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母さん、本当のことを話して…年金月13万円、貯金3,000万円の75歳母が「老後破産」の危機!? 46歳長男が母から告げられた“まさかの理由”【CFPの助言】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年6月21日 11時15分

母さん、本当のことを話して…年金月13万円、貯金3,000万円の75歳母が「老後破産」の危機!? 46歳長男が母から告げられた“まさかの理由”【CFPの助言】

(※写真はイメージです/PIXTA)

老後、いったいどのくらいお金を持っていれば安心なのか……平均寿命が伸び続けるなか、昨今の物価上昇もあり、老後生活に不安を抱く人は多いでしょう。しかし、過度な不安は、かえって事態を悪化させることもあるため、注意が必要です。老後、家族に迷惑をかけないために知っておきたいお金のことを、牧野FP事務所の牧野寿和CFPが事例を交えて解説します。

老後2,000万円問題、物価上昇で「老後4,000万円問題」に?

老後の生活資金は、どれだけあれば大丈夫なのでしょう。誰しもが不安に思っている「老後のおカネ」問題ですが、この不安を助長したのが、2019年6月に金融庁のワーキング・グループが発表した「高齢社会における資産形成・管理」に書かれていた、いわゆる「老後資金2,000万円問題」です。

この報告書では、夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦のみの無職世帯で、年金収入が月20万9,198円の場合、支出分の26万3,718円を引くと毎月5万4,520円が赤字になることから、

約5.5万円×12ヵ月×30年=1,980万円

と、平均寿命までに約2,000万円の貯蓄が必要だと指摘されています。これをメディアがこぞって報道したことで、「老後の生活は年金だけでは足りない」と話題になりました。

しかし最近、あるテレビ番組で「老後資金4,000万円問題」が報道されたことをご存じでしょうか。

2023年、東京都区部の消費者物価指数が3.1%上昇したことから、今後も毎年物価が3.5%ずつ上昇すると仮定すると、10年後の物価は1.41倍に。老後資金は2,820万円必要となり、さらに20年後には3,980万円。老後資金は4,000万円必要だという計算になるそうです。

しかし、老後に向けてすべての人に4,000万円の貯蓄が必要かというと、一概にそうとはいえません。世帯ごとの収入や資産、それぞれのお金の使い方によって変わってくるためです。むしろ、過度な心配は冷静な判断力を奪い、思わぬ理由で「老後破産」に陥る危険もあります。

夫亡きあと、戸建てに1人で暮らす75歳のAさん

75歳のAさんは3年前に4歳年上の夫を亡くしており、現在は都内の戸建て住宅にひとりで住んでいます。この戸建ては、亡き夫が40年前に購入したものです。なお、Aさんにはひとり息子のBさん(46歳)がおり、息子は家族で近くの賃貸マンションに暮らしています。

Aさんの主な収入は、自身の老齢基礎年金と遺族厚生年金を合わせて、月約13万円(年間約156万円)です。夫が生きていたときは夫婦で月21万円ほど年金を受給していたため、約8万円減少したことになります。

※ 65歳以上の単身無職世帯の家計の実収入は13万4,915円。実支出は15万5,495円(消費支出14万3,139円+税金や社会保険料1万2,356円)で、毎月2万0,580円の赤字(総務省「家計調査報告(家計収支編)2022年(令和4年)平均結果の概要」の「収支」より)。

収入が減少したとはいえ、養老保険の満期保険金や夫の生命保険金1,500万円を含め、貯蓄は約3,000万円あります。年金だけで足りない月は貯蓄を取り崩していますが、こうした生活にも慣れてきました。

一方で、日々なにげない会話を交わしていた愛するパートナーがいなくなったことには、いつまで経っても慣れません。地元の婦人会の行事に参加したり、友人に会う時間を増やしたりと、ひとりきりでの生活の孤独感を紛らわしていました。

“自衛力”高めのAさんが心配になった「老後のお金」

息子の教えを守ってセールス撃退も…

そんなAさんの悩みは、最近毎日のように自宅の固定電話にセールスの電話がかかってくることです。外壁や屋根のリフォーム、不用品回収、貴金属の買取、電気料金や電話料金の割引など、実にさまざまなところから電話があり困っていました。

息子のBさんに相談したところ、「悪質なセールスや特殊詐欺に引っかかるかもしれないから」とアドバイスを受け、常に留守番電話をセットして、ナンバーディスプレイを表示して発信者を特定する防衛策を取っていました。

※ 警察庁「令和5年における特殊詐欺の認知・検挙状況等について(確定値版)」によると、令和5年の特殊詐欺の認知件数は1万9,038件、被害額は452.6億円。また、犯人側が被害者側に接触する最初の通信手段は77.5%が電話。そのうちの90.5%が被害者の固定電話への架電と判明している。

また、セールスは電話だけではなく、直接自宅に訪問してくることもあります。しかしAさんは、Bさんから「セールスが来て買いたいなと思ったら、話を聞く前にまず俺に相談して」と言われたことから、直接応対することはありませんでした。

ときどき惹かれる商品もあり、うっかり話を聞きそうになったこともありましたが、「お父さんのお金を無駄なものに使うわけにはいかない」と心を鬼にして、インターホン越しにすべて断っていました。

「老後4,000万円問題」という言葉に不安を感じたAさん

そんなある日のことです。テレビを眺めていると、「老後資金4,000万円問題」の特集が組まれていました。

それを見て、「4,000万円には届かないけれど、貯蓄は十分にあるから私は大丈夫ね」と思ったAさんでしたが、しばらく記帳していなかったことを思い出し、念のために預金残高を確認。すると、残高は2,700万円ほどになっていました。知らず知らずのうちに、3年間で300万円ほど使っていたようです。

このままのペースで貯蓄を取り崩しても、当分は大丈夫そうです。しかし、特集でやっていたように、物価が上昇し続けたり、介護や老人ホームに入居する費用が必要になった場合、足りないかもしれない……。Aさんの頭に「老後破産」の4文字が浮かびました。

老後破産は避けたい!Aさんは「マンション購入」を決意

「なにか対策を取らなければまずい」と考えたAさんは、早速動きます。番組で、老後破産対策として「ワンルームマンションを現金で購入し、賃貸することで得た家賃を老人ホームの入居費用にする」という方法を紹介していたことから、パソコンで自宅近辺のワンルームマンションを検索。

すると、自宅から電車で20分ほど行ったところに、2,500万円で売りに出ている中古物件を見つけました。

その物件を仲介している不動産業者に連絡したところ、月約6万円で賃貸できることがわかったAさんは、「今度の週末、息子といっしょに物件を見に行きます」と約束を取りつけました。

その夜、電話で息子のBさんに一連を説明を行い、「マンションを買うから、いっしょに内見に行ってくれない?」と話したところ、Bさんは仰天。慌ててAさんのところに飛んできました。

母さん、よく考えて…息子が説得を試みるも、不安な気持ちから取り乱すAさん

BさんはAさんに、「どうしたの急に。なんでいきなりマンション買うなんて言うの? まさかセールスとかじゃないよね」と尋ねます。

Aさんは、いつもは優しい息子の一変した表情にうろたえ口ごもってしまいましたが、「母さん、本当のことを話して」と諭され、素直にその経緯を話しました。「テレビで特集を見て、マンションを買えば老後のお金の足しになると思ったの」。

するとBさんは、「なんだ……(笑)ああ、よかった。騙されたのかと思った。そんな理由だったの、母さん」とひと安心の様子です。続けてBさんは、次のように言いました。

「でもね、よく考えてよ。いま2,700万円あるでしょ。預金から2,500万円支払えば、残りは200万円だよ。たとえ6万円で部屋を借りる人がいても、マンションの共益費や修繕積立金はオーナーの母さんが負担するから、まるまる収入にはならない。それこそ老後破産すると思うよ」。

しかし、Aさんは意外な反応を見せました。「でもね、お金はなくなっていくんだよ! もう父さんはいないし、あんたに頼るわけにもいかないし、あたし1人でどうにかするしかないの。どうすればいいのよ……」Aさんは取り乱してしまいました。

1人で説得するのは難しいと考えたBさんは、老後の資金計画について一緒に考えてもらおうと、亡き父が懇意にしていたファイナンシャルプランナーである筆者のもとに、母とともに相談に訪れました。

老後破産の可能性は“限りなく低い”が…FPが行った「助言」

母子から一連の話を聞いた筆者は、まずAさんが購入しようとしたマンション周辺の分譲マンションの購入価格と家賃相場を調べることにしました。

相場と比較すると、購入価格は交渉しだいで2,500万円よりもう少し安く手に入れることができそうです。

ただし家賃については、同じような間取りのマンションで5万円台の物件がいくつかあり、なかには新築マンションもあることから、中古で6万円の物件は入居者が集まりづらい可能性があると伝えました。

次に、Aさんは3年間で貯蓄が300万円減ったことを心配していましたので、支出の内訳を一緒に確認します。

すると、生活費以外の大きな出費は防犯カメラやドアの補助鍵、窓ガラスに貼る防犯フィルムなど、Aさんがひとりで住むために設置したものの費用や、亡き夫の1周忌・3周忌の法要費用といったもので、毎年出ていくお金ではありませんし、使途も明確です。

「あまり心配することはありませんよ」とお話ししましたが、Aさんは「でも、私はこれから認知症になるかもしれませんし、介護が必要になったときにまとまったお金が必要でしょう?」とおっしゃいます。

そこで筆者はより詳しくAさんの収支を確認し、試算のうえで次のように言いました。

筆者「現在、Aさんはほとんどの月を年金月額13万円の範囲内で生活できています。もし仮に100歳までの25年間毎月5万円ずつ貯蓄を取り崩し、さらに介護が必要になったとしても、1,500万円+580万円=2,080万円で口座には620万円残ります。ですから、無理にマンションを買わずとも、Aさんは安心して生活できますよ」。

※ 『生命保険文化センター「生命保険に関する全国実態調査」2021(令和3)年度』によると、月々の介護費用は平均8.3万円、介護期間は平均5年1ヵ月。それに住宅改造や介護用ベッドの購入費など一時的な費用平均74万円を加えると約580万円となる。

また、任意後見制度※1や、家族信託※2の制度の利用も、母子で検討するよう提案しました。

※1 任意後見制度……認知症や障害になったときに備え、本人の判断能力があるうちに、「任意後見人」を選び契約を結ぶことで、判断能力がなくなった場合に財産の保護や管理を受けられる制度。今回の場合、AさんがBさんを任意後見人に選定すれば、Aさんが認知症になった場合などにBさんがAさんの財産を管理できる。

※2 家族信託……あらかじめ不動産や金融などの財産を家族に託し、管理や処分を任せる財産管理の方法。

Bさんは親子間のコミュニケーションの重要性を再認識

Bさんと筆者の助言を受けたAさんは、マンションの購入を断念。後日、息子のBさんは、「悪徳商法や特殊詐欺には絶対に合わないように注意していたのですが、まさかの理由で破産するかもしれないところでした。母親とはこまめに連絡をとっていて本当によかったです」と笑いながら話してくれました。

メディアの報道から情報を得て行動に移すのは立派なことですが、その内容はあくまで一例です。自身の家計収支や貯蓄に置き換えるとどうなるのか、特に不動産購入といった大きなお金が動く対策をとる場合には、1人で決めることはせず、まずは信頼できる家族や専門家に相談するなどして、念入りに検討することをおすすめします。

牧野 寿和

牧野FP事務所合同会社

代表社員

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