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身体にいいと勘違いしていませんか?「早寝・長寝・昼寝」という3つの悪習慣【鎌田實×和田秀樹】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年6月20日 11時30分

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(※写真はイメージです/PIXTA)

人間にとって欠かせないのが睡眠。しかし、早寝・長寝・昼寝を「よい習慣」だと勘違いしている人は少なくありません。間違った睡眠を習慣にしてしまうと、不眠症になったり、さらには「うつ病」を引き起こすリスクもあるといいます。鎌田實氏と和田秀樹氏の共著『医者の話を鵜吞みにするな』(ワック)より、正しい睡眠について医師2人の対談を見ていきましょう。

夜中に目覚める人がしてはいけない3つの習慣

鎌田 間違った睡眠習慣が、中途覚醒をもたらすという話がありますよね。

・「早寝」:いつもより早い時間にベッドに入る。 ・「長寝」:眠れないときでも、ベッドでじっと横になっている。 ・「昼寝」:たっぷり昼寝をしてしまう。

そこで、中途覚醒を減らすために、この3つをしないようにする「睡眠制限法」というものがある。これは効果があるんですか?

和田 これはまさに自分が経験していることですね。私は基本的には仕事が終わってからでないとご飯を食べないので、夕食の時間は夜の9時になる。そこでワインを飲んで、10時とか10時半には寝ています。ワインでほろ酔いになって眠れるということですけれど、以前の自分からすると驚くほど早寝なので、それが中途覚醒の原因になっている可能性はあるかと思いますね。

鎌田 早寝ですか、いいことですね。では長寝に関しては?

和田 これもまさにそうです。私は糖尿病を持っていますが、何回も目が覚める前までは、10時半に寝ても大体5時ぐらいに起きて仕事していたのです。食事の時間は遅いけれど、仕事量は変わらないと余裕だったのですが、夜中に何度も目が覚めるようになってくると、10時半に寝ても朝の6時半か7時まで、うだうだとしていますね。

鎌田 とすると、早寝、長寝は、本当はしないほうがいいんだろうか?

和田 そう思うのですが……。ただ、私自身は、「眠い」とか「だるい」のが嫌で。だから基本的に毎日、昼寝をするんですよ。昼寝をしないと、午後の仕事に差し支える。患者さんの話を聞いていても、昼寝してないと眠くなっちゃうんです。

鎌田 眠ければ、短い昼寝をするのがいいということですね。

和田 確かに、「早寝」「長寝」「昼寝」は間違った睡眠の習慣なんです。「早寝」しようと普段は眠らない時間に眠ろうとしても、頭も体も覚醒しているのですから、なかなか深い眠りが得られない。人間の身体は普段ベッドに入る時刻の2時間ほど前から眠る準備が始まって深部体温が下がり始めるのですが、その直前は1日の中でも最も深部体温が高く、眠りにくい時間帯になっているそうなのです。人間の体は、横になりさえすれば機械的に眠れるようにはできていないということですね。

鎌田 そんな場合、すぐに寝付けないからベッドで本を読み始めるという人もいますね。ただ、ベッドにいるときに、眠れないで本を読んだりする時間が習慣づいてしまうとよくないんです。ベッドにいる間は寝ることに集中する。寝たくなったら寝て、寝たくないとか、眠れそうもないなと思ったらもう起きちゃったほうがいい。

眠れずに悶々とする時間で不眠が悪化

和田 「長寝」では「ベッドに横になっているだけでも休まる」と信じられていますが、それは間違いだそうですね。

鎌田 眠れずに悶々とする時間が長いほど不眠は悪化するそうなんですよ。眠ろうとする“あがき”が、さらなる不眠を招くのだそうです。年をとると必要な睡眠時間は短くなります。若いころよりもエネルギー消費量が少なくなって基礎代謝が落ちるため、短い睡眠で間に合うようになっていくんですね。

和田 実際に眠れる時間より長くベッドにいると、眠れない時間は増えていくだけ。「眠れない」と、かえって不満が増すこともありますね。

鎌田 そして「長すぎる昼寝」も問題。「1時間の昼寝は夜の3時間分の眠気を奪う」という言葉もあるそうです。短い仮眠は、その後の作業で眠気や疲れを感じにくくなるなどいい面もありますが、30分以上眠ると徐波睡眠(脳を休める最も深いノンレム睡眠)に入りやすく、そうなると夜の徐波睡眠が大幅に減ってメジャースリープ(夜のまとまった睡眠)の質が悪くなってしまうというのです。

和田 先ほど睡眠薬の話をしましたが、鎌田さんがほぼ薬をやめられた要因は?

鎌田 朝、必ず太陽に当たって外で軽い運動をするという習慣をつけたこと。昼寝をしたいときにはコーヒーを飲んで、20分以内に起きる。iPhoneで目覚ましをかけ、30分以上、寝ないようにしています。そこでさらに寝ちゃうと夜、今度は寝つきが悪くなるから。

和田 なるほど、長く寝ないことが肝心。

鎌田 いまは定年退職者ですから、僕は。だから昼寝をする場合でも20分。それから夜、お風呂に入って体を温めた後、軽いストレッチで血液の循環をよくしておくことを心掛けています。また、深部体温が下がっていくときに寝るようにしているので寝つきがよくなっていく。そのためにお風呂か、軽い運動をするか、カプサイシンを取ることで深部体温を上げる。夕食にカクテキやキムチみたいなちょっと辛いものを用意しておきます。

和田 よく考えておられますね。

鎌田 僕は朝食ではなく、よく夕食に納豆を食べるんです。ご飯が欲しいときはご飯を用意しますが、おかずだけでいいやという場合は、納豆にキムチを入れたりして食べる。そんなふうにしてちょっと体温を一回、上げて、下げるっていうことを心掛けたら、割合、よく眠れる習慣ができて、薬に頼らなくなることができました。

不眠症は「うつ病」の引き金にもなる

和田 不眠症はうつの引き金になりますね。老人医療の現場にいると、高齢者になるにつれて「うつ」で悩む人が増えてくることがわかります。疲れやすい、不眠症、頭痛や腰痛などを訴える人が多くなってくる。うつはそれだけでも深刻な問題ですが、認知症にも深く関わっているようです。

鎌田 うつは脳内の神経伝達物質セロトニン不足と関係があるそうですが、セロトニンは感情や気分のコントロール、精神の安定に深く関わっているので、これが減少すると、イライラや不安、恐怖などの心の不調がもたらされるのでしょう。特に高齢になるとセロトニンが不足しがちになるので、不安感が大きくなり、うつになりやすいようですね。

和田 私も長年老年精神医学の仕事をしていますが、不安になる心理に対して、きちんとしたカウンセリング治療はできなくても、短い時間ながら気持ちを組んであげるように診察し、脳内のセロトニンを増やす薬を飲んでもらうだけで、うつ病がよくなることは多いですね。

年をとると、死別や仲間との別れなど多くの喪失体験を経験しますし、身体機能や脳の機能も衰え、それらを自覚することで落ち込むこともあるでしょう。でもそんな場合にセロトニンを薬で補充してあげると、うつの症状が改善する例が多いですね。

鎌田 高齢者のうつ病の場合、頭痛や肩こりなど身体的なつらさに加え、病気や認知症への心配、経済的な問題などで、大きな不安を感じる人が少なくないですものね。うつ病の薬が効くと、こういった症状がかなり改善しますね。

和田 疲れが取れないとか、夜中に目を覚ます、食欲が落ちる、腰痛が治らないなどの訴えは、年のせいと一概に片付けられることが多いのですが、もしかしたらセロトニン不足やうつ病のせいかもしれないのです。

鎌田 なかなか治らない場合は、精神科や心療内科で相談をしてうつ病の薬を試してみる価値があると思いますね。

和田 イライラして仕方がない、急に切れるなどの症状は、うつ病の薬を試す価値ある症状です。安定剤などで抑えようとすると、頭がぼんやりしたり、記憶力が悪くなったり、元気がなくなったりするので、それよりは脳内のセロトニンを足すような薬の方が、高齢者の元気を保つために有効ですね。

鎌田 うつ病の有名な症状に「日内変動」というものがありますよね。午前中は調子が悪いが午後になると元気になるというもの。睡眠導入剤の副作用でも起こるので、そんな薬を常用している場合は薬を減らすとか。

和田 でも、長年、高齢者のうつ病を見ているとその逆のパターンが珍しくないのです。午前中は特に比較的調子がよいのに、夕方になると不安感が高まったり、イライラしたり落ち込んだりする。これはおそらく、高齢者の場合は脳が疲れやすいので、夕方になると症状が悪くなりやすいのではないかと思います。これも薬が効くことが多いのですが、昼寝などで脳を休ませるのも有効なようです。

鎌田 實 医師

和田 秀樹 精神科医  

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