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言い間違いです!は通用しない…税務調査で〈重加算税〉を課される“意外なひと言”【税理士の助言】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年6月23日 11時15分

言い間違いです!は通用しない…税務調査で〈重加算税〉を課される“意外なひと言”【税理士の助言】

(※写真はイメージです/PIXTA)

税務調査の目的は「不正行為の防止」です。申告漏れは是正されるべきで、それが意図的であれば釈明の余地はありません。しかし、なかには自らの“出世”のため、理不尽に重加算税を課そうとする調査官も存在します。そこで、自らの身を守るためにも、税務調査における調査官の心情や、税務調査での理想的な対応をみていきましょう。多賀谷会計事務所の宮路幸人税理士が解説します。

コロナ禍以降、税務調査が急増している

3年におよんだ新型コロナウイルスの流行が落ち着いていくに連れて「税務調査」が急増しています。

国税庁の2022事務年度(22年7月~23年6月)の税務調査結果に、その傾向が表れています。法人税、所得税、相続税いずれも、実地調査件数がコロナ禍全盛であった20事務年度を底として、急激に回復しているのです。

税務調査の「精度」も向上

また、コロナ禍以前よりも、税務調査の精度が向上している点も見逃せません。

調査件数はコロナ禍前に届いていないにもかかわらず、法人税、相続税の追徴税額は高水準を記録しています。また、所得税の追徴税額にいたっては、コロナ流行前の19事務年度を上回っているのです。

国税庁は、AI(人口知能)を活用したデータ分析を進めており、申告漏れの可能性がある納税者を判定する精度について、今後さらに向上することが予想されます。

税務調査で“狙われやすい会社”の特徴

バー、パチンコ店、廃棄物処理業は税務調査に入られやすい

過去の実績から「不正が多い」とみられている業種は、比較的税務調査に入られやすいといえるでしょう。昔から、バーやクラブ、パチンコ店のほか、廃棄物処理業、土木工事業などは狙われやすい業種といわれています。

また、一般的には赤字の会社よりも黒字の会社のほうが調査されやすいです。そのほかにも、急激に売り上げが伸びた場合や外注費が大きく増加した場合など、前年に比べ大きく変動した科目がある場合は税務署の目につきやすくなります。

さらに、過去に税務調査に入られて大きな申告漏れを指摘されたことがある場合や、反対に長期間税務調査に入られていない場合なども調査対象になりやすいでしょう。

近年、国税庁は「消費税」「国際取引」「富裕層」を重点的な調査項目としています。まず消費税については、外国人旅行者の立場を利用した免税取引などで、主に大手百貨店が申告漏れを指摘されています。さらに、富裕層を中心とした「海外資産の保有」が問題視されているため、この点にも注意が必要です。

税務調査官が“血眼で”申告漏れを探すワケ

そもそも税務調査とはなんでしょうか? 

日本では、法人税や所得税をはじめとする多くの税金について、納税者(法人、個人)が自ら税額を計算して申告納付する「申告納税制度」が採用されています。

第三者によるチェック機能がないと、虚偽申告や不正行為が行われやすくなることから、これを防止する目的で納税者が正しく税務申告を行っているか税務署が確認・調査するのが「税務調査」です。

では、調査官は税務調査でなにを狙っているのでしょうか? 調査官にとって、税務調査は仕事の一環であり、その調査結果が本人の評価につながります。つまり、調査に行ってもなにも見つけられない調査官は評価されず、多額の納税漏れを見つける調査官が評価されるということです。

調査官が特に重視する「2つ」のポイント

調査官が重視するポイントは、

①「重加算税」をとれるか

②「増差税額」が多いかどうか

の2点です。

「重加算税」というのは、売上除外や架空経費、裏口座の作成など、税申告に際して“意図的な”仮装や隠ぺいが認められた場合に課される税金のことです。

通常の申告漏れの場合、10~15%の「過少申告加算税」が課せられるのに対し、重加算税は35%(無申告の場合は40%)とかなり重くなっています。また、重加算税は、調査官からすると「悪質な申告漏れを見つけた」として自身の評価につながるため、申告漏れが“意図的であったかどうか”は、調査対象者にとっても調査官にとっても非常に重要です。

加えて「増差税額」が多いかどうかも重要となります。増差とは、税務調査の過程で税金を申告された額より多く指摘し納税させることです。税務調査官の査定は、増差(増減差額)によって決まるため、増差税額はいわば“調査官の営業成績”ともいえます。

自分の評価を上げるため…なかには悪質な調査官も

税務調査官のなかには、自己の査定ポイントを高めるために、なかば強引に「あなたの申告内容は悪質であるため、重加算税の対象となります」と指摘し、重加算を課税しようとする調査官もいます。

もちろん数でいえば多くはありませんが、特に税務調査時に税理士の立会いがない場合、納税者も対応方法がわからず、一方的に当局の都合のいいように課税させられることがあるようです。

“安易な同意”は絶対NG!「言い間違いです」は通用しない

税務調査官の質問や指摘に対して否定したり反抗的な態度をとったりすると、調査官からの心証が悪くなってしまい逆効果――

そんな話を聞いたことがある人も多いでしょう。しかし、もっと言ってはいけないセリフがあります。それは、「そうかもしれません」です。意外かもしれませんが、調査官からの質問に対しては、否定よりも不確かな状態で同意してしまうことのほうがよっぽど危険なのです。

たとえば、売上の「計上漏れ」であれば過少申告加算税で済みますが、売上の「除外」となると重加算税が課せられます。「売上計上漏れ」であれば “うっかり漏れた”ですが、「売上除外」となると“意図的に売上を計上しない=悪質”と判断されるためです。

したがって、税務調査で計上漏れが発覚した場合、調査官は「これは『売上除外』ですか?」と確認してきます。

そこで安易に同意することなく、「いえ、これは故意に除外したわけではなく、単なる売上の計上漏れです」ときっぱり否定することが大切です。

意図的に行ったのではないか? という点に調査官はこだわりますが、事実でないときは安易に同意せず、きちんと否定しましょう

また、よくわからないまま返事をするのもNGです。記憶が曖昧なときは、「確認したあと、のちほど回答します」と答えることをおすすめします。

「申述書」も安易に書いてはならない

また、税務調査のあと、調査官が「申述書」を納税者に書くように求めてくるケースもあります。申述書は重加算税を課すための証拠となるため、納税者に対し「売上を除外しました」と記載するよう求めるのです。

しかし、申述書の記載が求められるということは、逆にいえば申述書がなければ重加算税を課すという決定的な証拠がないともいえます。

もちろん明らかに不正を行ったり間違っていた場合は申述書を書くべきですが、事実と異なるのに、そのような申述書の記載を求められた時は安易に書かないほうがよいでしょう。

むやみに同意すると不利益を被る

税務調査を行う調査官には、さまざまなタイプの人がいます。なかには、今回紹介したように、自分の査定評価を上げるために強引な指摘をしてくる人もいるでしょう。

また個人としてそういう意図はなくとも、税務調査は「性悪説」(=対象者は悪いことをしているに違いないという考え)をもとに行われる一面があります。

一般的に対象者は、「税務調査に来る」と言われると緊張します。早く終わらせたいからといって、よくわかっていないのに、税務署の指摘のまま同意して修正申告を出すケースが少なくありません。

しかし、1度税務調査に入られ、重加算税の指摘を受けたりすると、「この会社は不正を行う会社なのだ」というレッテルを貼られ、その後も不利益を被ることがあるため注意が必要です。

もちろん意図的に「仮装・隠蔽」をしている場合は重加算税を受けても仕方ありませんが、そうでない場合は安易に同意せず、きちんとした主張を行うべきでしょう。

宮路 幸人

多賀谷会計事務所

税理士/CFP

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