子へ「年110万円」贈与していた父、逝去…相続税もきちんと納税→まさかの〈追徴課税〉に。税務調査官が心の中でガッツポーズした“妻の証言”【税理士が解説】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年8月2日 10時15分
画像:PIXTA
毎年110万円までの贈与には税金がかかりません。しかし、多くの人がやりがちな方法で生前贈与をすると「年110万円以内」でも課税対象となってしまいます…。庶民的な家庭から100億円を超える資産家まで、多くの相続事例を担当してきた相続専門の税理士である大田貴広氏の著書『相続のお金の残し方「裏」教科書 専門税理士が限界ギリギリまで教える“99%節税できて100%モメない”方法』(KADOKAWA)より、一部抜粋して紹介します。
税務署が最も狙っている「名義預金」
家族名義の通帳を作って預金をしていませんか? 実はやり方を間違うと、将来多額の相続税をとられる可能性があります。親から子へお金をあげると贈与となり、年間110万円以内であれば非課税です。
ですが、単に親が子供名義の通帳に預金をしても、贈与とはなりません。名義が子供であっても親が管理している場合は実質的に親の財産とみなされ、家族名義の預金に対しても相続税がかかります。これを名義預金といって、相続税の税務調査では最も問題となるのです。この記事では、名義預金と見られてしまうご家族の典型的なパターンをご紹介します。
110万円の範囲内で毎年“子供名義の通帳”に振り込み
登場人物は、父・母・子供、このお父さんは「将来子供にかかる相続税を減らしてあげたい」と考えていました。そこでお父さんは「毎年110万円を子供の通帳に移して自分の財産を少しずつ減らしていこう」と思いつきます。
お父さんは相続税を減らすために、贈与税がかからない贈与税の基礎控除である110万円の範囲内で、毎年子供名義の通帳に振り込みをしていました。一方でお父さんは「子供たちへお金を渡してしまったら、無駄遣いされてしまうかもしれない」と考え、通帳は手元に保管して、子供にこのお金のことを内緒にしていました。よって、子供名義の預金に関わる通帳・印鑑キャッシュカードなどは、全て父の自宅にある金庫内で保管されていました。
時が経ちこのお父さんが亡くなります。相続人である母と子供は、悲しみに暮れながらも、きちんと相続税申告と納税を期限内に行いました。
それから約2年後、相続税のことなんて忘れていた最中に、税務調査の連絡が来ます。調査当日になると、調査官は2人1組でやってきてお父さんのことを根掘り葉掘り質問します。そしてついに子供名義の預金口座についても質問されます。
「こちらの子供名義の銀行預金はどのように貯めたかご存じですか?」と聞かれるとお母さんは「これは主人が秘密の生前贈与で110万円ずつ積み立てをしていました」と答えてしまいます。この証言をとった税務署は、心の中でガッツポーズをしながら「子供の銀行預金は、実質的に亡くなったお父さんの財産なので相続税を追徴課税します」と言ってくるのです。
生前の相続税対策が全て無駄になるのは、「名義預金」だけじゃない
親が子供にコツコツ生前贈与してきたにもかかわらず、その苦労が全て無駄になり、最終的に相続税を追徴課税されてしまうこの問題のことを「名義預金の問題」と呼んでいます。
名義預金のようなものは他にもあり、名義株式や名義保険にも気をつけなければなりません。名義株式は、実質的には父のものである家族名義の株式や公社債、投資信託を言 い、相続税の課税対象となります。特に中小企業オーナーは、自社株式の名義に家族を入れていることが多く、その株式が実質的に誰のものなのかを徹底的にヒアリングされます。
また、見落としがちなのが名義保険です。子供が被保険者になっている保険契約でも、保険料を支払っているのが父である場合には、実質的に夫の財産となります。名義保険は、保険契約の解約返戻金相当額が相続財産に加算されます。
大田 貴広
税理士
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