「富士フイルム」の秘密…ライバル「コダック」に打ち勝ち、発展し続けたワケ【経営コンサルが解説】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年6月30日 7時15分
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企業の命運がかかる「新規事業開発」。ホンダ、富士フイルム、リクルートなどの有名企業は、どのような戦略で事業を展開してきたのでしょうか? 本記事では、中野正也氏の著書『成功率を高める新規事業のつくり方』(ごきげんビジネス出版)より一部を抜粋・再編集し、有名企業の新規事業開発の事例を紐解いていきます。
有名企業の新規事業開発
新規事業とはどのようなものか、ここでいくつかの有名企業の例を見ていきましょう。新規事業開発は、企業にとって重要な経営戦略であり、その取り組みは企業秘密です。
とくに、「企業としてどのような新規事業をおこなっていくのか」「なぜその新規事業を選んだのか」といった考え方については、なかなか公開されることはありません。そのため、新規事業開発の方向性や戦略については、私があとから見て「こうではないか」と解釈したものになりますことをご了承ください。
ホンダ…二輪車から四輪車へ
実は新規事業の事例は、世の中のいたるところにあります。本田技研工業は1948年に、浜松市で本田宗一郎氏によって創業され、翌年に二輪車の製造を開始しました。1963年に四輪車に進出し、その後、子会社で小型ビジネスジェット機の開発と製造販売をおこなっています。
二輪車から四輪車へ、さらに小型ビジネスジェットへと展開していった軸にあるものは、「移動の楽しさ」や「快適な移動」を追及していったから、といえるのではないでしょうか。
パナソニック…社会の変化に対応した商品開発
電機機器の分野は、さまざまな新規事業の集合体ともいえるでしょう。パナソニックは1918年に、アタッチメントプラグや2灯用差し込みプラグの製造販売からスタートしました。
その後、ランプ・アイロン・電池・ラジオ・テレビと、次々と新規事業に展開していきました。今では家庭向け製品だけでなく、自動車電装品、電池、産業向けデバイスなど、社会のさまざまな分野で事業を展開しています。
富士フイルム…既存の技術力を生かして発展
2006年に社名変更した富士フイルムは、もともと富士写真フイルムという社名でした。
写真用フィルムから映画用フィルム、X線用フィルムなど、写真感光材メーカーとして事業を拡大し発展していきました。その後、カメラ・コピー機・印刷用製版材料など、画像関連の機器分野や産業材などの新規事業に展開しました。
デジタルカメラなどの普及から写真用フィルムの需要が減少しましたが、フィルムなどの既存事業で培ってきた技術を生かし、ヘルスケア(医薬品、診断装置など)、マテリアル(電子材料など)、イメージング(デジタルカメラ、監視カメラなど)と、3つの事業領域で幅広く事業展開しています。かつて写真用フィルム業界のトップ企業で富士フイルムのライバルだったコダックは、世界に先がけてデジタルカメラを開発していましたが、2012年に倒産しました。
富士フイルムは写真用フィルムのライフサイクルが終息するなかで、それに代わる次の世代の事業の柱を創出したことで新たな企業として発展しているといえます。
イオン・イトーヨーカ堂・ヤオコー…専門小売店から全国大型チェーン店へ
小売業では、かつてはスーパーマーケットといった業態はなく、魚屋・肉屋・八百屋・乾物屋・呉服屋など、専門の小売店に分かれていました。そのなかから全国チェーンの大型スーパーや地方スーパーが登場してきました。
イオンは三重県四日市の呉服店が源流です。イトーヨーカ堂は浅草にあった洋品店から、ヤオコーは埼玉県小川町の八百幸商店という八百屋から発展したものです。スーパーマーケットは伝統的な小売店から新規事業によって生まれた、といえるのではないでしょうか。
リクルート…誰も気づいていない潜在的ニーズの発見
新規事業を次々と立ち上げることによって成長してきた企業に、リクルートがあります。1960年に、大学新聞に企業の採用説明会や求人広告を掲載する事業で創業しました。創業2年目に新卒採用の広告だけを集めた情報誌(現:リクナビ)を創刊し、世の中になかった新規事業を創造しました。
その後2000年までのあいだに、住宅の売買情報誌である『住宅情報(現:SUUMO 新築マンション)』を創刊したことを皮切りに、女性のための転職情報誌『とらばーゆ』、中古車売買の専門情報誌『カーセンサー』、旅行関連情報誌『じゃらん』、結婚関連情報誌『ゼクシィ』、グルメなど日常生活を取り上げた情報誌『Hot Pepper』、などを次々と創刊しました。
経営理念に示されている「まだ、ここにない、出会い。」を実現し、発展してきたといえます。
有名企業が発展してきた理由はそれぞれ
ここまで、よく知られている事例を見てきました。
ホンダ、パナソニック、スーパーマーケットの事例は、社会の変化や新たに生じるニーズに対応して、新製品を次々と開発したり、業態を変えたりして、大きく拡大したケースです。
富士フイルムの事例は、既存事業のライフサイクルが終焉を迎えることと並行して、既存事業で培った技術力を生かして新規事業を創出し、さらなる発展を遂げたケースといえます。
リクルートの事例はこれらと異なり、最初から新規事業開発が宿命づけられている企業のように感じられます。「人と人との出会い」や「人と社会とのつながり」を実現するとの視点から、事業を次々と創出し、発展してきました。顕在化しつつあるニーズに対応するというよりも、まだ誰も気づいていない潜在的なニーズを発見し、0から事業を創出し続けたケースといえるのではないでしょうか。
中野 正也
株式会社グローバル事業開発研究所
代表取締役
※本記事は『成功率を高める新規事業のつくり方』(ごきげんビジネス出版)の一部を抜粋し、THE GOLD ONLINE編集部が本文を一部改変しております。
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