1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. 経済

前妻との間の疎遠な30代息子・娘の教育費に“5,000万円”支払った54歳父が「アラ還再婚」を望み…資産潤沢な父の申し出に、小さく頷いた〈子の真意〉【行政書士が解説】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年7月4日 11時30分

前妻との間の疎遠な30代息子・娘の教育費に“5,000万円”支払った54歳父が「アラ還再婚」を望み…資産潤沢な父の申し出に、小さく頷いた〈子の真意〉【行政書士が解説】

(※写真はイメージです/PIXTA)

厚生労働省の人口動態統計(令和4年)によると、結婚した夫婦の4組に1組は再婚。特に近ごろはシニア層の再婚件数が増えていることがわかります。再婚自体は当然、自由意志ですが当事者間だけの問題とはいかず、トラブルとなるケースも少なくないようで……。本記事では幸利さん(仮名)の事例とともに、行政書士の露木幸彦氏が熟年再婚の注意点について解説します。

アラ還の再婚

定年が間近に迫った中高年のことを「アラ還」といいますが、約4年にわたるコロナ禍で意識を改めたアラ還の「おひとり様」が増えたように思えます。「いつまでも独りでいたくない! もしコロナにかかったら……」と。

万が一、感染しても現在は自宅療養が基本ですが、過去にはそのまま治療を受けられずに亡くなるケースもありました。感染時の看病はもちろんですが、自宅内の家事、そして老齢時の介護まで頼める相手がいかに大事か。人生100年時代の到来でパートナーの重要性は高まっていますが、コロナ禍でその傾向はより顕著になったといえるでしょう。

たとえば、50~54歳の未婚率は20%(2015年)。1985年は3%であったため、30年間で約7倍に増加しています(厚生労働省調べ)。

いままでずっと独身だった男性がどこの誰と結婚しようが基本的には自由です。誰に気兼ねせず、籍を入れてもいいでしょう。しかし、一度は結婚したことがある「独身」もいます。具体的には途中で死別もしくは離婚したのですが、どちらも「前の」家族がおり、再婚した場合に影響がおよびます。

筆者は行政書士・ファイナンシャルプランナーとして夫婦の悩み相談にのっていますが、今回は離婚経験のあるバツイチ男性、幸利さん(仮名/54歳)のケースを取り上げましょう。

なお、本人が特定されないように実例から大幅に変更しています。また家族の構成や年齢、離婚や再婚の経緯などは各々のケースで異なるのであくまで参考程度に考えてください。

再婚したいが…憚られる理由

「1人ではなにもできないと悟ったのは彼女のおかげです。『前』と比べて自分にも他人にも寛容になりました」と笑みを浮かべるのは幸利さん。

「前」とは離婚のこと。彼は34歳のときに前妻と別れており、それ以降はずっとフリーの状態。このまま再婚せず、一人で余生を過ごすつもりでした。幸利さんの地元はサーフィンで有名な観光地。そこでサーフィン三昧の暮らしをしていました。そんななか、3年前に友人の紹介で同じ年の女性と知り合いました。

彼女もバツイチで、結婚生活の苦労話を投げ合っているあいだに意気投合。彼女は都内に住んでいましたが、彼女が幸利さんの地元にやってきて、一緒に住むことになったのです。しかしいまだに籍を入れず、同棲の状態を続けています。幸利さんにとって悩みの種は前妻とのあいだの息子(32歳)、娘(30歳)の関係。

私立の高校、海外留学、そして大学の獣医学部(息子)と薬学部(娘)……なんの相談もなく前妻が2人の進路を決定。幸利さんがいわれるがまま支払った総額は5,000万円超。現在、前妻とは完全に音信不通ですが、かろうじて2人とは接点があり、年始には年賀状で孫の誕生を知る程度には付き合いがあります。

幸利さんと彼女は夫婦同然の生活を送っていますが、なぜ、「夫婦」にならないのでしょうか?

「彼女から何度も頼まれています。でも、なかなか踏ん切りがつかなくて……。この年になって再婚なんて息子たちがどう思うか」と懺悔します。もし彼女と籍を入れた場合、2人の相続分は半分に減ります。法律で決められた相続分を法定相続分といいますが、幸利さんが再婚せず、遺言を残さなかった場合、息子、娘それぞれ2分の1ずつです。しかし、再婚した場合は4分の1ずつに下がります。2人は幸利さんが母(前妻)を裏切ったと感じるでしょう。孫を通じての交流が途絶えることを心配していたのです。

しかし、彼女はなかなか籍を入れないことを不満に思っていました。とはいえ、あまり露骨に言うと財産目当てだと勘違いされ、幸利さんとのあいだに溝が生まれ、関係がこじれる危険があります。そのため、あまり強く言うことを控えてきました。

法律婚と事実婚の違い

籍を入れない事実婚と、入れる法律婚は大きく異なります。法律婚の場合、戸籍上の妻は2分の1の法定相続分(法律で決められた相続分)を有しており、生命保険の受取人になることは問題なく、遺族年金も受け取ることができます。

事実婚の場合はどうでしょうか? 戸籍上の妻ではない彼女に法定相続権はありません。また生命保険の受取人になったり、遺族年金を受給したりするのは簡単ではありません。なぜなら、煩雑な書類を揃え、戸籍上の妻と同等だと証明しなければならないからです。

いままで彼女は幸利さんに尽くしてきましたが、幸利さんに万が一のことがあった場合、大半の財産は息子、娘が手に入れます。彼女にはほとんど残りません。彼女の年齢を考えると経済的に厳しい状況になります。彼女は都内での仕事を捨てて幸利さんと一緒になったのです。

もともと幸利さんには前立腺の肥大の傾向があったのですが、医師から「いつ前立腺の癌になってもおかしくない」と釘を刺されており、そのことも彼女の焦りを助長しました。

もともと相続と介護はトレードオフではありません。たとえば、相続させるから介護して欲しい。介護しないのなら相続させない。これはどちらも間違っています。相続は相続、介護は介護で別に考えるべきです。しかし、遺産をもらう側は切り離して考えられないでしょう。遺産をもらったら介護しなければならないというプレッシャーを感じるはずです。遺産が多ければ多いほど、そのプレッシャーは大きくなります。

子どもたちの了承を得て、再婚が実現

そのことを踏まえ、幸利さんは意を決して息子、娘に問いかけたのです。「どう考えているのか」と。そうすると、父親(幸利さん)になにかあっても引き取りたくないと答えたのです。「それなら彼女に託していいのか」と続けると、2人は小さく頷いたのです。

幸利さんはようやく子どもたちの承諾を得ることができたのです。後日、役所に婚姻届を提出し、幸利さんと彼女は戸籍上でも正式な夫婦になりました。

再婚と家族の問題

こうして幸利さんは親戚筋に波風を立てず、万が一の場合、彼女を金銭的に守る準備ができたのは大きな収穫でした。一方で幸利さんは子どもたちから「親父の面倒をみたくない」とはっきりと言われた格好です。確かに金銭的に支えてくれたことに対し、有難いと思っていますが、それでも母親(元妻)を捨てた父親を介護しようという気持ちがないことが明らかになりました。幸利さんはなおさら、彼女の存在を大事に思うようになったようです。

このように幸利さんは前の家族に冷たくされ、熟年で再婚したのですが、夫、妻どちらも再婚の場合、結婚全体(50万4,000組)の9%(4万7,000組)です。(2022年、厚生労働省の人口動態統計)。10年間で453万組が離婚しているので再婚率が上がるのは当然ですが、彼らは前の家族との問題を抱えています。どちらも大事な家族なので優劣をつけるのは無理です。

上手く折り合いをつけて、新しい家族と幸せになってください。

露木 幸彦 露木行政書士事務所 

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください