保険営業マン「月の負担が半分になりますよ」…年収750万円の59歳・定年直前サラリーマン“大喜び”で保険を見直し→大後悔のワケ【FPの助言】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年7月2日 11時15分
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(※写真はイメージです/PIXTA)
毎月の支出を抑えるためには、固定費の削減が欠かせません。そして、固定費削減に効果的なのが「保険の見直し」です。ただ、保険を見直した結果、固定費を削減できたにもかかわらず後悔するケースも……いったいなぜでしょうか。FP事務所ストラット代表の伊豫田誠氏が、具体的な事例をもとに、保険の見直しで絶対にやってはいけない注意点と見直しのポイントを解説します。
“口車に乗せられた”定年直前サラリーマンの大後悔
59歳のサラリーマンAさんは現在、3歳年下の妻と2人で暮らしています。このほか19歳の娘がいますが、大学進学を機に1人暮らしを始め、現在は別居しています。
Aさんの現在の収支は、下記のとおりです。
<収入>
年収750万円
<支出>
・生活費……月々約20万円(年間240万円)
・娘の学費や仕送り……年間約210万円
・住宅ローン……月々約10万円(年間120万円)
・保険料……月々約3万円(年間36万円)
■年間収支……年収750万円-606万円=144万円
Aさんは定年後も再雇用で働く予定ですが、年収は現在の750万円から400万円と大幅に減少してしまいます。現在は黒字をキープできていますが、支出を見直さないと老後の生活が不安だと考えるようになりました。
そんなある日のこと、Aさんは会社の同僚から「月々の保険料を見直したら支出が減った」という話を耳にします。
「それはいいな」と思ったAさんは、早速付き合いのある保険営業マンのBさんに相談することにしました。
月の保険料がいまの半分に減りますよ…営業マンの“甘いワナ”
Aさんが早速相談したところ、Bさんは「以前加入したまま放置している保険を解約して、新しいものに入り直しましょう。保険を見直すことで、毎月の負担がいまの半分になりますよ」といいます。
「そんなに減るの!?」と驚いたAさんは、保険の見直しを即決。Bさんの仕事も早く、大満足でした。しかし……
その後、解約した保険がいわゆる「お宝保険」であったことが発覚。Aさんは「カモられた!」と大後悔することになったのです。
Aさんの「見直し前・見直し後」の保険内容
Aさんの見直し前の保険内容
Aさんが30年前に加入した保険の内容は、下記のとおりです。
種類:終身保険
保険料:月々3万円
<保障内容>
死亡保障:5,000万円
医療保障:1日につき入院給付金1万円、手術給付金20万円、通院給付金5,000円
災害特約:災害による死亡時にはさらに1,000万円の保障
予定利率:6%
解約返戻金:解約時点で約500万円
Aさんが30年前に加入したこの保険は、俗に“お宝保険”といわれるものです。現在ではこのような内容のものはなく、非常に価値の高い保険といえます。
一方で、Bさんの提案に従って新しく加入した保険の内容は、下記のとおりです。
種類:定期保険
保険料:月々1万5,000円(前と比べ1万5,000円の節約)
<保障内容>
死亡保障:2,000万円
医療保障:1日につき入院給付金5,000円、手術給付金10万円、通院給付金なし
災害特約:災害による死亡時にはさらに500万円の保障
解約返戻金:なし
Aさんが保険の見直しを決断したワケ
FPがAさんに話を聞いたところ、定年後の収入減少を見越して、月々の支出を少しでも減らしたいと考えていたAさんは、月々の保険料が1万5,000円も削減できることに魅力を感じたそうです。
また、BさんはAさんへ説明する際に、「月々の負担は非常に軽くなるのに、保障内容は少し減るだけです」と、月々の支払が大幅に減るという点を強調していたようです。そのため、Aさんは内容を深く理解する前に、単純な比較で切り替えがいい選択だと判断してしまいました。
さらに、同僚が保険の見直しで支出を減らしたという話に影響され、自分も同じように見直しを行うことで家計を楽にできると安易に考えてしまったようです。
しかし実際には、たしかに月々支払う保険料は減ったものの、保障内容が大幅に削減されてしまいました。特に、医療保障が下がったことが懸念されます。
Aさんの年齢を考えると、今後入院や手術の必要性が高まることが予想されます。そのため、医療保障が減ることで実際にお金が必要になるときに困るかもしれません。
ちょっと待って!それ、お宝かも…“お宝保険”の特徴
「お宝保険」とは、契約し続けているのであれば現在では非常に有利な条件の保険のことをいいます。お宝保険には、主に下記のような特徴があります。
高い予定利率
1980年代や1990年代初頭に契約された保険は、5%以上の高い予定利率が保証されている商品があります。これにより、現在の低金利時代には考えられないような高い利回りを得ることができます。
充実した保障内容
古い保険は、現在の保険商品と比べて非常に手厚い保障内容を持つことがあります。たとえば、終身保険でありながら低額の保険料で高額の死亡保険金が受け取れるなどです。
低い保険料
昔の保険は、現在のインフレや医療費の高騰を反映していないため、非常に低い保険料で加入できていることがあります。
保険解約前の「チェックポイント」
そこで、保険を解約する前に、以下の4つのポイントをチェックすることが重要です。
- 予定利率の確認
- 保障内容の確認
- 解約返戻金の確認
- 他の保険と比較
まず、契約時の予定利率が現在の金利よりも高い場合、それが将来的に非常に有利である可能性があります。
また、Aさんの事例のように、月々の負担は減っても保障内容まで減ってしまう場合、デメリットのほうがお大きいといえます。したがって、現在の保障内容が新しい保険と比べてどれだけ充実しているかを確認するようにしましょう。
また、解約した際に返ってくるお金(解約返戻金)がどれくらいあるのかもチェックしたいところです。たとえば、Aさんが以前入っていた保険では、解約返戻金が500万円ありました。これを残しておけばさらに利息が増えるということになります。
最後に、同じ保険内容で新しく契約した場合の保険料と比較して、どちらが有利かを確認しましょう。新しい保険で以前と同じ保障額を得るためには、月々3万円以上の保険料が必要でした。
しかし、保険営業マンのBさんも決して悪意があったわけではなく、Aさんの支出を減らすための提案をしたに過ぎません。しかしBさんは“お宝保険”の価値について知識が不足していた可能性があります。そのため、保険の見直しや解約については、第三者の専門家に相談することも検討するとよいでしょう。
固定費削減の方法としては有効だが…“安易な見直し”は要注意
大後悔したAさんは、再度保険について詳しいFPに相談。今後の生活設計を見直したうえで、現在の収入と支出に合わせた適切な保険を考えることにしました。
さらにFPは、Aさんが解約してしまったお宝保険に代わる新たな資産運用の方法のアドバイスも行いました。たとえば、新NISAや個人年金保険、あるいは現物不動産への投資などは、リスクを抑えつつ安定した収益を得ることができます。
月々の固定費を削減する方法として、たしかに「保険の見直し」は有効な手段です。しかし、安易な解約は避けましょう。今回の“お宝保険”のように、解約することで大きな損失を被る可能性があるため、慎重に検討する必要があります。
特に定年前後の人にとって「保険の解約」は大きな決断です。将来の生活や医療費を見据え、第三者の専門家の助言を受けながら、自分にとって最適な選択を探っていきましょう。
伊豫田 誠 FP事務所ストラット 代表/不動産投資専門ファイナンシャルプランナー
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