入資金は十分用意可能との財務省の強いメッセージに。
財務省が発表した外貨準備残高の増減から直近実施されたドル売り・円買い介入の原資を探る
財務省は6月7日、5月末時点における「外貨準備等の状況」を発表しました。財務省はこれに先立ち、5月31日に外国為替平衡操作の実施状況を発表しており、4月26日から5月29日までの外国為替平衡操作額は9兆7,885億円だったことを明らかにしました。なお、為替介入の原資には、財務省所管の「外国為替資金特別会計(外為特会)」の資金が用いられ、外為特会の外貨は外貨準備に計上されています。
直近では、日本時間の4月29日午後と5月2日早朝に、ドル売り・円買い介入が行われたとみられていますが、その際の介入原資は、月次ベースで公表される速報性の高い外貨準備の内容を検証することによって確認できます。具体的には、4月29日分であれば3月末と4月末の外貨準備残高を、5月2日分であれば4月末と5月末の外貨準備残高をそれぞれ比較し、残高変化の大きい項目が、介入原資と推測されます。
4月末の証券残高は3月末から169億ドル減、4月29日とみられる介入は米国債売却で実施か
外貨準備で介入原資となりうるのは、「外貨」のうち、米国債をはじめとする外国債券などの「証券」と、海外の中央銀行や国際決済銀行(BIS)などへ預け入れる「預金」です。ドル建ての預金は、そのままドル売り原資として使えますが、証券に計上される米国債を原資とする場合、いったん市場で売却し、現金化しなくてはなりません。介入には米当局の理解が必要ですが、米国債の売却を伴う場合は、相対的にハードルが高いと考えられています。
そこで、まず3月末と4月末の外貨準備残高について、項目毎の残高変化をみると(図表1)、証券の残高が約169億ドル減少しており、これが外貨準備残高減少の主因となっています。そのため、日本時間の4月29日午後に実施されたとみられるドル売り・円買い介入は(4~6月期の実施日と日次の介入実績は8月上旬に公表予定)、米国債を売却する形で実施された可能性が高いと思われます。
5月2日も米国債売却で実施とみられ介入資金は十分用意可能との財務省の強いメッセージに
次に、4月末と5月末の外貨準備残高では、証券の残高が約504億ドル減少し(図表2)、外貨準備残高減少の主因となっており、日本時間の5月2日早朝に実施されたとみられるドル売り・円買い介入は、引き続き米国債の売却を伴ったと推測されます。なお、4月と5月の証券減少額を、それぞれ介入直前のドル円レートで円換算して合計すると、約10兆6,380億円となり、前述の外国為替平衡操作額9兆7,885億円を十分カバーしています。
なお、前回は2022年9月22日と10月21日、24日にドル売り・円買い介入が実施されましたが、この時も今回と同様、外貨準備のうち証券の残高が大きく減少し、米国債を売却する形で介入が実施されたと考えられています。このような外貨準備の残高変化をみると、為替介入が必要な場合は、米国債を売却する形で十分なドル資金を用意できるという、財務省からの強いメッセージがうかがえます。
(2024年6月12日)
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『【過去最大】直近のドル売り・円買い介入「約9.8兆円」…その“原資”が判明【解説:三井住友DSアセットマネジメント・チーフマーケットストラテジスト】』を参照)。
市川 雅浩
三井住友DSアセットマネジメント株式会社
チーフマーケットストラテジスト
外部リンク
- 米利下げ回数、「3回⇒1回」に減少も「それほどタカ派的ではない」と言えるワケ【解説:三井住友DSアセットマネジメント・チーフマーケットストラテジスト】
- 【過去最大】直近のドル売り・円買い介入「約9.8兆円」…その“原資”が判明【解説:三井住友DSアセットマネジメント・チーフマーケットストラテジスト】
- 「超円安リスク」と「円急騰シナリオ」…ただ事では済みそうにない“ドル円の今後”【解説:三井住友DSアセットマネジメント・チーフグローバルストラテジスト】
- 「大谷翔平選手がホームランを打つと、日経平均株価が上昇する」というスゴい現象【エコノミスト・宅森昭吉氏】
- 30~50代の5人に1人が「新NISAを始めました!」でも…「新NISAはやめておけ」といわれる7つの理由
この記事に関連するニュース
-
円安の流れは変えられず…「心理的節目」160円突破で加速、161円台が目前に迫る
読売新聞 / 2024年6月28日 7時10分
-
ドル/円 38年ぶりの円安。なぜ、政府日銀が介入するほど円安が進むのか?
トウシル / 2024年6月27日 10時1分
-
「1ドル=160円」突破寸前で高まる警戒感 「三度目の介入」の条件を探る【解説:三井住友DSアセットマネジメント・チーフマーケットストラテジスト】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年6月25日 14時15分
-
外貨準備高、5月末に7兆円減少 ドル売り介入で取り崩しか
共同通信 / 2024年6月7日 12時45分
-
為替介入原資「コメント控える」、米国債売却観測で=鈴木財務相
ロイター / 2024年6月7日 11時5分
ランキング
-
1小田急線「都会にある秘境駅」が利用者数の最下位から脱出!超巨大ターミナルから「わずか700m」
乗りものニュース / 2024年7月1日 14時42分
-
2メルカリの「単発バイトアプリ」利用者伸ばす世相 「何が利点なのか」利用者と店舗の声を聞いた
東洋経済オンライン / 2024年7月3日 13時30分
-
320年ぶりの新紙幣に期待と困惑 “完全キャッシュレス”に移行の店舗も
日テレNEWS NNN / 2024年7月2日 22時4分
-
4ローソン、7月24日上場廃止 KDDIとポイント経済圏の拡大などを目指す
ITmedia ビジネスオンライン / 2024年7月3日 17時46分
-
5「新札ゲットできました」新紙幣求め銀行やATMに行列 導入の狙いは「偽造防止の強化」と「使いやすさ向上」 1万円札は渋沢栄一 5000円札は津田梅子 1000円札は北里柴三郎
TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2024年7月3日 12時8分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください