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悔しすぎます…世帯年収1,600万円の50代共働き夫婦、54歳妻が「住宅ローンの繰り上げ返済」を大後悔。“自慢のタワマン”を泣く泣く売却したワケ【FPの助言】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年7月17日 11時15分

悔しすぎます…世帯年収1,600万円の50代共働き夫婦、54歳妻が「住宅ローンの繰り上げ返済」を大後悔。“自慢のタワマン”を泣く泣く売却したワケ【FPの助言】

(※写真はイメージです/PIXTA)

国土交通省の「令和4年度住宅市場動向調査」によると、注文住宅(新築)購入者のうち約8割以上が「住宅ローン」を利用しているそうです。住宅ローン利用者のなかには、できれば早く返してしまいたいと「繰り上げ返済」を検討、実行している人も多いと思いますが、繰り上げ返済には思わぬ落とし穴があります。事例をもとに、住宅ローン繰り上げ返済の注意点と対策をみていきましょう。石川亜希子FPが解説します。

借金は早く返したい…住宅ローンは「繰り上げ返済」が正解か?

マイホームを購入する際、多くの人は住宅ローンを利用することになります。国土交通省の「令和4年度住宅市場動向調査」によると、注文住宅(新築)購入者で約83%、分譲集合住宅購入者で約60%が住宅ローンを利用し、返済期間は多くの場合30年以上を選択しています。

実際に住宅ローンの返済が始まると「繰り上げ返済」したほうがいいかな? と気になる場面もあるでしょう。実際、筆者も繰り上げ返済をしていました。

繰り上げ返済とは、毎月の返済額とは別にまとまった金額を返済することです。返済は全額元金に充当されるため、その元金にかかる利息も支払う必要がなくなり、結果として返済総額を減らすことができます。

繰り上げ返済には、その時点での残りの元金を全額返済する「全部繰り上げ返済」と残りの元金の一部を返済する「一部繰り上げ返済」があります。私たちがイメージする繰り上げ返済は「一部繰り上げ返済」を指すことが多いかもしれません。

この「一部繰り上げ返済」には、①「返済期間短縮型」と②「返済額軽減型」の2種類があります。

①「返済期間短縮型」は、毎月の返済額は変えずに返済期間を短縮する方法です。一方、②「返済額軽減型」は、返済する期間は当初のまま、毎月の返済額を少なくする方法です。

①の場合は総支払額が少なくなるというメリットがあり、②は、毎月の負担額が軽減されるというメリットがあります。そのため、「資金に余裕ができたら、なるべく繰り上げ返済をして、借入金を少しでも減らしたい」という考えの人も少なくないでしょう。

しかし、繰り上げ返済には、デメリットも存在します。

繰り上げ返済による最大のデメリットは、当たり前ですが、手元にある資金が減少してしまうことです。

無理に繰り上げ返済を行った結果、“想定外”の出費で資金が枯渇し、首が回らなくなるケースが発生してしまうのです。

タワマン購入も…10年で泣く泣く売却した“想定外”の理由

誠さん(仮名・57歳)、真由美さん(仮名・54歳)夫婦は、都内に住む共働き夫婦です。

2人は約10年前に、5,000万円のタワーマンションを購入しました。当時、年収は誠さんが1,200万円、真由美さんが400万円と、世帯年収に直すと1,600万円ほどありますした。購入時はもちろん住宅ローンを利用しましたが、ライフプランを鑑み、誠さん単独で4,000万円のローンを組みました。

タワマンを購入した当時、娘はまだ6歳。本格的に教育費がかかってくる前になるべく住宅ローンの残債を減らしたいと考えた2人は、積極的に「繰り上げ返済」を行っていました。

それから10年のあいだ、ひとり娘とともに家族3人、憧れのタワマンで理想的な生活を送っていたのですが……。

一家に不幸が訪れたのは、ほんの数ヵ月前のことです。誠さんが出張先のホテルで倒れ、そのまま亡くなってしまったのです。心筋梗塞でした。

真由美さんは、あまりに突然の出来事に茫然自失となったものの、なんとか葬儀などを終え、そして、高校生になった娘と2人きりの生活になります。「あ、そうだ、夫はもういないんだった……」日常生活でふとそう感じるたびに、悲しみに暮れる日々が続きました。

しかし、悲しんでばかりもいられません。住宅ローンの残債約1,500万円については、「団体信用生命保険」が適用されたため支払う必要はなくなりましたが、預金口座には200万円しか残されていません

積極的に繰り上げ返済していたことに加え、中学受験を経て中高一貫校に通う長女の教育費がかかっていたこと、そして、その中学受験に寄り添うため数年前に真由美さんが仕事を辞め専業主婦になっていたことが、預金残高が少なくなっている主な原因です。

遺族年金もあることから、すぐに生活に困るわけではありませんが、これから長女は大学受験を控えています。塾代や大学の学費がかかるほか、住まいであるタワマンの維持費も馬鹿になりません。

このままタワマンに住み続けたとして、どこかで現金が足りなくなってしまう可能性が高い状況です。

「繰り上げ返済していなければ、その分は現金として残っていたってことですよね……たらればであることは自覚していますが、それにしてもあんまりじゃないですか。悔しすぎます」。

真由美さんは納得がいかないようでしたが、こんな事態になることは誰しも予想できませんでした。親族とも相談し、真由美さんは熟考の末、断腸の思いで家族の思い出が詰まった自慢のタワマンを泣く泣く売却することになったのでした。

「家計の資金繰り表」で“想定外”の事態に備える

真由美さんはその後、タワマン売却代金で中古のマンションを購入し、余った残額は現金として残し、新たな生活を始めることとなりました。

タワマンを売却してしまったことは残念でしたが、母子2人で再出発するために家計状況をクリアにできた状態といえます。

当面は、遺族年金として月に15万円ほど受給できますが、それだけでは家計は赤字になってしまうでしょう。また、子が18歳になると遺族年金の支給額は減ってしまいます。真由美さんはパートを探すことにしたそうです。

家計簿の進化版「家計の資金繰り表」を作って家計収支を“見える化”

これからのマネープランに必要なのは、家計簿から1歩進んだ「家計の資金繰り表」を作ることです。

企業は、売り上げがあって利益が見込まれていたとしても、入金や支払いのタイミングしだいでは現金や預金残高不足になってしまうことがあり得ます。そのようなことがないよう資金繰りを正確に把握しておく必要がありますが、これは家計においても同様です。

資金繰り表作成の目的は、毎月の収入と支出を“見える化”することです。

支出は毎月の固定支出だけでなく、税金や保険料など年に数回、年に1回という支払いも書き出し、記載漏れのないように作成してみましょう。こうすることで、各支出項目について予算が立てられるので、使い過ぎにもすぐに気づき、早め早めに修正していくことが可能です。

現在の資金繰りが把握できたら、ライフイベント、教育費、老後の生活費、予想される根金額なども書き出してみましょう。これからの未来についても、早いうちから把握し可視化しておくことが大切です。

そのうえで、いまから準備すべき金額はいくらなのか逆算して、パートでどのくらい収入を得る必要があるのか考えていきましょう。

ローンを組む際は対策をとったうえで「余力」を残す

長年続いたデフレ時代、資金に余裕があると積極的に住宅ローンの繰り上げ返済する人も少なくありませんでした。借金している状態が落ち着かない、という日本人の国民性もあるかもしれません。

しかし、「繰り上げ返済=現金を減らすこと」です。繰り上げ返済ばかりに注力し、想定外の出来事に対応できなくなってしまっては本末転倒です。

最近は物価の上昇が顕著で、インフレへの転換期であるといわれるようになりました。インフレ下になると住宅ローンの金利が増え、ますます繰り上げ返済したほうがいいようにも思えますが、金利が高いゆえに運用して金融資産を増やすほうが効率的な場合もあります。

また、住宅ローンを抱えていても手元に現金があれば、想定外の出来事に対応しやすくなります。

住宅ローンを借り入れる際は、無理なく返済できる融資額を設定したうえで、可能であれば急な出費にも対応できるだけの余力を残しつつ、家計の資金繰りを可視化するようにしましょう。

石川 亜希子 AFP

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