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しまった、年金繰下げしなきゃよかった…70歳会社員、5年後には「年金28万円」も〈新NISA〉登場で大後悔のワケ【CFPの助言】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年6月23日 11時45分

しまった、年金繰下げしなきゃよかった…70歳会社員、5年後には「年金28万円」も〈新NISA〉登場で大後悔のワケ【CFPの助言】

(※写真はイメージです/PIXTA)

年金の受給開始時期を遅らせることにより、受給額を増やせる「年金の繰下げ受給」。上限年齢は現状75歳で、長生きリスクへの予防にも繋がります。しかし、近ごろ話題の新NISA制度の登場により、請求してから後悔する人もいるようで……。本記事では、Aさんの事例とともに年金繰下げと高齢期の資産運用について、CFPの伊藤貴徳氏が解説します。

生涯現役…働けるうちは年金は受け取らずに増やす

Aさん(70歳男性)は運輸業で働き、65歳で定年退職。以降継続雇用で現在も働いています。もともと大きな浪費をするタイプではなく、年金を受け取らなくても給与と貯蓄で生活できる状態だったため、年金は請求せず、繰下げを選択しました。生涯現役がモットーのAさんは、働けているうちは年金を繰り下げる予定です。

Aさん(70歳) 手取り給与:月17万円 生活費:月15万円 65歳から受取る予定であった年金額:月約15万円 75歳までの繰り下げた場合の見込み年金額:月約28万円

「いますぐにお金が必要なわけではないから、受給を繰下げしておこう。繰り下げた分年金が増えるなら儲けもんだ」そんな気持ちで日々を過ごしていました。

年金繰下げ、後悔の理由

70歳となったある日。ふとしたことからAさんは繰下げを後悔します。後悔のきっかけは、テレビで紹介されていた「新NISA制度」。聞くところによると、政府が推している運用制度で、税金も優遇されて、高い利率で運用されているものがあるとのこと。

「わざわざ年金を繰下げしなくても、65歳で年金を受けとって運用していればよかったんじゃないか? しまった、新NISA制度で運用していればよかった……」Aさんは激しく後悔しました。

Aさんの思うとおり、年金の繰下げよりも新NISAをはじめとした資産運用を選んだほうがよかったのでしょうか? 年金繰下げと資産運用について見ていきましょう。

年金の繰下げとは

老齢年金は、65歳で受け取らずに66歳以後75歳までのあいだで繰り下げることで増額した年金として受け取ることができます。繰り下げた期間によって年金額が増額され、その増額率は一生変わりません。

どのくらい増額されるかというと、1ヵ月繰り下げるごとに0.7%が増額となります。つまり、65歳から1年間繰り下げて66歳から年金を受け取ると0.7%×12=8.4%の増額となります。令和4年4月より、75歳まで繰り下げられるようになったため、75歳までの10年間繰下げをすると最大で84%も年金額を増加させることができるのです。

Aさんが年金を75歳まで繰り下げた場合の年金額 15万円×84%=12万6,000円 15万円+12万6,000円=27万6,000円 →75歳から1ヵ月あたり27万6,000円の年金を受け取れる

新NISAとは

新NISAは、資産運用によって得られた売却益が非課税となる国の制度のことをいいます。主に株式や投資信託を自分で選択し、運用の管理は自身で行います。通常、証券会社等で証券口座を開設して取引を行った場合、利益には約20%の税金がかかりますが、新NISAにはそれがありません。かつ、現在は世界的に経済が上向きなこともあり、一部の投資信託では年利5%以上の運用成績を出しているものもあります。

最近は上昇してきているとはいえ、普通預金の金利が0.02%程度と考えると、投資信託と比較すると利率には大きな差があることがわかります。

「年金の繰下げをして、75歳から約28万円の年金を受け取るのもいいが、年金を65歳から受け取って月15万円を運用していたら、もっと効率よく貯めることができたんじゃないだろうか?」というのがAさんの主張です。

Aさんの思惑 →65歳からの年金を新NISAで運用し、65〜75歳の運用成績でおよそ2,300万円を受け取り、かつ、その後は積立に充てていた月15万円の年金を受け取ることができる!

しかし、ここには大きな誤算があったのでした。

誤算1.積立額には上限がある

新NISAになってからは月10万円(年間120万円)の積立が可能となりましたが、2024年1月より前の旧NISA制度では年間40万円が積立の上限でした。つまり、Aさんが年金の繰上げを選択した時点は年間で40万円までしか積立をすることができず、そもそもの計画を実行できなかったことになります。

新NISAとなった現在でも、つみたて投資枠での運用は1ヵ月あたり10万円が限度となります。

誤算2.利率が保証されているわけではない

新NISAでは、投資対象である投資信託を自ら選択して運用を行います。投資信託をはじめとした金融商品は、元本が保障されていないものがほとんどです。価格の変動幅というリスクを許容しながら、リターンを享受するという考え方が必要です。先述の年率5%という数字はこれまでの成績であり、将来の利率が確約されているわけではありません。将来大きな経済の変動が起きた時には、預けた金額を割り込んでしまう可能性があることも考慮しておきましょう。

Aさんは利率の高さに魅力を感じていましたが、投資信託の変動リスクの存在を知りませんでした。

「元本保証でこんなに利率が高いのなら、繰下げなんてせずに新NISAで運用するべきと思っていたけれど、減ってしまう可能性もあるんですね。積立額には上限もあるようだし、もっとしっかりと調べて理解したうえで相談すればよかった。無知でお恥ずかしい限りですが勉強になりました」

運用するなら新NISA制度は積極的に活用を

将来の大切な生活費となる年金。できることなら効率的に増やしていきたいと誰もが思うはずです。今回、Aさんの思惑は外れましたが、年金の一部を運用に充て、将来のために準備するという方法は効果的であるように思います。

新NISAは、長期で続けることで効果的な運用と着実な資産形成が見込めます。利益が非課税となるのは運用面で大きなメリットですし、新NISAとなってから非課税期間が無期限となったのも長期的な資産形成に大きなプラスとなりました。

ただ、いい面に目が行きがちですが、リスクについてもしっかり理解を深めたうえで自分に合った運用方法を探していただけたらと思います。

年金繰下げと新NISAのそれぞれの特徴と注意点

年金繰下げについて ・1ヵ月繰り下げるごとに0.7%が増額。最大10年の繰下げで84%の増額が見込める ・増額率は固定 ・繰下げ中は年金を受け取れない 新NISA(つみたて投資枠)について ・株式や投資信託等、自分で金融商品を選んで運用 ・運用益は非課税 ・つみたて額は月10万円が上限 ・元本保障されていない(運用成果は自己責任)

伊藤 貴徳

伊藤FPオフィス

代表

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