1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. ライフ
  4. ライフ総合

退職金2,000万円でほくほく、お高いワインを小脇にいそいそ帰宅の60歳会社員。幸せ間違いナシの老後のはずが…馴染みの銀行の勧めで疑いなく始めた〈シニア資産運用〉で大転落「震えが止まらない」【FPが解説】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年6月28日 11時45分

退職金2,000万円でほくほく、お高いワインを小脇にいそいそ帰宅の60歳会社員。幸せ間違いナシの老後のはずが…馴染みの銀行の勧めで疑いなく始めた〈シニア資産運用〉で大転落「震えが止まらない」【FPが解説】

(※写真はイメージです/PIXTA)

長年の勤務に対して支払われる退職金。少しでも増やして老後の生活を盤石なものにしたいと運用を考える人も多いでしょう。しかし、くれぐれも慎重に行いましょう。失敗している人は決して少なくありません。本記事では、Kさんの事例とともに、シニア世代から始める投資の注意点についてFP dream代表FPの藤原洋子氏が解説します。

定年退職を迎えた元部長のもとへ届いた「一通の封書」

Kさん(60歳)は、大学を卒業後に新卒で入社した会社を38年間勤め、60歳の退職の日を迎えました。長いあいだにはいろいろな人にお世話になり、たくさんの経験を積むことができ、昇進は比較的早く、50代は事業部長として部下をまとめる立場に。57歳で役職をはずれましたが、自分の役割を務め、後輩の社員からは信頼される存在でした。

退職の日には、会社の仲間から花束や普段飲み用ではない、いいワインをもらい、感慨深い1日となりました。定年退職といっても翌日からは再雇用で勤務するので、会社から出るわけではないのですが、部署が変わるので、なじみ深い人達と会う機会は少なくなるでしょう。嬉しくもあり寂しくもあり、新しい仕事に向かう緊張感などが入り混じっていたと、その日を懐かしく思い出すことがあるそうです。

自宅へ戻ると、妻(55歳、パート勤務)と長女(25歳、会社員)、次女(22歳、会社員)がホームパーティの準備をして迎えてくれました。長女も次女もすでに自立し、社会人として働いているなか、わざわざ帰ってきてくれて、妻の手の込んだ料理を食べ、贈られたワインを飲みながらKさんは「俺はなんて幸せ者なんだろう」と喜びに浸っていました。

退職の日からしばらくたったある日、給与や退職金が振り込まれる銀行から封書が届きました。Kさんがなんだろうと開封してみると、なかには「退職金運用セミナーのお知らせ」と書いた案内が入っていました。「退職金運用セミナーか。退職金の運用については考えないといけないと思っていたところだ。“ご夫婦で”とかいてあるし、この機会に2人で参加してみるのも悪くないな」Kさんは、“資産運用セミナー”に類するものはいままで1度も参加したことはありません。投資に興味はありましたが、自分から口座を開設するなど、具体的な行動に至ったことはなかったのです。

しかし今回の案内は、長いあいだ付き合いのある銀行からのものだったこともあり、Kさんは軽い気持ちでセミナー参加の申し込みをしたのでした。

銀行で勧められた運用

銀行の「退職金運用セミナー」では、投資をする際には分散投資が重要だということや、その銀行で実施されている「退職金専用定期預金」「退職者専用プラン」の説明が行われました。セミナーの概要は以下のとおりです。

≫分散投資

投資を行う資産には、株式、債券、不動産、国内、海外など複数の種類がある。1つの資産だけに集中して投資するより、複数の資産に分散して投資した方が価格の変動を抑えやすく、安定した運用が期待できる。

≫退職金専用定期預金

・退職金の受取りから1年以内に預け入れ、1回だけ利用できる ・給与振込・年金受取の取引がある場合は、金利の上乗せがある ・他の金融機関で受け取った退職金でも、当行の口座に預け替えれば対象となる ・預入金額:200万円以上、退職金受取額を上限とする ・定期預金の金利:1.00% ・期間:3ヵ月

≫退職者専用プラン

・退職金の受取りから1年以内に預け入れ、1回だけ利用できる ・対象の運用商品と定期預金を同時に申し込むと、定期預金が特別金利で預け入れられる ・対象の運用商品:投資信託、ファンドラップ ・預入金額:200万円以上、退職金受取額を上限とする ・定期預金の金利:7.00% ・期間:3ヵ月

Kさんは、再雇用による毎月の収入はありましたが、事業部長として勤務していたときの1,300万円の年収と比べると、4割ほどになっていました。退職金のほかにも3,000万円の貯蓄がありましたが、これからの収入に少し不安もありました。

銀行員「私の母も買っています」

Kさんは、担当者が「これは、私の母も購入しているものなんです」と勧める、高配当の株式に投資する投資信託に魅力があると感じ、金利のより高い退職者専用プランに、退職金の全額2,000万円を預けることに決めました。

投資信託の運用成績は、3ヵ月間は順調でした。気をよくしたKさんは、3ヵ月が過ぎ定期預金の満期が来たときに、そのお金でもう1種類、少しリスクが高くリターンも大きく見込める投資信託を購入することにしました。それから半年ほどたったころ、銀行からまた封書が届きます。

大事な退職金が値下がり…

銀行からの封書には「購入した投資信託のことで、なにか不明点があればご相談ください」とありました。

Kさんが妻と一緒に投資信託の運用報告書を確認すると、最初は順調だった2つの投資信託の基準価格が徐々に下がっています。妻は慌てふためき「すぐに売却しましょう!」と言いましたが、Kさんは、「もうしばらく様子を見る」とそのまま保有し続けていました。しかし、震えながら下がり続ける様子を見届けることに我慢ならなくなり、その後すべて売却したそうです。Kさんは崖から突き落とされたような気持ちとなりました。

投資を始める際に気をつけたいこと

60代で「投資を始めよう」という人は少なくありません。インフレや増税などに負けないように、これまで蓄えた資産や退職金などのまとまったお金を上手く増やしたいという思いからでしょう。これまで投資を行ってこなかった人にとって、どのように始めたらよいか迷うことから、人の話を鵜呑みにして失敗する事例をよく目にします。

「わからない」といえないシニア

長年会社に勤務してきた60代の方は、「よくわからないが、わからないといったら嗤われるかもしれない」と心配し、素直に説明の不明点を質問できない人がいます。当然のことですが、説明を聞いてわからない部分があれば、「わからない」とはっきり伝えましょう。

また、一度に大きな金額をまとめて投資しないようにしましょう。金融商品は、価格の高いときも低いときもあるので、投資する資産を複数にするのと同様に、投資するタイミングも分散させると投資のリスクを抑えやすいです。

2024年1月からリニューアルされて注目を集めるNISA。通常、投資から得た利益には20.315%の税金がかかりますが、NISA口座を開設して購入した金融商品によって得た利益は非課税になるという制度です。制度を活用して積み立て投資を行うと、投資する資金や時期を分散させることができます。

しかし一方で「みんなやっているから」という理由で大して調べずに始めると痛い目に遭う可能性もあるのです。投資は、預金と異なり元本の保証はありません。損失が出る可能性があることを心に留めておき、慎重に取り組むべきでしょう。

退職金を受け取ったら

60歳を過ぎた方も、それからのいろいろな人生の過ごし方があります。家のリフォーム費用、車の買い替え費用、子どもの結婚・住宅購入資金の援助、孫の教育費の援助、旅行費用、病気・ケガ・介護の費用、などご自身やご家族の暮らし方によって、必要なお金は異なります。退職金を受け取ったら、これからの生活にどのくらいのお金が必要になるか、具体的に書き出してみるなど、まずは収支をしっかりと把握しましょう。

投資を始めたことで、必要な資金に損失がおよぶようでは本末転倒といえます。60歳から投資を始める方であっても、すぐに使う必要のない余裕資金で行うとよいのではないかと思います。  

参考

※ 金融庁 資産形成の基本 分散投資

https://www.fsa.go.jp/policy/nisa2/invest/

藤原 洋子

FP dream

代表FP

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください