だから相続税はごまかせない…「身内が亡くなると、税務署にすぐバレる」という衝撃の事実【税理士が解説】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年8月3日 12時0分
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(※写真はイメージです/PIXTA)
「相続が3代続くと家はつぶれる」という言葉は、日本の相続税の高さを表しています。税負担から逃れるべく「身内が亡くなったことなんて税務署にはわからないのでは?」「贈与してもらった財産ですと言えばごまかせるんじゃないか」と考える人もいますが、その考えは甘いと言わざるを得ません。税理士法人レガシィ代表・天野隆氏の著書『相続は怖い』(SBクリエイティブ)より一部を抜粋し、見ていきましょう。
「相続が発生した」という事実は必ず税務署に伝わる
人が亡くなると、死亡した人の本籍地、亡くなった場所または届出人(多くの場合家族)の所在地の市町村役場に死亡届を提出しなければなりません。このことについては戸籍法第25条に定められています。
死亡届を提出すると火葬許可証が発行され、火葬場でこれを提出して火葬の証明が記入されると埋葬許可証となって埋葬ができるようになります。
こうした葬儀を行うための流れと並行して、死亡届に関する情報は税務署にも通知されることになっています。
根拠となるのは相続税法第58条です。
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市町村長その他戸籍に関する事務をつかさどる者は、死亡又は失踪に関する届書を受理したときは、当該届書に記載された事項を、当該届書を受理した日の属する月の翌月末日までに、その事務所の所在地の所轄税務署長に通知しなければならない
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なぜこのような定めがあるのでしょうか。それは相続税を取りはぐれることがないようにするためです。
国税庁と国税局、それに全国の税務署はKSKシステムというネットワークでつながっています。ちなみにKSKは、「KOKUZEI SOUGOU KANRI(国税総合管理)」の略称です。
全国ネットワークになっているので、日本のどこかで死亡届を出せば、他の場所でも見ようと思えば見ることができます。つまり亡くなったのをごまかすことができないシステムになっているというわけです。
死亡届を出さないと火葬ができないのですから、いやでも出さざるを得ません。ご遺体を家に置いておくわけにはいかないですからね。
つまり人の死はガラス張りということです。相続が発生したという事実は必ず税務署に把握されます。
役所関係がこのことを表立って言うことはありませんが、私たちの社会の仕組みの中には「相続税を取るための視点が存在している」ということです。まずこのことを心に留めておいてください。
ある程度の財産がある場合、相続税の税務調査は不可避
税務署が動き出すのは、相続税の申告期限である「被相続人の死亡を知った日の翌日から10ヵ月」を過ぎてからです。
ただ、生前から「この人には財産がありそうだな」と目星をつけた人については、相続発生直後から動き出している可能性はあります。
税務署は一定の所得がある人には、確定申告時に「財産債務調書」という調書の提出を求めています。
この制度は先々相続が発生したとき、相続税を確実に納税させるための制度で、各種所得金額の合計が2000万円を超え、なおかつその年の12月31日において財産の合計金額が3億円以上ある場合の他に、その年の12月31日において、所得金額に関係なく財産の合計金額が10億円以上ある場合に提出が求められるものです。
でも納税者にとってはメリットがありません。自分の預金残高をわざわざ税務署に知らせるなんて気が進まないと考える人も少なくないでしょう。
相続が発生したとき税務署にとっては「ここに財産が隠されていそうだな」とヒントになってしまうのです。
相続税の申告書を見て「この人は本来であれば調書を出さなくてはならない立場の人だった。それなのに生前、提出されていなかったということは、何か隠していることがあるのでは?」と考えるわけですね。
そして税務調査が入り、痛いか痛くないかわかりませんが腹を探られる結果になる可能性が高いです。
該当者は生前に「財産債務調書」を提出しておくのがおすすめ
税務調査というのは納税者にとって気持ちのいいものではありません。
だからもしも後ろめたいことがないのであれば、先に挙げた要件を満たすような所得・財産を持っている人は提出しておくことをおすすめします。
そのときは面倒くさいと感じるかもしれませんが、相続が発生して10ヵ月後、ようやく申告書を提出して一息ついたときに税務調査が入るとなれば、余計面倒な思いをすることになります。
ある程度の財産がある人は相続税の税務調査は免れない…それを前提に、できる手を打っておくほうがいいでしょう。
税務署に「ウソ」や「ごまかし」は通用しない
冒頭でも触れましたが、今や国税庁と全国の税務署がネットワークで結ばれ、何から何までガラス張りになってしまう時代です。
過去の所得税や固定資産税の情報、死亡するまでの収入、所有する不動産など、被相続人に関するあらゆる情報が入る、というのがKSKシステムのうたい文句です。
被相続人が死亡して自治体に死亡届が提出されると、翌月末までに自治体の所在地の所轄税務署に死亡の情報が伝わります。
このことはあまり知られておらず、「どうせ親父が死んだことなんて税務署にはわからないだろう」「贈与してもらった財産ですと言ってごまかせるんじゃないの?」などと考えたりするのですが、一言で言うと「甘い」です。
実は税務署は贈与についてはあまり調べません。なぜかというと相続のときに調べてきっちり納税させようと考えているからです。
その分、相続のときは徹底的にやります。それが納税させる最後のチャンスだからです。ここで取り逃がしたらおしまいですから。
天野 隆
税理士法人レガシィ代表社員税理士。公認会計士、宅地建物取引士、CFP。1951年生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。アーサーアンダーセン会計事務所を経て、1980年から現職。『やってはいけない「実家」の相続』『相続格差』(青春新書)他、103冊の著書がある。
税理士法人レガシィ
1964年創業。相続専門税理士法人として累計相続案件実績件数は28,000件を超える。
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