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悔やんでいます…定年後、退職金2,000万円で住宅ローンを「全額繰上返済」した63歳男性の後悔【FPの助言】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年7月1日 11時15分

悔やんでいます…定年後、退職金2,000万円で住宅ローンを「全額繰上返済」した63歳男性の後悔【FPの助言】

(※写真はイメージです/PIXTA)

定年退職金の使い道として、住宅ローンの繰上げ返済をあげる人は少なくありません。しかし、繰上げ返済はその後の生活に支障をきたす恐れがあるため、あまりおすすめとは言えないようです。収入が減る定年退職時に住宅ローンを返済することは賢明な判断に思えますが、いったいなにが危険なのでしょうか。株式会社FAMORE代表取締役の武田拓也FPが、具体的な事例を交えて解説します。

住宅ローンの「繰上返済」には要注意

人生でもっとも高い買い物といわれる住宅。マイホームを手に入れることは、多くの社会人にとって1つの目標でしょう。

金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査」をみると、2人以上世帯の持家率は全国平均で68.9%となっています(令和5年、全国平均)。年齢別にみると、20歳代では持家率が29.2%と3割を切っていますが、年齢が上がるにつれて持家率も上昇し、60歳代以上では約8割となっています。

とはいえ、マイホームは高額であるがゆえに現金一括払いで購入する世帯は少なく、ほとんどの世帯が住宅ローンを組みます。

ローンを組むということは一定期間借金をすることになるわけですが、実際に総務省の「家計調査報告」によると、2人以上世帯に占める負債保有世帯の割合は39.3%と、約4割にのぼります。このうち、負債現在高の約9割が「住宅・土地のための負債」です。

また、三井住友トラストが自宅購入者3,947人を対象に行ったアンケートによると、「自宅購入時のローン利用の有無」については「住宅ローン利用中」「住宅ローンで購入したが返済完了した」世帯の比率が全体で78.6%、特に30代では高く84.0%となっており、30代で住居を購入している人の多くはローンを利用していることがわかります。

住宅ローンは一般的に30年〜35年で組み、月々の返済を抑えます。そのため、60歳の定年を迎えるまでにローンを完済できる人は少ないのが現状です。そのため、多くの人は定年退職後も住宅ローンを払い続けるか、もしくは後述の事例のように、退職金を使って完済する人も少なくありません。

「繰上返済」には向き・不向きがある

定年退職後の生活を見据えて、住宅ローンの「繰上返済」を検討している人も多いのではないでしょうか。長年働いて得た資金をどのように活用するかは大きな決断です。

繰上返済は、利息の節約や返済期間の短縮といったメリットがある一方、手元資金が減少し、老後なにかあった場合の対応が難しくなるというデメリットがあります。

そのため、預貯金や資産が豊富にある人は繰上返済をしても問題ありませんが、手元資金が心許ない人は繰上返済をせず月々の返済を継続したほうがよい場合もあります。

このように、住宅ローンの繰上返済は「向いている人」と「向いていない人」がいるのです。

住宅ローンを「退職金で一括返済」した男性の後悔

元会社員の誠さん(仮名・63歳)は、現役時代に購入した一戸建てに妻と2人で暮らしています。なお、子どもは2人いますが、すでに独立しそれぞれに家庭をもっています。

誠さんは3年前、退職金2,000万円と貯金の一部を使って、住宅ローンを全額繰上げ返済しました。

夫婦ともに借金がストレスに感じるタイプであったため、長年負担になっていたローンが終わりスッキリ。「これでようやく借金がゼロだ! 男としてやるべきことはやったぞ!」と、誠さんはしばらくのあいだ達成感に包まれていました。

定年退職のタイミングで、会社から再雇用の打診もありましたが、年収が半分以下と大きく下がってしまうことから、悩んだ末に退職を選択。定年後は働かず、年金生活を送っています。誠さんに趣味はなく、お金を使う機会はたまの外食と、妻と年に1度行く国内旅行くらいのものです。

「借金もなくなったし、贅沢や無駄遣いにさえ気をつけていれば老後も大丈夫だろう」と安易に考えていた誠さんですが、この3年のあいだに親の介護や自宅のリフォームなどでまとまった支出があり、貯金が500万円を切ってしまいました。

「こんなことになるなら、手元にキャッシュを残しておけばよかった……」

老後への不安に耐えきれなくなった誠さんが友人に相談したところ、お金の専門家であるファイナンシャルプランナーを紹介され、老後の資金計画を立てようと筆者のFP事務所へ相談にやってきました。

誠さんは、「正直、退職金の使い道を悔やんでいます……このままでは老後の生活が成り立たないかもしれません。なんとかなりませんか?」と切羽詰まっている様子です。

散財はしていないが、手元資金が寂しい…誠さんに解決策はある?

誠さんは真面目に仕事をされてきて、退職後もとくに散財することなく過ごしていました。しかし、住宅ローンを繰上返済したうえ、予期していなかった介護やリフォーム費用が発生し、手元資金が少なくなってしまったようです。

誠さんは貯金の少なさから将来への不安感がつきまとい、日常生活を平穏に過ごせない状態になっています。

誠さんが今後安心して生活を送るためには、少しでも手元資金を増やしておきたいところです。しかし、年金暮らしをしている誠さんにとって手元資金を増やすことは容易ではありません。

では、流行りの株式投資などをすればよいかというと、それもまた難しいところ。これまで投資経験のない誠さんがいきなり株式投資を始めたからといって儲かる保証はなく、「〇〇ショック」などと相場が崩れてしまえば大損する可能性もあります。

FPが提案した「2つ」の対策

1.まずは資産の棚卸しから

多くの日本人は、生命保険に加入しています。生命保険には掛け捨ての商品もありますが、「個人年金保険」「養老保険」「終身保険」など掛金が貯まる貯蓄型の商品もあります。

この貯蓄型保険から満期金や解約払戻金がいくらあるかを確認すると、世帯によっては予想外に資金に余裕がある場合もあります。

誠さん夫婦も貯蓄型の生命保険に加入しており、満期金・解約返戻金は1,000万円ほどあることがわかりました。

2.「投資信託」や「債券投資」で、余剰資金を運用する

「1,000万円もあるんですか!」と安堵の表情を見せた誠さんですが、夫婦の将来のことを考えると、介護などに備えてもう少し金銭的な余裕をつくっておきたいところです。

いきなり株式投資は抵抗のあった誠さんですが、株式投資よりもリスクの低い「投資信託」や「債券投資」の説明をしたところ、興味を示されました。仮に、1,000万円を無理せずに年利1~5%程度で運用することができれば、年間10~50万円程度(税金は考慮せず)の資産収入が得られます。

加入している生命保険の予定利率が高ければ解約する必要はありませんが、利率が低い場合には、保険を解約して資産運用に回すというのも選択肢のひとつです。

住宅ローンの全額返済は慎重に

退職金はまとまったお金が手に入ることから、「借金を返したい!」と住宅ローンを全額返済したくなりますが、よく考えてから手続きを進めましょう。預貯金のままであればいつでも手元に引き出すことができますが、繰上返済した場合には持ち家を売却しない限り、手元に現金は戻りません。

将来に必要になりそうな資金と手元資金を計算して、無理のない金額を返済するようにしましょう。

また、勉強せずに投資にチャレンジするのは考えものですが、怖いからといってまったく手をつけないのももったいないことです。政策金利が少し上がったとはいえ、預貯金ではお金はほとんど増えませんから、まずは少額から始めてみることをおすすめします。

判断が難しい場合には、資産運用と生命保険の両方に詳しい専門家に相談してみましょう。

武田 拓也 株式会社FAMORE 代表取締役

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