義務教育は3歳から、小学校で飛び級・留年も…日本とここまで違う「フランスの学校事情」【東京在住のフランス人ジャーナリストが解説】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年7月29日 7時15分
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(※写真はイメージです/PIXTA)
国が違えば教育事情も変わるもの。フランスは日本人も旅行で訪れる比較的身近な国ですが、学校に関しては日本とさまざまな点で違いがあるようです。今回は、日本在住のフランス人ジャーナリスト・西村カリン氏の著書『フランス人記者、日本の学校に驚く』(大和書房)から一部抜粋して、フランスと日本の学校の違いをご紹介します。
フランスの義務教育は3歳から~16歳まで
フランスの学校はどんなところなのか。この章では、日本の学校と比較しながらその輪郭から内容までを見ていく。まず、義務教育が3歳から16歳という点が日本と大きく違う。これは2017年に就任したマクロン大統領の政策により、2019年、小学校就学前の子どもまで義務教育が広がったことによる。基本的に3歳から6歳までの3年間を幼稚園で過ごす。2歳児も利用可能だ。
そして小学校は5年間、中学校は4年間。義務教育の終わりには試験がある。日本の高校入試とは目的が違って、あくまで学んだことが身についているかを確認するものだ。その後、高校が3年間、そして大学が2年から10年へと続く。フランスの学校で重要な試験といえば、高校3年生の終わりにある「バカロレア」だ。これは高校の卒業資格でもあり大学の入学資格でもあって、無事バカロレアを突破すると大学生になることが可能。このバカロレアについては82ページで詳しく述べていく。
義務教育に話を戻すと、年間を通して、授業は9月から翌6月末まで。基本的に6週間か7週間の授業期間があり、その後、2週間の休みがある。つまり6(7)週間+2週間のサイクルを繰り返すのだ。このサイクルは、子どもにとって定期的に休暇を設けることが重要という考え方から来ている。しかも、その休暇は、11月1日(キリスト教のお盆にあたる)や12月25日(クリスマス)など、フランスの重要な祝日に合わせている。
ただ、子どもが休んでいる間、仕事を休めない親も多い。そこで、この期間の子どもの過ごし方をあらかじめ考えておく必要がある。おばあちゃんの家に行かせる家族、保育ママを利用する家族、全国にある「子どもレジャーセンター」に通わせる家族(わたしも子どもの頃によく通っていた)。
この休暇サイクルには賛否両論あり、よいと考える親もいれば、困っている親もいる。49歳の看護師の女性はやや厳しい顔でこう話す。
「この休暇に適応する方法を知っておく必要があります。今回は連休中、幸運にも朝7時に子どもたちをデイケアセンターに預けることができました。夜勤のある夫が午後に子どもを迎えに行きます。休暇のスタートが週の真ん中だった場合は(デイケアセンターは週の始めから預けなければならない)、友人や近所の人と2~3日過ごす手配をしました」
また、退職後の69歳の男性はこの休暇サイクルに好意的だ。
「夏休みを除いて7週間ごとに2週間の休みをとることが、子どもの持つリズムにぴったり合っていると思います。また、年間を通して授業に集中しやすくなります。祖父として、5人の孫と家で過ごす時間も長くとれます」
1週間単位で見ていくと、授業日は月曜日から金曜日まで。水曜日を休みにする学校も多く、水曜日の午後のみを休みにする学校もある。1日の時間割は基本的に、朝8時過ぎから午後4時半まで。日本の学校が午後2時半から3時半に終わるのと比べれば、滞在時間は長い。
その代わり、昼休みをたっぷりとる。フランスでは必ずしも学校で給食を食べるわけでなく、地方の学校ではいったん家に帰って昼食をとる生徒も多い。よって昼休みが1時間半しかなかったら、移動時間も入れると速いペースで食べなければならない。昼休みが2時間あれば余裕のあるランチタイムとなる。
飛び級する子がいれば、留年する子もいる
フランスの学校では飛び級や留年がある点も日本の学校とは違う。勉強が進んでいる子は、まわりの子と同じペースで進級しても授業に興味を持てない可能性があるため、1つ学年を飛ばして進級することもできる。一方、勉強が遅れている子は進級しても授業についていけないので、同じ学年をもう一度やり直す。
小学校での割合として、飛び級の生徒は1%以下、2018年に留年する生徒は1.9%だ。わたしが子どもの頃は、義務教育の間に留年する子が1割程度だったが、今はだいぶ減っている。というのも親が留年に反対するケースが多いからだ。このよしあしは専門家の間でも意見が分かれている。政治家の間でも留年制度の拡大を推し進めている人もいるが、親たちの反対にあい、実現するかは不明だ。
たしかに、2年連続で同じことを学ぶのは、子どもにとっても楽しいものではないはず。ならば次の学年に進み、個人的な支援を受けながら学ぶほうがモチベーションも上がり、自己評価も上がるだろう。支援に切り替えることは得策ではあるが、実際は支援員の人手不足で完全には実現できていない。
飛び級は、たとえば医師や弁護士の家庭の子どもほどその割合が高い。一般家庭の子どもは飛び級の割合が低くなる。やはり学びの環境の違いによるものだろう。いずれにしても日本のように40人学級だったらそれは容易なことではないはずだ。
「小学校で1クラス40人の子ども?本当に?」
2022年から2023年、フランスの小学校で1年生を担当するオレール先生からするとあり得ない状況だ。おそらく、フランスの学校は〝暴れん坊〟の子どもが日本より多いため、40人もいると想像するだけで嘆きたくなるのだろう。
フランス政府のデータによると、小学校のクラスの平均人数は21.9人、中学校は25.6人。日本ではOECDの調べによると、小学校の平均人数は27.2人、中学校は32.1人、高校は平均人数のデータはなさそうだが、40人まではOKだ。
オレール先生はこう説明する。
「フランスの高校では36人のクラスもありますが、小学校では最大でも30人です。わたしのクラスには24人の生徒がいますが、複数のグループに分けて授業をします。1クラス40人という状況になったら、先生も親も抗議すると思います。今は、一部の問題のある地域で小学1年生のクラスは最大12~15人になり、その100%の達成が目標です。その特別なクラスの子どもは小学2年生になるまでに全員がすらすらと文章を読めるように指導します」
まさに、わたしが日本で最初に40人クラスの授業を見たとき、目を疑った。40人もいるにもかかわらず、子どもたちが先生の言うことをよく聞き、驚くほど静かだったから!
西村カリン ジャーナリスト
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