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パートもやめたのに…80歳父の介護をした50代夫婦、「遺産分割」できょうだいから受けた“冷酷な仕打ち”【FPが解説】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年7月9日 11時30分

パートもやめたのに…80歳父の介護をした50代夫婦、「遺産分割」できょうだいから受けた“冷酷な仕打ち”【FPが解説】

画像:PIXTA

介護と相続は密接に関係しています。介護の準備不足が原因で「争族」につながることは少なくありません。きょうだい間のコミュニケーション不足や、介護したことの評価が低く見積もられることがもめごとの原因となるケースとして挙げられます。FP歴27年の安田まゆみ氏の著書『もめないための相続前対策: 親が認知症になる前にやっておくと安心な手続き』(河出書房新社)から、一部を抜粋して紹介する本連載。安田氏が、介護の影響でどのように争族へと発展してしまうのか、具体的なケースを交えて解説します。

介護の準備不足で子どもたちが不幸になり、やがて「争族」へ

多くの相続のご相談をお受けしてきた経験からいうと、介護の準備不足が「争族」(相続で家族が争うようになること)につながっていくことは少なくありません。私は、介護と相続は地続きだと思っています。

裁判所が発表している司法統計年報によると、全国の家庭裁判所で発生した遺産分割事件は、1万2981件(2022年)でした。調停を起こすまではいたらなくても、相続人の間で、遺産分割についてもめたというケースは、この数倍はあるかもしれません。

よく、「もめるような財産はないから、うちは大丈夫だよ」という年配の方の声を聞くことがありますが、遺産が多い家庭だけがもめているわけではありません。

遺産分割の調停が成立した場合の遺産の金額を見ると(図を参照)、1,000万円以下で約33%、1,000万円超から5,000万円以下で約43%です。5,000万円以下を合計すると全体の約76%にのぼります。

少ない遺産だからこそ、誰がいくらを相続するのかについて敏感に反応してしまうのではないでしょうか。

私が相談を受けたケースでは、もめるご家庭には共通した特徴がありました。

・ごきょうだい間の仲が悪い

・介護の負担が特定の人に偏っている

・相続財産の評価が、預貯金よりも自宅不動産の割合が高い

・生前の贈与(資金援助)に、偏りがある

・きょうだい間で不公平な遺言が遺されていた

などです。きょうだいといえども価値観も違いますし、親元を離れて長い期間がたてば、疎遠になっていることも多く、コミュニケーションもほとんど取れないことが多いです。

このような状況で、急に介護が始まったりすると大変です。介護の押し付け合いで感情を対立させ、そのまま相続が発生、というようなケースもあります。かなり最悪な関係で相続に向かい合うことになります。  

介護したことの“評価の低さ”

こんなケースを想像してみてください。

ひとり暮らしをしていた父親(80歳)の介護が始まりました。子どもは3人。みな50代。まだ、それぞれの子どもが中学生や高校生で、これから教育資金がかかってくるので、共働きやパートなどで、教育資金をせっせと貯めています。

子ども世代がこのような状況にあるときに、親の介護が始まると、多くの場合、介護の押し付け合いが起こります。

「忙しいから仕事を休めない」ことを理由に、「自分は介護に携われない」ことを主張し合うのです。「介護=時間がとられて大変=いつまで続くか見通しが立たないから大変」という介護に対する情報不足、知識不足のために起こる態度なのです。

結局、親の近くに住む子どもが中心となって介護を担うことになります。

実際は、その子どもも仕事を休めないとなると、パートやアルバイトをしている配偶者に実務を担ってもらうことになったりします。

中心となっている子ども夫婦がひたすら、病院通い、介護事業者との連絡、お金の管理等を一手に担っていくことになります。要介護状態が重くなれば、頻繁に親元に行く必要があるため、配偶者は、パートも辞めざるを得なくなります。

残念なことに、他のきょうだいたちは、各々の仕事を言い訳にした手前、親の介護にあまり協力的ではなく、平日の病院への付き添いを一度も代わろうとはいいだしてきません。

やがて相続が発生すると、親の遺産分割が始まるわけですが、介護に携わらなかったきょうだいたちは、介護を担った人には多少の上乗せはするものの、遺産はほぼ平等に分けよう、と主張します。介護に携わった子どもは、どう思うでしょうか?

パートを辞めてまで、親の介護のために奔走した時間への評価は、少なすぎるほどです。パートを続けていれば、得られていたはずの収入については、機会損失をしているにもかかわらず、見て見ぬふり。

介護をした者にとっては、介護をしてきた事実が軽視されることが許せなく、不満が募ります。

他のきょうだいたちは、介護に携わっていないがゆえに、介護に費やした時間、経済的な損失、精神的な疲労、そのどれについてもリアルには想像することができません。

介護をした者が主張している寄与分についての評価が、きょうだい間でずれてしまうために、介護をした者は遺産分割に対する不平等感を募らせ、他のきょうだいたちとの間に溝が生まれて、不仲となり「相続」が「争族(争う家族)」となってしまうのです。

介護についての準備不足は、このような不条理な状況を生み出していきます。このようなケースは、珍しいことではなく、どこにでも起きていることではないかと思います。

安田 まゆみ

ファイナンシャルプランナー

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