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「私だけ、なにも知らなかった…」夫を亡くした女性、長年暮らした自宅の「登記簿」を見て衝撃…記載されていた〈想定外の事実〉とは

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年6月16日 11時45分

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(※写真はイメージです/PIXTA)

夫を亡くしたある女性は、広すぎる自宅を売却し、手狭なマンションに越そうと考えていました。ところが、相続手続きのために自宅の登記簿を見たところ、とんでもないことが判明し…。相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が、事例をもとに解説します。

夫が亡くなり、初めて自宅の「登記簿」を見たら…

今回の相談者は、50代の会社員の山田さんです。夫が亡くなり、相続手続きのために資産の確認をしたところ、非常に困ったことが判明したため相談に乗ってほしいと、筆者のところに訪れました。

夫の財産は自宅と預金です。3人の子どもたちは、母親の老後生活のためにすべて母親が相続することで合意し、手続きはスムーズにできています。

「自宅を相続するため、手続きを進めようとしたら…。夫と夫の両親の共有名義になっているのです」

山田さんの夫の両親は、ともに80代と高齢ですが健在です。

「子どもたちは全員独立し、都心部で働いており、こちらに戻る予定はありません。私は広すぎる家を処分して、駅そばの単身用のマンションに引っ越したいと考えていたのですが…」

新築の建売住宅、購入資金を半分援助してくれた義両親

山田さんの夫は二男で、実家を離れています。3人目の子どもが生まれたとき、家を購入することになりましたが、そのとき、夫の両親が半分ほどは援助すると言ってくれたそうです。

「敷地25坪、木造2階建て4LDKの新築の建売住宅でした。場所もよく、建物も気に入り、家族で快適に暮らしてきました」

山田さんの夫は非常に几帳面なタイプで、あらゆる事務的な手続きを率先してやってくれていました。そのため、税金周りなどは、夫が亡くなって初めてタッチしたといいます。

「お恥ずかしい話、自宅の登記簿を見たのも初めてでした。本当に驚いてしまって…」

夫も山田さんに「両親が半分援助してくれた」と言っていたため、購入資金を贈与してもらっただけで、不動産はすべて夫名義だと思っていたのです。ところが、登記簿を見ると土地、建物ともに7/15が夫の父親、3/15のが夫の母親、夫は残る5/15のという割合で登記されていたのでした。

「とりあえずは夫の分の〈5/15〉は私の名義として相続登記をすませたのですが、残る10/15については義両親のままなのです。いったいどうしたら…」

山田さんは夫の配偶者ですが、義両親の相続人ではありません。夫の代襲相続人となるのは山田さんの子ども3人ですが、3人とも生活拠点はすでに別の場所にあることから、名義は山田さんにするのが妥当です。

「遺贈」で生じる不都合とは?

筆者は、山田さんのほか提携先の司法書士を交えて話し合い、そこで、義両親に遺言書を作成してもらい、それぞれから山田さんに遺贈してもらうという案が浮上しました。

「義父も義母も、あの家に名義はありますが〈二男に買った〉という認識だと思います。ですから、私に遺贈する内容で遺言書を書くことも、抵抗はないと思います…」

しかし、夫の両親はお元気とはいえ80代です。いつ相続発生となるかわかりません。もし準備が整わないまま相続が発生すれば、夫のきょうだいにも相続権が発生することになり、困った事態となってしまいます。

それに、相続が発生するまで資産を動かせないことにも不安があります。

妻名義への変更を急ぐなら、売買も選択肢に

やはり、山田さん名義にすることを急がねばなりません。

義両親はすでにあげたものと考えているため「贈与」が第一選択肢ですが、それでは贈与税がかかってしまいます。贈与の場合の価格は路線価が基準になりますが、それよりも少し低い程度の固定資産税評価額でも税務署から否認されることはないだろう、というのは提携先の税理士の判断です。

それでも、土地、建物の10/15は600万円程度となり、贈与税の基礎控除110万円を超え、贈与税を計算をするとおよそ75万円ほど。さらに登記費用、不動産取得税もかかるため、100万円以上の費用が必要です。

これらの負担をなるべく減らすとなると「売買」が選択肢になります。土地・建物10/15を山田さんが義両親から固定資産税評価額で買い取るようにしますが、今回のケースでは、義両親は購入金額よりも安く売却することになるので、譲渡税がかからず、申告の必要もありません。

売買代金は支払うことになりますが、6年に分けて非課税枠の現金を贈与してもらうとして、売買代金と相殺することで現金の移動はなしとします。

義両親の名義があるばかりに、余計な出費がかさむなんて

義両親は他県に暮らしているため、契約書などの取り交わしは司法書士が間に入り、郵送や電話でやり取りをして行いました。

そして、司法書士と筆者の事務所で諸々の必要な手続きを行い、無事に売買の手続きが完了しました。

これらの手続きを経て、ようやく長年暮らした家が山田さん名義になったのですが、そもそも夫名義、あるいは夫と山田さんの共有名義であれば、余計な手間も、余計な名義替えの費用や不動産取得税がかかることもなかったのです。

親が子どもの住宅取得のため、金銭の援助をすることはよくありますが、名義を入れるのではなく、住宅取得資金贈与を活用して贈与するか、金銭消費貸借で貸付金にしておくべきことでした。

住宅購入時に仲介した不動産会社も、将来の相続を想定してアドバイスしないと、このように手間や税金が、あとからのしかかってくるのです。

4LDKの広い戸建ては売却、余ったお金は老後資金に

今回、山田さんは名義替えの費用や不動産取得税がかかりますが、自分名義になれば売却は容易です。4LDKの広い一軒家にひとりで暮らすのではなく、少しコンパクトなマンションに住み替えれば、生活の利便性も向上します。また、買い替え時にお金が余れば老後資金にもゆとりができます。

もし義理の両親の名義が入った状態のまま、義両親が認知症になり意思確認ができなくなれば、万事休すです。

「主人が面倒ごとをすべて引き受けてくれていたので、なにも考えずにのほほんと生活していました。もしなにも準備ができないまま、義両親が認知症になったり、亡くなったりしたら…。早く対処できて、本当によかったです」

山田さんはそういうと笑顔で頭を下げ、笑顔でお帰りになりました。

※登場人物は仮名です。プライバシーに配慮し、実際の相談内容と変えている部分があります。

曽根 惠子 株式会社夢相続代表取締役 公認不動産コンサルティングマスター 相続対策専門士

◆相続対策専門士とは?◆

公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。

「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。

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