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実家から消えた〈77歳高齢母〉の痕跡…遺産総取りの〈53歳出戻り長男〉の呆れた言い訳に、〈51歳長女〉震えが止まらず「ふざけるな!」

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年6月16日 5時15分

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(※写真はイメージです/PIXTA)

金持ちは大変だね……他人事と思っていた「相続トラブル」。しかし、裁判沙汰にまで発展するのは「遺産総額1,000万円以下」が最も多く、実は一般人のほうが相続トラブルに巻き込まれやすいというのが実情です。今回は遺産分割、相続放棄にまつわるトラブル事例をみていきます。

高齢の母の面倒をみる代わりに、長男「多めに遺産分割」を主張

実家では77歳の母と53歳の長男の二人暮らし。51歳長女と48歳次女は結婚を機に実家を出て、帰省できるのは盆と正月くらいという距離の町に住んでいます。

長男は元々実家暮らしではなく、大学進学と共に実家を出たきりでしたが、3年前に父が亡くなったのを機に戻ってきたそうです。高齢の母を心配して……というよりも、離婚してひとり自宅を追い出された、というのが正しい言い方なのだとか。

また父が亡くなった際の遺産分割では、自宅のほか、預貯金1,000万円ほどはすべて長男が相続。「わたしはこの家に住み続けられたらいいから、遺産はあなたたち3人(長男、長女、次女)で分けなさい」と言った母に対して、長男は「それであれば、俺が実家に戻って母さんの面倒もみるから、遺産は多めに分けてほしい」と主張。長女と次女が最も懸念していた「高齢母のひとり暮らし」が払拭されるのであればと納得したうえで、父の遺産はすべて長男が相続することになったといいます。

まさに円満相続。ただ、それを揺るがすことが起きたと長女。前触れは2年ほど前からあったといいます。

――お母さんが認知症に!?

「最近、母さんの物忘れが多くなった気がする……」と長男から連絡があり、病院に行くように勧めたところ、認知症と診断。日常生活に大きな支障をきたすほどではないものの、気がかりな毎日がスタートしました。

――この前会った時は、そんなにひどくなかったから、安心していたんですが

ある日、ふと「最近、母の声を聞いてない」ことに気づいた長女。確かに、認知症と診断されてからは、長男から母の様子を聞く機会が多くなり、電話をしても母とは話さないで終わることも多かったとか。

そこで次の電話で「お母さんにかわって」と言ったところ、「ちょうどお風呂に入っている」と話せずじまい。以降も「ちょうどトイレ」「もう寝ちゃった」などと母と話せないことが続き、長女はさすがに心配になったといいます。

実家に帰った長女、家のなかに母の姿はなく…

そこで盆でも正月でもないタイミングではありましたが、長女はひとり、実家に帰省。ただそこに母の姿はなかったといいます。

――あれ、お母さんは?

長女の問いに何も答えない長男。そこで違和感を覚えたといいます。母が不在というよりも、母が暮らしている痕跡がないのです。そこで判明したのが、知らないうちに母が介護施設に入居したという事実。「認知症がひどくなり、施設に入るしかなかった」と長男。そんな大切なことを相談なしで決めてしまうのか、不信感もありましたが、兄も大変だったのだろうと納得したといいます。

長男曰く、ホームに入って1ヵ月ほど。そこで母のいる介護施設に面会にいったところ、そこでも違和感。どちらかといえばふくよかだった母が、明らかに痩せている……そこで施設のスタッフにきちんと食事をとれているか聞いたところ、「もともとすごく痩せていたけど、最近はご飯もちゃんと食べて健康的」と返答。

――えっ、痩せていた!?

そこで長男を問い詰めたところ、母の介護など、ろくにしていなかったことが判明。認知症が進行し、仕事に支障が出そうになったので、施設への入所を決めたという顛末。それでも「俺なりに頑張った」と主張する長男。それに対し「遺産分割のとき、俺に任せておけ、という約束はなんだったのか」と責める長女。長男は何も言い返せなくなったといいます。

施設に入っているとはいえ、とても長男に任せられないと考えた長女。

――もう、お兄ちゃんにお母さんを任せられない。私が全部やるから。施設の費用はお母さんの預金通帳から引き落とし? それも私に預けて

それに対し、頑として通帳を渡そうとしない長男。そこでさらに問い詰めると、長男には借金があり、すでに父の遺産を使い果たしてしまっていること、月16万円の母の年金にも手をつけてしまっていたこと、生活が苦しかったので、その分食費などを削っていたこと(=だから母は激やせ)……このような醜態が通帳からも読み取れるので、長女に渡したくなかったことが判明。あまりの言い訳に、長女は怒りで震えが止まらなかったといいます。

――もう借金も返せないから、この家も売ろうかと……

――何いっているのよ! ふざけないで! 遺産分割もやり直しよ!

とりあえず長女は、長男のことはほっといて、母のことだけを心配しようと決めたといいます。

遺産分割、相続放棄、遺留分…それぞれの時効

相続人の間で遺産を分ける手続きである「遺産分割」。父の遺産分割の際、長女と次女は「遺産はいりません」と、「相続放棄」をしたことになりますが、原則として、「相続放棄」を撤回することはできません。

相続人全員の合意があれば遺産分割をやり直すことはできます。今回の件では、母が面倒を見るといった代わりに遺産のすべてを長男が相続しました。これに対して「約束と違う」と遺産分割協議を解除できるかといえば、最高裁は以下のように判断しているので難しそうです。

「相続人の1人が他の相続人に対して上記協議において負担した債務を履行しないときであっても、他の相続人は民法541条によって上記遺産分割協議を解除することができないと解するのが相当である。けだし、遺産分割はその性質上協議の成立とともに終了し、その後は上記協議において上記債務を負担した相続人とその債権を取得した相続人間の債権債務関係が残るだけと解するべきであり、しかも、このように解さなければ民法909条本文により遡及効を有する遺産の再分割を余儀なくされ、法的安定性が著しく害されることになるからである。」(最判平成元年2月9日)

ただ相続人全員で再分割協議を行うことを否定したものではないので、長男も含めて同意があれば遺産分割を再度話し合うことはできます。しかし長男が同意するとは考えられないので、再び遺産分割が行われる可能性はゼロと考えられます。

遺留分減殺請求によって遺留分を主張するといったことも考えられます。遺留分は一定の相続人に対して、遺言でも奪うことのできない遺産の一定割合の留保分のことであり、法定相続分の2分の1が認められます。実家の価値が2,000万円だとすると、長女や妹には500万円の法定相続分があり、その2分の1の250万円の遺留分が認められる可能性があります。遺留分減殺請求の時効は以下の通り。

民法第1042条

減殺の請求権は、遺留分権利者が、相続の開始及び減殺すべき贈与又は遺贈があったことを知った時から一年間行使しないときは、時効によって消滅する。 相続開始の時から十年を経過したときも同様とする。

遺留分減殺請求を行うことができれば、実家の売却は防げるかもしれません。

[参考資料]

法テラス『相続放棄を撤回することができますか。』

法テラス『遺産分割をやり直すことができますか。』

法テラス『遺留分減殺請求とは、どのような請求ですか。』

法テラス『遺留分減殺請求権に時効はありますか。』

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