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税務調査は「午前中」に要注意。納税者のボロを誘う…税務調査官の一見“無意味な会話”の真意【税理士が事例をもとに解説】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年7月25日 10時15分

税務調査は「午前中」に要注意。納税者のボロを誘う…税務調査官の一見“無意味な会話”の真意【税理士が事例をもとに解説】

画像:PIXTA

税務調査官とのやりとりは、一見、何の意味もないことのように思えても、納税者が後に言い逃れができないよう、外堀を埋めようとしている可能性が高いです。調査官の質問には全て意図があると考えて、税務調査当日には、突っ込まれる余地のない適切な回答をするよう、ちょっとした雑談にも細心の注意が必要です。本記事は、多くの相続事例を担当してきた大田貴広氏の著書『相続のお金の残し方「裏」教科書 専門税理士が限界ギリギリまで教える“99%節税できて100%モメない”方法』(KADOKAWA)より、一部を抜粋・再編集してお届けします。

税務調査当日の“タイムスケジュール”

税務調査は、税理士に相続税申告書の作成を依頼していれば税理士を通して日程調整した上で行われます。

場所は、亡くなった方の自宅もしくは相続人の自宅で行われることが多いです。当日調査官は2人1組でやってきます。納税者と調査官との間で言った言わないがないように、必ず2人でやってくる決まりとなっています。調査は午前10時から夕方の16時頃まで行われます。1日のタイムスケジュールは次の流れです。

10~12時(午前中) 亡くなった方の経歴、趣味、病歴、家族の経歴や勤め先などのヒアリング

12~13時(お昼休憩) 調査官が退席(昼食の準備は不要)

13~16時(午後) 銀行へ同行(貸金庫がある場合) 、午前中の調査の伏線を回収、家の中の確認、申告漏れ財産の指摘

調査に入る前に、名刺交換を済ませるとまず軽く雑談をします。これは緊張している納税者を和ませて証言を取りやすくすることが目的です。

一見何の意味もないように感じるが…

そしていよいよ調査です。午前中の調査では、まだ核心には触れてきません。ここではまずご家族の経歴を聞きます。

亡くなった方の出身地や学歴、職歴、どのようにして資産を築いてきたのか、その背景を探ります。特に亡くなる直前の状況は事細かに聞かれますので、闘病の頃が鮮明に思い出され、涙されてしまう納税者の方もいます。また亡くなった方だけではなく、その配偶者や子供の経歴や勤め先なども確認されます。

このように、相続税の税務調査ではまず核心には触れず、亡くなった方の略歴を中心に確認します。世間話をするような感じで調査が進むため、一見何の意味もないように感じますが、実は午後に核心をついた質問をするための準備をしているのです。午前中の段階で言い逃れができないよう、納税者が油断しているうちに外堀を埋めていくのです。

消えたお金は?→「ギャンブルが趣味だった」と嘘をつくとどうなるか

亡くなった方の出身地を聞くのは、その場所の近くの金融機関に申告漏れをしている預貯金口座がないかどうか、また先代から相続した不動産がないかどうかなどを探っています。趣味がゴルフや旅行という場合には、ゴルフ会員権やリゾート会員権の申告漏れがないかを確認します。

また性格を聞くのは、その暮らしぶりからどのようなお金の使い方をしていたのかを確認するためです。亡くなった方が堅実でお金に厳しいタイプと証言された場合は、「通帳から不明な出金があれば、タンス預金をしているかもしれないので詳しくチェックしてみよう」ということになります。逆にギャンブルや交遊費などで散財する癖のある人だったということになれば、多少の不明出金があっても自然ということになります。

ではこれを逆手にとって、ギャンブルや交遊が趣味だったと証言し、嘘をついた場合はどうなるでしょうか。税務署はその職権を使って、実際にお店や故人の関係者へ聞き込み調査を行い、事実かどうかを徹底的に確認しますので、簡単に嘘がバレてしまいます。嘘がバレた場合は最高40%の重加算税というペナルティが割増しでかかりますので、タンス預金を隠そうとしている場合は申告しておくほうが賢明でしょう。

納税者のボロを誘う“巧妙な手法”

亡くなる直前の状況を細かく聞くのは、どのタイミングで家族へお金の管理が移っているのかを把握するためです。

例えば、亡くなる3ヵ月前に500万円を引き出したにもかかわらず、この現金の申告がなかった納税者がいたとします。ここでいきなり「500万円の引き出しがありますが、内容ご存じですか?」と納税者に質問すると「いや、親のお金なので私は全く分かりません」と白を切られてしまうことになります。税務署はこうならないように午前中の調査の段階で500万円の引き出しには触れず、何気ない会話からさりげなく相手のボロを誘うのです。

調査官「親御様はいつまでお元気でしたか?」

納税者「亡くなる半年前から体調を崩して入院をしていました」

調査官「では親御様のお金の管理はどなたが行っていたのですか?」

納税者「入院してからは私の妻が行っていました」

このような具合に核心に触れる前に裏取りできれば、500万円は親が引き出したという言い訳ができず、納税者が分からないと言い逃れできなくなります。

「老人ホーム費用」も狙われている

また病院費用や葬儀費用の引き出しも、亡くなる直前でされることが多く税務署は必ず確認してきます。特に引き出したお金と、手元に現金として残っているお金の整合性が取れているのかを徹底的にチェックします。

使って手元にないからと無視していいわけではなく、あくまで亡くなった時点での手元現金を計算します。よって、生前に引き出した葬儀費用は申告しなければなりません。ただし、一定の葬儀費用は相続税の計算上差し引くことができますので、全て申告しなければいけないわけではありません。

調査官は老人ホーム費用も狙っています。入居費用は老人ホームによってさまざまですが、一部返還される場合もあり、この部分の申告漏れが多いのです。

例えば、老人ホ ーム入居金として1,000万円を支払い、亡くなった際に500万円が返還される場合は、この500万円も相続財産に加えて計算しなければなりません。相続税の税務調査に入られてしまう最も大きな原因は、このような預貯金の計上漏れです。

子供や孫の経歴や職業を聞くワケ

また子供や孫の経歴や職業を聞くのは、年齢や職業に見合わない財産があるかどうかを確認するためです。

例えば30歳の孫が金融資産を1億円持っていたとします。一般的に30歳で1億円を自分で蓄財することは難しいので、両親や祖父母からの援助があったと考えることが自然です。もしこの孫が一般的な企業に勤めているという内容を税務署が聴取できれば、1億円の財産をどのように形成したのかを午後の調査で追及することができるのです。

このように午前中の調査では、納税者に悟られずに、後々言い逃れができないように外堀を埋めてくるのです。調査官の質問には全て意図がありますので、心に留めておきましょう。

大田 貴広

税理士

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