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年金月20万円のはずが…定年後も働く65歳、心穏やかな「出戻り社員」のもとへ年金機構から〈戦慄の通知〉が届いたワケ【FPの助言】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年6月21日 11時45分

年金月20万円のはずが…定年後も働く65歳、心穏やかな「出戻り社員」のもとへ年金機構から〈戦慄の通知〉が届いたワケ【FPの助言】

(※写真はイメージです/PIXTA)

原則、65歳からの老齢年金。もらえる予定の年金額をベースに老後の生活設計を立てている人も多いのではないでしょうか。しかしなかには、年金が減らされたり、もらえなくなったりする人がいることをご存じでしょうか? 本記事では石丸さん(仮名)の事例とともに、年金制度の注意点について、FP事務所MoneySmith代表の吉野裕一氏が解説します。

63歳で退職も、物価高の煽りでもう一度会社に戻る

昨年、65歳になった石丸三郎さん(仮名)は、60歳で定年でしたが、雇用延長で63歳まで働いていました。2歳年下の妻の信子さん(仮名)は、61歳までパートで働いていましたが、長女が大学を卒業したのを機に退職。三郎さんと趣味のガーデニングや旅行を楽しんでいました。石丸さんには、25歳になる長男も居ましたが、すでに家を出て一人暮らしをしているそうです。

63歳からは退職金や貯えもあったので、65歳からの年金まで収入がなくても生活できると考えていました。石丸さん自身の年金額は月16万円で、加給年金を合わせると20万円程度になります。

退職をしてからは、再就職する気もなく、のんびりと暮らすつもりでしたが、円安や資源価格の高騰により、日々の暮らしで節約の必要がでてきたと焦り始めます。

65歳になる少し前に、退職金を取り崩す額が増えてきていることで不安に感じていたとき、以前勤めていた会社から、仕事が忙しくなってきているが人材が足りないということで、もう一度働いてほしいという旨の連絡がありました。ちょうど生活費も上がってきているし、妻に働きにでてもらうのも申し訳なく思い、再就職をすることにしました。

復帰後の収入

職場復帰したのは65歳になる前の7月。石丸さんは63歳の最終出勤の日に「これでサラリーマン生活は終いだ!」と同僚たちに告げて会社を去りましたが、結局同じ会社へ戻ってくることとなった多少の気恥ずかしさから「へへっ、戻ってきちゃった」とおどけてみせます。同僚たちもあまり変わらぬ顔ぶれだったため、「戻ってきてしまいましたか」と茶化しますが、温かい雰囲気に石丸さんはほっこりとした気持ちになりました。

経験もあることや、職責者とはなりませんが現役の社員のサポートなどができることなどもあり、月45万円の支給額になったそうです。手取りでは約38万円で、65歳からの年金と合わせて、60万円弱となります。「月38万円受け取れればこれからは生活が少し楽になるし、年金を受け取りだしてからは毎月10万円くらいは貯蓄もできる。65歳になれば、20万円の老齢年金と加給年金が入ってくるので、もっとゆとりができるなあ。これならある程度働けば、また貯蓄を増やせるだろう」と心穏やかな気持ちになりました。

まさかの年金支給停止

ところが「年金決定通知書・支給額変更通知書」という書類が入った封書が届けられました。開けてみると、記載されていた石丸さんの年金額は思っていた額よりも少ないものとなっており、愕然とします「こ、これは笑っている場合じゃないぞ……」。

石丸さんは、「在職老齢年金」という制度があることを知らなかったのです。在職老齢年金は、60歳以上で老齢厚生年金を受け取りながら、会社員などで厚生年金に加入した場合に、一定額以上の場合には、超えた部分の2分の1が支給停止になるという制度です。

令和6年度は、この一定額は50万円となっています。今回の石丸さんのケースでは、老齢年金は総額では20万ですが、内訳としては老齢基礎年金が約6万6,000円、老齢厚生年金が約9万4,000円、加給年金が4万円となっていました。在職老齢年金の対象は、老齢厚生年金部分になりますので、9万4,000円が対象となります。

支給が停止された年金額

在職老齢年金で支給停止になるのは、50万円以上となります。この50万円という額は、

基本月額+総報酬月額相当額

となります。基本月額は老齢厚生年金の年額を12で割ったもので、総報酬月額相当額とは、年金の保険料を計算する際に使われる額で、4月から6月までの給与の額を足して3で割ったものを、「厚生年金保険の保険料額表」にあてはめて標準報酬額が決まります。

今回の石丸さんのケースでは、基本月額が9万4,000円。総報酬月額相当額は会社から支給されているのは45万円ですが、保険料額表でみると25等級の44万円となります。9万4,000円と44万円を足した、53万4,000円と50万円を上回った3万4,000円の2分の1にあたる1万7,000円が支給停止になりました。

「年金が減らされてしまっては、せっかくの老後の計画が台無しだ……。なんとかならないものか……」石丸さんはFPのもとへ相談に行くことにしました。

支給停止にならない方法

支給停止した額は戻ってくることはありませんが、厚生年金に加入している期間が増えることで翌年の年金額を増やすことが可能です。石丸さんは少し不満そうではありましたが納得されながら、「支給停止にならない方法はないのか」とFPに尋ねます。

この在職老齢年金の対象は厚生年金となります。仮に石丸さんが就職をするのではなく、嘱託で仕事を請け負って行うことで、厚生年金に加入しなければ支給停止はありません。もしくは勤務日数を既定の日数で働くのではなく、勤務日数や時間を減らして、給与を少なくすることも選択肢のひとつです。しかし結局石丸さんは、収入を減らすと支給停止と変わらないと考え、このままの条件で働くことにしました。

誰しも収入が多いことに越したことはありませんが、人生100年時代といわれるようになり、定年退職の年齢が上がってきているなかで、今後のインフレを意識した早めの老後資金対策を行うことがより大切な時代になったと筆者は感じています。

<参考>

日本年金機構「厚生年金保険料額:厚生年金保険料額表」 https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/hokenryo/ryogaku/ryogakuhyo/20200825.files/R06ryogaku.pdf

吉野 裕一

FP事務所MoneySmith

代表

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