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米国のTikTok禁止法

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年6月23日 5時0分

米国のTikTok禁止法

(写真はイメージです/PIXTA)

2024年4月26日、米国で「外国敵対勢力に支配されたアプリより米国人を保護する法律」が成立した。この法律は外国敵対的勢力(foreign adversary)によって運営(支配)されるSNSを禁止する法律であるが、特にTikTokについては条文で明記する形で、外国敵対勢力に運営される限りにおいては、米国内でのサービス提供を禁止する内容となっている。TikTokは270日以内(大統領の認定により90日間延長が可能)に外国敵対勢力とされた現在のByteDanceなどの企業から外国敵対勢力と関係のない第三者へ売却され、ByteDanceなどの企業との提携などもすべて解消する必要がある。また、TikTokが禁止された場合に、ユーザーの利用可能なアカウントデータ(写真や動画を含む)をユーザーに提供することを求めている。本法の成立後、TikTokは法律の違憲性を主張して、米国を相手に訴訟を開始している。ニッセイ基礎研究所の松澤登氏が「米国のTikTok禁止法」について解説する。

1―はじめに

2024年4月26日、米国(合衆国)で「外国敵対勢力に支配されたアプリより米国人を保護する法律」(以下、本法という)が成立した*1。いかにも米国らしいのは「外国敵対勢力(foreign adversary)」という用語を法律の中に書き込んでしまう点である。本稿では、本法がどのような内容なのかを解説したい。

まず、前提として、本法の立法趣旨として「外国敵対勢力の運営するアプリによってもたらされる合衆国の国家的安全を確保するための法律である。このようなアプリはバイトダンスまたはバイトダンスの傘下にある企業によって構築・提供されたTikTokおよびTikTokを受け継いだアプリ、サービスその他のアプリが含まれる」とする(下院立法時の前文)。すなわち、法律の建付けとしては外国敵対勢力のSNSを全面的に禁止する法律ではあるが、特にTikTokを名指しし、TikTokが中国資本下にある以上は米国での活動を許さず、活動継続のためには外国敵対勢力以外によって運営されることを求めている。

*1:Public Law No: 118-50 (04/24/2024)  https://www.congress.gov/bill/118th-congress/house-bill/815 参照

2―敵対勢力が管理するアプリケーションの禁止(2条)

1|禁止されるアプリケーション

本法(原文ではdivision、章、節などと訳されるがここでは本法とした)により、外国敵対勢力が管理するアプリケーション(例:TikTok)の配布、保守、更新をすること、またはインターネットホスティングサービスで提供することが禁止される。ただし、この禁止は、大統領が定める適格売却を実施した対象アプリケーションには適用されない。

本法において、外国敵対勢力が管理するアプリケーションとは、(1)ByteDance, Ltd.、TikTok、それらの子会社、後継者、それらが管理する関連事業体、または外国敵対勢力が管理する事業体、または(2)敵対国が管理し、国家安全保障に重大な脅威をもたらすと大統領が判断したソーシャルメディア企業が直接または間接的に運営するアプリケーションを指す(ここでいうソーシャルメディア企業には、主に製品レビュー、ビジネスレビュー、旅行情報やレビューの投稿に使用されるウェブサイトやアプリケーションを含まない)。

本法において、敵対国には北朝鮮、中国、ロシア、イランを含む。

2|適格売却とデータ移管

適格売却とは、大統領が(省庁間のプロセスを通じて)決定した、以下のいずれをも満たす取引のことである。

・適格売却の結果、当該外国敵対者が管理するアプリケーションが外国敵対勢力によって管理されなくなること、かつ

・当該アプリケーションの米国での運用と、外国敵対勢力によって支配されている、適格売却以前の関連事業体との間の運用関係の確立または維持(コンテンツ推奨アルゴリズムの運用またはデータ共有契約に関する協力を含む)を排除すること。

この禁止は、本法の施行日から270日後に適用される。本法は、大統領が議会に対し、以下の3点を証明した場合、対象アプリケーションに対し、90日を上限とする1回限りの延長を認める権限を与える。

(1) 対象アプリケーションの適格売却を実行する道筋が特定されていること、かつ、

(2) 対象アプリケーションの適格売却の実行に向けた重要な進展の証拠が示されていること、かつ、

(3) 延長期間中に適格売却の実行を可能にする関連する適切な法的合意が整っていること

さらに本法では、対象外国敵対勢力の管理するアプリケーションに対し、禁止の効力を発生する前に、ユーザーの要求に応じて、利用可能なすべてのアカウントデータ(投稿、写真、動画を含む)をユーザーに提供することを求めている。アカウントデータは機械可読形式(machine-readable format)で提供されなければならない。

3|執行権限

本法は、司法省に違反の調査とその本法の規定の執行について権限を付与する。本法に違反した事業者は、違反に対して民事罰の対象となる。対象アプリケーションの配布、維持、更新、またはインターネットホスティングサービスにおいての提供の禁止に違反した事業体には、違反の結果としてアプリケーションにアクセス、維持、または更新した米国ユーザーの数に最高額5,000ドルを乗じた罰金が課される。

また、要求に応じてアカウントデータをユーザーに提供するという要件に違反した事業体には、最高500ドルに、違反によって影響を受けた米国ユーザーの数を乗じた額の罰金が課される。

3―裁判管轄権(3条)

本法に対するいずれの異議申し立てについても、コロンビア特別区連邦控訴裁判所に専属管轄権が帰属する。本法に対する異議は、同部門の制定日から165日以内に提起されなければならない。本法に基づく措置、認定、決定に対する異議は、その措置、認定、決定から90日以内に提起されなければならない。

4―おわりに代えて

本法の成立を受けて2024年5月7日にTikTokはコロンビア特別区連邦控訴裁判所において、米国司法長官を相手取って、本法は違憲であり、したがって無効であることを提訴した。より具体的には、TikTokは本法が アメリカ合衆国憲法修正第1条の表現の自由に反すること等を理由として、(1)本法が違憲であることの宣言、(2)司法長官が本法を執行することの停止命令を出すこと等を主張している。

前回の基礎研レターではEUでTikTokを規制する動きについて解説した。EUではその依存性について、特に未成年に見逃しがたい悪影響を及ぼすとして、TikTokをillegal contentsを提供するプラットフォームとして規制するかどうかの検討に入った。米国のいくつかの州も依存性を問題視して、禁止の立法を行う動きがある。

これに対し、米国(合衆国)ではTikTokが外国敵対勢力によって運営されていることをもって禁止することを決めた。これにはたとえば、TikTokを利用した政治工作や思想操作などの悪影響を懸念しているものと考えられる。

いずれにせよ、舞台は裁判所に移行した。裁判所がどのような判断を下すか、続報が待たれる。

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