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【年金月38万円・60代夫婦】余裕の老後生活へシフトのはずが一転。郷里の兄嫁、クルマに90代の母を乗せ、遠路はるばるやってきて…人生最大の番狂わせに「いまは無の境地」

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年6月26日 11時15分

【年金月38万円・60代夫婦】余裕の老後生活へシフトのはずが一転。郷里の兄嫁、クルマに90代の母を乗せ、遠路はるばるやってきて…人生最大の番狂わせに「いまは無の境地」

(※写真はイメージです/PIXTA)

必死に働き、周到に準備し、ようやく迎える定年後の生活。仕事や子育ては計画通りに進んでも、介護問題は簡単ではないようだ。実情を見ていく。

年金月38万円の元共働き夫婦、妻の表情がさえないワケ

2019年に衝撃を持って受け止められた「老後資金2,000万円」問題だが、ここ最近「本当の不足金額は倍の4,000万円」とのうわさが出て、多くの人が不安を募らせている。この情報の出所は報道番組のようで、恐らく番組内で話を面白く盛ったのだと思われるが、人々の心の中に澱のように沈んでいた、円安・インフレ・長生きにまつわる懸念が刺激され、改めて不安が再燃した格好だといえる。

実際のところ、インフレの進行や長生きリスクを考慮しても、老後資金の不足金額が倍になることはないと思われるが、心配性の日本人の多くは「万一」に備えて、さらに財布のひもを固く引き締め、質素倹約に努めるのではないか。

自宅で母親を介護する60代の鈴木さん(仮名)はうつむく。

「うちの年金は、夫と私を合わせて月38万円。自宅もありますし、経済的には大きな問題はないのですが…」

いま、自宅では鈴木さんの90代の母親を在宅介護しているという。

鈴木さん夫婦の自宅は横浜市の郊外。勤務先の同僚だった2人は20代半ばで結婚。それぞれ別部署だが、ともに定年まで勤めあげた。子ども2人はすでに独立して家庭を築いている。

鈴木さん夫婦は、下の子どもが小学校に入学するタイミングに合わせ、現在の家を購入・引っ越した。

「勤務先はそこそこの規模ですが、お互い出世したわけでもなく…。子どもたちの教育費と家のローンのやりくりを頑張り、なんとか世間でいう老後資金の準備をクリアしました」

60歳の定年退職後は65歳まで嘱託社員として働き、その後は家を売却して車も手放し、駅近くのコンパクトなマンションに引っ越す。家の売却代金が余ったら、老後資金に回す…というのが、夫婦2人が思い描いた人生設計であり、実際、定年退職直後までは計画通りだった。

60代になってから、妻の母親と同居に至った経緯

「ところが、実家で母と同居していた私の兄が、母より先に亡くなってしまったのです…」

鈴木さんの兄夫婦は、結婚当初から鈴木さんの実家に同居。子どもも3人生まれ、円満に暮らしているように見えたという。

「亡くなった兄はすでに60代後半でしたし、実家には兄の末っ子も暮らしていたので、母の生活はそのままだと思ったのですが…」

鈴木さんの兄の四十九日のあと、兄嫁から鈴木さんに「母親を引き取ってほしい」との連絡があった。

鈴木さんの父親が亡くなったのは10年ほど前。そのときに「跡継ぎだから」という理由で、実家不動産の名義はすべて兄に書き換えた。母親は数百万円の預貯金を相続したが、鈴木さんは嫁いだ身ということで、なにも相続しなかった。

「兄嫁は〈親は実子が見るべき〉といって、自分でクルマを運転し、遠路はるばる母をウチまで運んできました」

鈴木さん夫婦は驚きで言葉を失ったが、涙を流す母親を追い出すわけにはいかない。幸い、子どもたちが独立した家は部屋が余っている。

「そのとき、母の財産は250万円の貯金だけ。父の財産の大半は兄が相続し、母親は現金をいくらか相続したはずですが、孫への援助などでずいぶん使ったようでした」

鈴木さんの母親の年金は月10万円ほど。すぐ入れる高齢者施設となると、母親の貯金だけでは不足であり、鈴木さん夫婦が資金を出さなければならない。特養となれば、いつ入居できるか先が読めない状況だ。

「夫が〈お義母さんがかわいそうだ。ウチで引き取ろう〉といってくれたのです」

国立社会保障・人口問題研究所の『第7回全国家庭動向調査 報告書』によると、妻の年齢が 70歳未満となる世帯を対象として、親と同居している世帯の割合は15.6%。また夫、または妻の母親と同居している割合は13.3%。

5年ごとに実施されているこの調査で、親との同居割合の推移をみると「2008年」に26.6%、「2013年」に31.5%、「2018年」に19.8%、「2022年」に15.6%と低下傾向ではあるが、それでも現状、7世帯に1世帯程度は親と同居する世帯がある。

また、年齢別に親との同居割合をみると「20代以下」が7.9%、「30代」が9.3%、「40代」が14.4%、「50代」が18.4%、「60代」が20.5%と、年齢が上がるにつれて親との同居割合は増えていく。そこには「親の介護問題」がある。

親の介護、女性の負担が大きく…

同調査によると、介護が必要なケースは「妻の父親」で6.8%、「妻の母親」で13.7%、「夫の父親」で 4.8%、「夫の母親」で11.2%であり、いずれも父親より母親のほうが介護の必要なケースが多い。これは男性と女性の平均寿命の差によるものだと推察される。

主な介護者は、

●「妻の父親」→「妻の母親」が33.2%、「妻」が21.4%

●「妻の母親」→「妻のきょうだい」が31.2%、「妻」が27.6%

●「夫の父親」→「夫の母親」が33.2%、「夫のきょうだい」が19.5%

●「夫の母親」→「夫のきょうだい」が22.5%、「夫」が16.3%

となっている。

60代の妻で「(家族の)介護経験あり」は50.2%。「現にいま介護している」は全体の15.3%。そして、現在介護をしている妻のうち、中心となって介護をしている妻の割合は「20代以下」は60.0%、「30代」は47.1%、「40代」は44.4%、「50代」は54.1%、「60代」は69.3%、「70代」は91.8%となっている。ここから、介護においては妻への依存度が高いことがわかる。

還暦過ぎの人生の目的は「高齢の親を見届ける」だけ

「母はのどかな場所で育った素朴な人。ハキハキと裏表もなく、兄嫁とも仲良くやっていると思っていました。でも、兄嫁の行動を見るに、母に相当思うところがあったのでしょうね…」

鈴木さんは当初、兄嫁とけんかを覚悟で話をするつもりでいたが、夫に止められた。

「お母さんは高齢。心配をかけるのはやめよう」

「人生の終わりは、うちでのんびり過ごしてもらえばいいじゃないか…」

実は、鈴木さんの夫の両親の面倒は、夫の姉夫婦が見ている。

「娘と暮らすほうが気楽なんだよ、きっと」

しかし、鈴木さんの母親を引き取ったことで、鈴木さん夫婦の人生設計は大きく狂ってしまった。

母親の病院への送り迎えのため車は手放せず、なにより駅近のマンションへの住み替えは延期に。

鈴木さんの母親は90代と高齢のため、生活全般の介助は必要なものの、認知症の兆しはない。そして、この生活がいつまで続くのかは、だれにもわからない。

「自分の親ですから、子どもである私が責任を持たなければなりません。自分の子どもたちは見込み通り、計画通りに手を離れましたが、お年寄りの場合、計画は立てられないですよね。怖いのは、夫のもとに母を残して、私が先に死んでしまうこと。私の父も兄も突然亡くなっていますから、杞憂とはいえません…」

鈴木さんは顔を曇らせる。

「母の最期を見る。母を無事に見送る。私のあとの人生、現状はこれがすべてです。私はせめて、子どもたちに迷惑が掛からないよう、しっかりお金を貯めておかないと…。いまは無の境地です」

老後リスクにも、さまざまな形があるのだ。

[参考資料]

国立社会保障・人口問題研究所『第7回全国家庭動向調査 報告書』

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