【フジテレビプロデューサーへインタビュー】 知られざる、メディアの“裏側”…情報の取捨選択時に心がけている「たった1つのこと」
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年7月4日 8時15分
※画像はイメージです/PIXTA
多くの視聴者を抱え、その広告効果も絶大である「テレビ」。企業の広報担当者にとって、重要な広告媒体となるでしょう。では、テレビ局サイドからは企業の広報担当者にどのようなことを期待しているのでしょうか? 本記事では、広報コンサルタントの三上毅一氏の著書『広報のプロが教えるメディアのトリセツ』(中央経済社)から、フジテレビジョン・ニュース総局報道局報道センター部長職プロデューサーへのインタビューより紐解いていきます。
フジテレビが広報・PRに求めるものとは?
フジテレビジョン ニュース総局報道局報道センター部長職プロデューサー 清水 俊宏(しみず・としひろ) PROFILE 株式会社フジテレビジョン ニュース総局報道局報道センター部長職プロデューサー兼ビジネス推進局コンテンツビジネスセンター プラットフォーム事業部。 2002年フジテレビ入社。記者、ディレクター、報道番組プロデューサーなどを経て、テレビニュースのデジタル化や新規事業開発の担当に。 「FNNプライムオンライン」「フジテレビュー!!」などオンラインメディアを創設したほか、経済系YouTube番組『#シゴトズキ』をMC兼プロデューサーとして立ち上げ、大企業幹部やスタートアップCEO、タレントなど多彩なゲストから「仕事に役立つ思考法」を聞き出している。 広報・PRに関するセミナー登壇も多数。 2023年7月より平日夜のニュース番組『FNN LIVE NEWS α』のチーフプロデューサーに就任。インタビュアー:著者
質問1:個人・編集部・番組としてどんな情報を求めていますか。
「掛け算すると面白い情報」への感度は高く、と常に心がけています。地上波やネットなどさまざまな番組やメディアを担当しているため、ニュース、エンタメ、テクノロジーなどあらゆる分野の新しい情報を求めています。
そうは言っても、超大量に情報が溢れる社会の中で、すべての情報を受け取って処理することはもちろん不可能です。「すべて」は無理だとしても「幅広く」。そこで自らの情報取得のフィルターをかける時に心がけているのが、トレンドとタイミングとの掛け算です。
例えば、「宇宙」「AI」といった情報は日常生活から遠く感じられるため、番組担当者からは敬遠されがちです。しかし、現在のトレンドとしては絶対に抑えておいたほうがよい。それが、「夏休みの」「受験勉強の」「母の日の」といったニュースにしたいタイミングにぴったりはまる内容であれば、新しい情報発信の形が模索できる可能性があります。
広報・PR担当の皆さんが「まずはメディアを知ることから」と考えているように、我々メディアは「まずは視聴者やユーザーを知ることから」始めています。ユーザーの欲しがっている情報を考えたうえで、さらに新たな発見につながるような「独自の視点」を付加したいと考えています。「視聴者が(潜在的にも)知りたい情報」×「新しい独自の視点」がどこかにないかなと、いつもアンテナを張っています。
質問2:社内での企画の通り方について教えてください。
番組によってまちまちではありますが、
情報取得→企画会議で検討→プロデューサーが最終判断という形が多いです。ただ、私がMC兼プロデューサーを務めるYouTube番組『#シゴトズキ』に関して言うと、ゲストや内容の多様性を担保するために、プロデューサーである私は責任だけを負うことにして、最終決定権は編集メンバーに任せています。
責任はあるので拒否権や修正提案権はありますが、私が提案した企画が通らないことも多々あります。
質問3:読者層、読者が持つ関心分野や事象について教えてください。
YouTube番組『#シゴトズキ』のユーザー層は20-40代のビジネスパーソンが多いのですが、新しい働き方やZ世代の動向に興味を持っている方が多いようです。
また、新しく私が担当を始めた『FNN LIVE NEWS α』も同じ視聴者層ですが、「働く人のプラスαにつながる」をコンセプトにしていることもあり、マーケティングなどスキルアップにつながる情報は関心が高いようです。
質問4:広報パーソンへのアドバイスやメッセージをお願いします。
「広報・PRは恋愛と同じだ」と思っています。恋愛では、見た目や収入がどれだけ優れていても、相手が自分に興味がなければ振り向いてももらえません。同様に、どれだけ優れたサービスや製品であったとしても、その魅力にメディア側が気づかないこともあります。
「絶対に成功する恋愛テクニック」がないように、「絶対に成功する広報・PRテクニック」はありません。そう聞くとどうすればいいのかと頭を抱えてしまいそうですが、それほど難しい話ではありません。
もし好きな相手ができたらどうしますか? 相手のことをよく知って、自分に振り向いてもらえるような作戦を色々と練るのではないかと思います。自分のことを無理やり押し付けて、逃げていく相手に「どうして自分の魅力がわからないの?」と苛立ちながらアプローチしても進展はありません。自社の製品やサービスに自信を持つことは大事ですが、それを押し付けるのではなく、どうやって興味を持ってもらえるかを考えるのが成功の近道です。
「広報・PR」「メディア」という文字を見ると血が通っていなくて何か方程式でも存在しそうな感じがしますが、広報・PRをしようとしている皆さんが人間であるように、メディアも人間の集まりです。
メディアは広報・PRの皆さんから説得される側ではなく、一緒に情報を届けたいとさえ思っています。ぜひ自分に自信を持ち、相手のことを知り、後悔のないアプローチをしてみてください。
片想いの段階であったとしても焦らずに、「どうやったら振り向いてもらえるかな」とその状態を楽しむくらいのほうが、きっと“恋愛”はうまくいきます。
三上 毅一
㈱ベンチャー広報
CKO(Chief Knowledge Officer)最高知識責任者
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