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物件の“真価”を決めるのは「利便性」だけではない…不動産投資の成否を左右する「地歴」とは【不動産投資のプロが解説】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年7月4日 7時45分

物件の“真価”を決めるのは「利便性」だけではない…不動産投資の成否を左右する「地歴」とは【不動産投資のプロが解説】

(※写真はイメージです/PIXTA)

不動産投資では、物件の周辺地域について把握することも重要です。とはいえ、駅からの距離や近場に学校・スーパーがあるかなどといった「利便性」にばかり注目していると、物件本来の価値を見落としてしまうかもしれません。そこで本記事では『新富裕層のための本質的不動産投資』(明日香出版社)より一部を抜粋・再編集し、著者の杉山浩一氏が語る「物件選びにおける〈地歴〉の重要性」についてご紹介します。

「地歴」とは何か?

物件を見るときには、周辺の土地もしっかり見なければと思いつつ、駅からの距離や、学校やスーパーマーケットへのアクセスなど、利便性という観点に終始してしまうことが少なくありません。

土地を見る際には、長い歴史の中でその地域がどのような位置づけだったのかという地歴についても、併せて確認することが重要だと私は考えています。地歴とは文字通り、その土地にまつわる歴史です。

例えば、神社の近辺というのは基本的に、高台だったり地盤が固かったりして、水害や地震に強いものです。先人が叡智を尽くして選んだ場所なのだといつも実感させられます。

長い歴史を生き抜いてきたという事実は安全性の証しでもあります。また、このような地域であれば、周辺に風俗店などが新たにつくられる心配もないので、子育て世帯も安心して住むことができるでしょう。

例えば、過去に工場などが立っていた場所には土壌汚染のリスクが存在します。事前に汚染の有無を調べる必要が出てきます。これも誤解がないように申し上げておくと、「過去に工場があったから、その土地はダメだ」という単純な話ではありません。

物件の購入を検討する際には、過去にそこに何が存在していたのか、どのような意味を持つ土地だったのかを事前に把握しておき、懸念がある場合には、相応の対策がなされているのかどうか、リスクを上回るメリットがあるのかどうかといった点を検討する必要があります。

地歴を通じて、地域やその土地の経緯、まさに歴史を知ることは、リスクを知るだけでなく、深い愛着にもつながっていきます。以前は国会図書館まで出向いて調査する必要がありましたが、今はネットでも確認できますので、調べることをお勧めします。

その土地の成り立ちも重要

さらに、危険性の有無だけではなく、どのようにしてその地域が成り立ったのかという経過についても知っておいて損はありません。

例えば、都心に近い下町エリアの中には、広く真っすぐな道路が整備されているところがあります。その理由は、太平洋戦争の際の空襲でいったん焼け野原になり、その後、ゼロから街がつくり直されたからです。

これとは逆に、世田谷区などで太平洋戦争が起きたときに空襲を受けていないエリアでは、以前の田舎道が整備されないまま入り組んだ状態の上に新しい街が出来上がっています。

あるいは、近年になって鉄道が通った地域。例えば、つくばエクスプレス沿線などは駅前に商店街などがなく、少し閑散とした雰囲気です。これは、一面が畑だったところを切り開いて鉄道を通したためです。

すべてが新しくきれいで、チェーン店やショッピングモールなどはありますが、老舗の商店など古きよき味わいのあるもの、あるいは、歴史的な面白さを求める人にとっては、画一的で物足りない街という見方も成り立ちますし、「いかがわしさがない」という言い方もできるかもしれません。

地歴の把握と土地柄の理解が「入居率」を左右する理由

それに対して、終戦後に生まれた商店が形を変えながら愛され続け、今も人情と活気に溢れているのが下町です。

地元の人に聞けば、「あれを買うならこの店、あれが美味いのはこの店」といくらでも話が出てきます。このような歴史の妙味のようなものは、新興地では決して味わうことができないものの1つだと言えます。

利便性が高く清潔で整然とした街と、歴史の流れと共に成熟した面白みのある街。これらはまさしく好みの問題なので、どちらが良いということは必ずしも言えません。それでも、好みは入居者の物件選びに大きな影響を与えます。

だからこそ地歴を把握し土地に対する理解を深めること。その土地の成り立ちから見る視点を持つことも大切です。

反対運動が激しいマンションほど“よく売れる”!?

もともとその地域に長く住んでいた人たちが、「息子が独立するからこのマンションを勧めたい」とか「高齢になったから一軒家を売ってこのマンションに入りたい」といった声と共に集まってくるマンションがあります。

これは「良いマンション」であることの1つの基準だと考えています。駅からの距離や方角、建築資材や内装、設備といった点も考慮すべき点ではあります。しかしながら、究極的な1つを選ぶとすれば、私はやはり、地元に長く暮らす方々の目を挙げることになります。

その土地を知り尽くした人は、「どうしてこの場所にマンションが建ったのだろう?」と首をかしげるような物件には手を出しません。地元の人たちが納得したうえで選んでいる事実そのものが、その地域におけるニーズの存在を裏づけています。これ以上ない評価を得ていると言っても過言ではありません。

これは新築分譲マンションを巡る余談ですが、マンション業界ではその昔「断固、建設反対!」といった運動が起きるマンションほど、いざ建ててみるとよく売れるといわれていました。

もちろん、本当に住環境を破壊しているような悪質なケースは例外ですが、反対運動が激しい場所は、近隣の人たちが住環境を大事にしているところであることが多いのです。

私の経験では、近隣の反対していた方々も、何が何でも建設反対ではなく、その地域の環境に合った建物、住宅にしてほしいという要望であることがほとんどです。

ゆえに、私自身の経験においても、反対だと言っていた近隣在住の高齢女性が、実際にマンションが建ったところ、「娘のため」と購入してくださったことがあります。

地元の方々に認めてもらえる、受け入れられる土地というのは、物件が建つ以前から、多くの方が評価している場所ということなのでしょう。

バブル期からずっと残っている「中古物件」に秘められた価値

私たちはバブル期に建てられた中古物件を扱っているため、当時その物件を建てた方とは実際に会えない場合が多いです。

それでも、その物件がそこに残っているということは、おそらくその土地の地主だったその方が、「この場所だったら地盤も良くて安全だろう」とか、「利便性が高くて入居者が多く集まるだろう」などと考えたためだと推察されます。

言い換えれば、多くの入居者が住んでくれるだろうと考え、そこに十分な収益性を見いだしたからこそマンションを建てるという大きな投資の決断をしたものと想像することができます。

実際のところ、現在に至るまで誰かが住み続けているという事実は、その狙いが決して外れていなかったことを証明しています。それゆえ、中古の賃貸物件で明らかにおかしな土地に立っているのに満室稼働しているような物件を目にすることはありません。

分譲マンションの場合は、ある意味では売ってしまえばそれで終わりです。しかし、賃貸マンションでは、一人ひとりの入居者が気に入って住み続けてくれたり、空室が生じてもすぐに別の誰かが入ってくれたりしなければ存続できません。

その点で、長く人々が住み続けているマンションは、魅力的な土地に建てられたとも考えることができるのです。

杉山 浩一 株式会社プラン・ドゥ 代表取締役

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