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45歳〜65歳前後の〈壮年期〉にはあらゆる困難が押し寄せる…人生の破滅を招きかねない“精神の危機”を乗り越えるため「若いときからやっておくべきこと」【現役医師が解説】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年6月30日 8時15分

45歳〜65歳前後の〈壮年期〉にはあらゆる困難が押し寄せる…人生の破滅を招きかねない“精神の危機”を乗り越えるため「若いときからやっておくべきこと」【現役医師が解説】

「壮年期」つまり45歳〜65歳前後は、これまでの努力が実り「人生の最盛期」と思われる時期です。しかし職場でも家庭でも大きなストレスを抱えやすく、体調も不安定になりがちです。その結果、精神面で危機的な状況を迎えるリスクもあります。本記事では、『健康の分かれ道 死ねない時代に老いる』(KADOKAWA)の著者で医師・小説家の久坂部羊氏が、壮年期におけるストレスについて解説します。

壮年期(45歳〜65歳前後)に抱えるストレスの実態

この時期は、それまでの努力が実って、人生の最盛期を迎えるのかといえば、そう楽観ばかりはしていられません。フォーマルな場では、経験を積み、実績を挙げることで地位が向上しますが、それに伴い、仕事の範囲は拡がり、責任と義務が増え、人間関係が複雑化する危険に直面します。

もちろん、地位が向上すると、自己信頼感が増し、新たな意欲が湧いたり、賞讃や尊敬を受ける喜びを得ることもできます。しかし、立場に応じた結果を求められ、重大な決断を迫られたり、結果責任を負わされたり、管理者として部下の失態に謝罪させられたりして、ストレスも増大します。

壮年期は人間性が成熟すると同時に、心身の機能低下がはじまる時期でもあります。地位は向上するけれど、無理が利かなくなり、それでも焦って無理をすると、病的疲労の状態になり、「昇進うつ病」といわれる状態になります。定年が近づくと、自分の限界が見えて、「上昇停止症候群」に陥る人もいます。これまで会社に対して果たした貢献と、評価や報酬のギャップに空しさを感じて、やる気をなくしたり、適当にごまかしたりする状態です。

男女ともに更年期障害がはじまるのも壮年期です。女性の更年期障害はよく知られていますが、男性も精巣機能の低下で、ほてりや発汗、イライラや不安、さらには勃起障害もはじまります。

フォーマルな場では自分勝手は許されませんから、体調が悪くてもなかなか休めず、周囲に迷惑をかけることを心配するあまり無理が重なり、高血圧、不眠、暴飲暴食、動悸、息切れ、苛立ち、うつなどの心身の症状が出ることも少なくありません。そんなとき、多くの人は医療に頼ろうとしますが、大もとの原因は心身の自然な機能低下ですから、薬やカウンセリングで解決できるものではありません。

インフォーマルな場では、壮年期は人生の折り返し地点を実感する時期でもあります。特定の仕事、配偶者、住居、子育て、家族関係を選び、これまで生きてきた人生を振り返ったとき、これでよかったのか、もっとましな人生があったのではないか(よい仕事、よい相手、よい子育て……)という思いが止めどもなく湧き出します。しかし、人生をやり直すにはもう遅い。その嘆きと苦悩。そして、このまま老いていくことへの不安と悲しみ……。

もちろん、自己肯定力の強い人は、そんな絶望には駆られないでしょう。しかし、他人の評価を気にする人や、過去に対する悔いを忘れられない人は、薬物依存やアルコール依存、ギャンブル依存やセックス依存などの逸脱行動に出て、失職、経済破綻、家庭崩壊、自殺など、人生の破滅に突っ走る危険性があります。

困難な壮年期を乗り切るには「精神面でのタフさ」が必要

また家庭においても、大きな危機がひそんでいます。子どもが思春期になり、不安定さから反抗したり、非行に走ったりして親を心配させ、また進路や異性問題のストレスを親にぶつけてきたりします。当然、いずれも簡単には解決できません。

さらに自分の老親に介護問題が発生するのもこの時期です。脳卒中(脳梗塞や脳出血)による半身麻痺、寝たきり、認知症の発症、パーキンソン病やALS(筋萎縮性側索硬化症)、脊髄小脳変性症などの難病、さらにはがんや心臓病など、心配と困難な対応にはきりがありません。

愛情たっぷりに子育てをしてきた母親の場合は、子どもの自立(就職、結婚など)により、「空の巣症候群」と呼ばれる精神的危機に陥る場合があります。子育てに愛情は必要ですが、子育てが生き甲斐になってしまうと、本来、喜ぶべき子どもの自立で自分を見失ってしまう危険性があるということです。

このように壮年期には精神面で危機的な状況が山積みですが、困難に直面することで、浮ついた気持ちが抑えられ、真摯に現実対応をすることで、危機が乗り越えられる場合もあります。そうなればふたたび自己信頼感が高まり、精神面での安定が得られることにつながります。

そうなるためには、まず地に足の着いた思考、冷静な判断、協力的な家族関係、ガス抜きのできる友人などが必要となります。いずれも若いときから培っておかなければ手に入りません。

名探偵フィリップ・マーロウの有名なセリフ、「タフでなければ生きていけない、優しくなければ生きていく資格がない」では、後半がもてはやされることが多いようですが、実際に重要なのは前半でしょう。この困難な壮年期を乗りきるためには、やはり精神面でのタフさが必要になります。

久坂部 羊 小説家・医師

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