「乙丸や百舌彦の“何か”がまひろや道長に残っているかもしれない」“名もなき人”を演じて思うこと【矢部太郎×本多力】<br />
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年6月23日 21時15分
![「乙丸や百舌彦の“何か”がまひろや道長に残っているかもしれない」“名もなき人”を演じて思うこと【矢部太郎×本多力】<br />](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/goldonline/goldonline_61421_0-small.jpg)
NHK提供
俳優の吉高由里子さんが主演する大河ドラマ『光る君へ』(NHK総合・午後8時)で、まひろ(吉高さん)の従者・乙丸を演じる矢部太郎さんと藤原道長(柄本佑さん)の従者・百舌彦を演じる本多力さん。まひろと道長の従者として、2人を最も近い場所から見守り、支える存在と言っても過言ではありません。SNSでも「おともず」として人気の“乙丸”矢部さんと“百舌彦”本多さんにお話を伺いました。前後編でお届けします。
矢部「一生ここで勤めるんだ、みたいな気持ちはあるんじゃないかな」
――放送も折り返し地点に入り、それぞれ乙丸と百舌彦になって長いと思うのですが、演じられて気付いた部分や思うことってありますか? 矢部太郎さん(以下、矢部):乙丸は、かなりいい年だと思うんですよね。だから、一生ここで勤めるんだ、みたいな気持ちはあるんじゃないかな。
もうこの年で転職というのはないかな、みたいな。人生がまひろさんや為時さんやこの家の人とともにあるなあという感じでしょうか。
本多力さん(以下、本多):乙丸は毎回出ているのですが、僕は初めの10回ぐらいまでは大体出演していたけれど、今は出ていない時期もあるので、「もしかしてこのままいなくなったらどうしよう?」のような、そんな不安が回を重ねるごとに増えてきました。「いつ死ぬんやろう?」みたいな。
――まだ大丈夫ですか?
本多:まだ大丈夫だとは思っているんですけれど、その「まだ大丈夫かな?」と待っている時間が一番……ハアハア……みたいな(笑)。(台本を読んで)「よかった!まだ生きてる!」みたいな。
矢部:僕も、百舌彦さんがクビになりそうなときにビクってなりました。
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本多「道長と百舌彦のような関係が人生の中にあったら素敵」
――こうしてお話を聞いたり、放送を見たりしていると、今も昔も人間の心情だったりやっていることって変わらないなと思うのですが、お二人が「これは平安と変わらないな」とか、逆に「ここは今とは違うな」と思う部分はありますか?
本多:(脚本家の)大石(静)さんが「顔合わせのときに、時代劇時代劇したものというよりも、今の時代に通ずるものをやりたい」というようなことをおっしゃっていたので、自分も今の感覚でやらせてもらったらいいのかなと思って演じている部分はあります。
一方で、走る時に腕を振らないとか、家の中に入るときは必ず左足からなどの所作もあるので、そういう部分はきちんとやらないといけない、という感じですね。
矢部:やっぱり人と人との関わり方は今と変わらないのかなという感覚ではいますけれど、身分の差はすごくあるなとは思いますね。
本多:思っている以上に身分の差ってすごいんやなと思います。
矢部:乙丸も文字を読めるかはわからないですよね。
本多:百舌彦もわからないですね。
戦国時代だと、仕えていてどこかで裏切るとかあるじゃないですか。でも僕らにはそれがないので。百舌彦の場合は(道長と)一緒に一緒に出世するっていう形はありましたけど。でも、そこの裏切りが一切ない関係というのはあまりないよなと思って。
その関係というのは、親友とも違うし……。道長と百舌彦のような関係が人生の中にあったら素敵だなと思いました。
矢部「名もなき人たちの何かが残っているかもしれない」
矢部:自分の仕事が日々小さいなと思ってしまったり、果たして実があるのかなと思ったりすることが、たとえ乙丸にあったとしても、まひろさんが書いた、1000年後にまで残る『源氏物語』の中にももしかしたら、乙丸がいたからってこと、そこまではないかもしれないですけれど、乙丸とまひろさまの関係の何かがそこに残っているかもしれない、と思うんです。
それを今僕らが読むことがあるかもしれないということが、「仕事が小さい」とか「身分が高いとか低い」とか、そういうことだけではない気がして……。「生きている」というか、歴史上には残っていないけれど生きていた人間がいて、それがドラマで描かれることで、何かを感じられるという……。
やっぱり、名前が残ってない僕らみたいな人が圧倒的に多かったと思うんですよね。でも、名もなき人たちが“藤原道長”っていう人物の中にちょっと残っていて、歴史や読まれた歌、『源氏物語』にもきっと残っているんじゃないかなと思うんです。それってすごくロマンがあることだし、日々生きることを肯定できるようなことなんだと思います。
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『光る君へ』
『光る君へ』は、平安時代中期の貴族社会を舞台に、千年の時を超えるベストセラー『源氏物語』を書き上げた紫式部(まひろ)が主人公。のちの紫式部であるまひろが、藤原道長への思い、そして秘めた情熱とたぐいまれな想像力で「光源氏=光る君」のストーリーを紡いでゆく姿を描く。脚本を手掛けるのは、『セカンドバージン』や『知らなくていいコト』『恋する母たち』などで知られる大石静さんで、今回が2度目の大河ドラマ執筆となる。 THE GOLD 60編集部
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