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白馬の王子様も寝起きの息はくさい…ディズニー映画がまき散らす「運命の人信仰」の代償【ハーバード・Googleの行動科学研究者が解説】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年7月6日 8時15分

白馬の王子様も寝起きの息はくさい…ディズニー映画がまき散らす「運命の人信仰」の代償【ハーバード・Googleの行動科学研究者が解説】

(※写真はイメージです/PIXTA)

「運命の人はどこかにいるはず。まだ出会っていないだけ」このような考えをもつあなたはロマンス志向型です。ロマンス志向型は将来のパートナー像に確固たる自信をもっていますが、その自信ゆえに幸せのチャンスを逃す人も……。あなたもそろそろおとぎの国から抜け出して、新たな物語をつくり始めませんか? 本記事は、ハーバード大学とGoogleで行動科学を研究し、恋愛コーチ兼マッチングアプリ研究ディレクターとして活躍するローガン・ウリー氏の著書『史上最も恋愛が難しい時代に 理想のパートナーと出会う方法』(河出書房新社)より一部を抜粋・再編集し、ロマン主義的な理想に立ち向かう方法について解説します。

ロマン主義的な理想に立ち向かう方法

映画やテレビ番組がロマン主義の甘ったるい理想を固定化してきました。それらが発する愛や長期的な関係についてのメッセージは、間違っているだけでなく有害でもあります。ここでは諸悪の根源をいくつか見てみましょう。

1.ディズニー映画の「白馬の王子様」幻想

■ディズニーがまき散らすソウルメイト信仰

「運命の人」がどこかにいる。わたしの理想通りの相手が。

ディズニー映画は、誰もがいつかは理想の王子様かお姫様と出会い、恋に落ちると言っています。このような思考傾向に苦しむのはストレートの女性だけではありません。私はこれまで、ジェンダーや性的指向の別なく、あらゆるタイプのロマンス志向型に出会ってきました

※ロマンス志向型

運命の人と出会い、末永く幸せに暮らす、というおとぎ話のような恋愛を求めるタイプです。恋に恋する人。自分が独り身なのは、まだ運命の相手に出会えていないからだと思っています。

モットーは「恋愛は起こるべくして起こるもの」。

誰もがそろいもそろって、完璧なパートナー ――里親制度に協力する建築家の男性や、博士号をもっているモデルの女性―― が現れるのを待っているのです。その相手は、自分が求める資質をすべて兼ねそなえており、悪いところは一つもないはずだ、と。

ディズニーのアニメ映画の中では、登場人物は互いのことをろくに知らずに恋に落ちます。『リトル・マーメイド』でエリック王子の船が転覆したとき、王子がアリエルについて知っていたといたことといえば、彼を浜辺まで安全に運ぶだけの腕力をそなえたかわいらしい赤毛の女の子、ということだけ。

王子はそこに恋をしたのでしょうか? 『シンデレラ』でヒロインが王子に夢中になった理由は、ダンスがうまく、落とし物を正しい持ち主に返そうと努力したから? 少しばかり浅はかではないでしょうか。

■解決型マインドセットの考え方

白馬の王子様でも寝起きの息はくさい。完璧な人などいません。あなたもそうです。心当たりがありませんか?

では、誰かをがっかりさせたときのこと思い出してみてください(自分の欠点が思いつかないのであれば、兄弟姉妹の誰かに電話で訊いてみましょう。喜んで教えてくれるでしょう)。いまこそ、完璧さという呪縛を手放すときです。

あなたも将来の妻や夫の理想像をもっているかもしれません。向かいに住む男の子や大好きな映画スターへの初恋がその原型でしょうか。けれども、その理想の相手の外見は、あなたの期待通りではない可能性があることを受け入れましょう。

その人は、あなたの理想より背が低かったり、あるいは高かったり、太っていたり痩せていたり、肌の色や体毛が濃かったり薄かったりするのです。運命の人の外見について視野を狭めていると、目の前の可能性から目を背けてしまいます。あなたが完璧でないのに、どうして相手に完璧さを望むのでしょう? ダブルスタンダードはいけません。あなたは映画スターではないのですから。

2.ディズニー映画の「末永く幸せに暮らしました」幻想

■ディズニーがまき散らすソウルメイト信仰

恋愛で最大の難関は誰かに出会うこと。それさえ乗り越えればあとは楽勝。

ディズニー映画では、求愛から争い、二人の邪魔をする魔女まで、カップルが結婚にいたるまでの出来事がすべて描かれています。しかしひとたび敵に打ち勝って二人が結ばれると、カップルとしての試練はそこでおしまい。あとは「末永く幸せに暮らしました」。

本当に? まさか。私はこの、恋愛で一番難しいのは出会いであるという誤った考えを、「“末永く幸に暮らしました”の誤謬」と呼んでいます。

■解決型マインドセットの考え方

恋愛は楽になることなどない。どれだけ健全で価値のある結婚生活でも、努力を要する。

相手を見つけることは簡単ではありませんが、実際の試練はその後にやってくることが多いものです。本当に大変なのは、信頼関係を築き、維持するために日々努力を惜しまないこと。新婚期間もとうに過ぎ、二人の子どもを育てあげて30年連れ添ったパートナーを、一日の終わりに愛おしく思うこと。

あなたの人生にふりかかる実際的、経済的、感情的、精神的な危機の中で、相手を愛する理由を思い出すことです。

3.ラブコメの「すてきな出会い」幻想

■ラブコメがまき散らすソウルメイト信仰

心配しなくても愛はあちらからやってくる。それも、友達に話したいくらいすてきな出会いになるはず。

ラブコメは、ディズニーのおとぎ話の大人版です。自分で映画のチケットを買うことがでる年齢で、不器用な英国人男性に惹かれる人向けのおとぎ話。誰もが、ラブコメは現実には起こらないことを知っています。それでも、ひそかに人類の集合的無意識にすり込まれているのです。

とりわけ「すてきな出会い」への期待は高いもの。ラブコメでは、男性主人公と女性主人公が初めて出会う、「すてきな出会い」の場面があります。

たとえば二人の登場人物がそれぞれ、ファーマーズマーケットに出かけたとしましょう。現実でもあり得そうなシチュエーションです。あなたがおいしそうなトマトに手を伸ばしたちょうどそのとき、隣のハンサムな青年も同じトマトに手を伸ばす。目が合い、胸が高鳴る。

彼は、「祖母のブルスケッタにはこのトマトが欠かせないんだ」と(イタリア語なまりの英語で)説明する。あなたは彼にトマトをゆずる。彼はお礼にカプチーノをおごらせて、と誘い、あなたはそれに応じる。そして11ヶ月後、大げんかののち、JFK空港で保安係に両腕を押さえられた彼が、韓国の広告代理店で新たな職に就こうとするあなたに、「行かないでくれ」と懇願する。究極の愛情表明でクライマックスを迎えるのです。

ラブコメは、愛はあちらからやってくるもので、自分から探すものではない、という考えを助長します。ひとめぼれは現実に起こり得るので、すべきことは、日々を過ごすだけ(そしてファーマーズマーケットをうろついて大量のトマトを消費するだけ)。

そうすると、いつか未来の花嫁・花婿がどこからともなく現れるはずだ、と。たしかに、パーティーやイベント、あるいは抗議集会など、日常には出会いがあふれていますが、この考えが問題なのは、自分の恋愛に過度に受け身になることを許す点です。

■解決型マインドセットの考え方

愛には努力が必要 ――見つけるためにも、維持するためにも。ファーマーズマーケットで待っているだけでは不十分です。誰かを見つけるために努力する必要があります。恋の魔法は、映画のような偶然の出会いがなくても存在します。見知らぬ二人が出会い、人生をつくりあげることこそ、魔法なのです。どこで、どのように出会うかは重要ではありません。

4.ソーシャルメディア幻想

■ソーシャルメディアがまき散らすソウルメイト信仰

恋愛とは、がんばらなくても手に入るセクシーな愛のフェスタ(映える照明のもとで)。少なくとも、ディズニー映画やラブコメは虚構であることが明らかです。それに引き換えソーシャルメディアは、まるで現実の世界かのように見せかけるぶん、たちが悪いと言えます。

ソーシャルメディアでは、夕焼けに彩られたロマンチックな散歩から、レストランのように盛り付けられた手料理越しにキスする二人の写真まで、よりすぐりの理想の恋愛像が流れてきます。それに比べて自分の恋愛は……と比較して、悲観するのです。

■解決型マインドセットの考え方

まずもって、インスタグラムで目にするものは信じないこと。どの画像も、メッセージを伝えるために不要な部分が切り取られ、ぼかされ、ゆがめられているのです。恋愛について言うと、ソーシャルメディア上の画像は、過剰なほどフィルターがかけられた一部にすぎません。

泣いている写真や鼻をかんでいる写真は誰も投稿しないように、彼女との痴話げんかや、彼女と付き合い続けるか思い悩む様子を投稿したりはしません。ソーシャルメディアは、このうえなく幸せで情熱的かつ写真映えする恋愛を、誰もが簡単に手に入れているように見せます。それを見ると、恋愛への期待値が天に届くほど高く上昇してしまいます。

恋愛関係にはいいときも悪いときもあります。もしいまの恋愛に苦労しているのであれば、それはいいサインです。結婚生活の大半は、おむつを取り替えたり、洗濯をしたり、お皿を洗ったり、といった日常生活で、それらの取るに足りない出来事はソーシャルメディアにはめったに投稿されません。それでも、そういった日常のささいな瞬間の中にこそ愛が生まれます。愛とは、フィルター処理された夕焼け写真とはかけ離れたものなのです。

ローガン・ウリー

恋愛コーチ兼マッチングアプリ研究ディレクター

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