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「つきまとい行為」に罰金100万円の可能性もある「ストーカー規制法」だが…“罰則が強い法律”が持つ意外なデメリット【弁護士が解説】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年7月25日 17時45分

「つきまとい行為」に罰金100万円の可能性もある「ストーカー規制法」だが…“罰則が強い法律”が持つ意外なデメリット【弁護士が解説】

(※写真はイメージです/PIXTA)

「つきまとい」というと、多くの人は男女の問題などを連想するでしょう。しかし、家に押しかけられたり、どこか関係者のもとへ執拗に連絡が来たりといった事例は男女の問題に限らず、人と人とのトラブルである限り度々起こるものです。こうしたトラブルに対し、法的に有効な解決方法を知っておきましょう。本記事では「つきまといへの対応策」について田代隼一郎弁護士が解説します。

つきまといへの対応策

つきまといへの対応策というと、ざっくりとした法律や手続きのメニューとして以下のものがあります。

まずは、一般法としての刑法。さらに、特別法。特別に定められた法律として皆様が連想しやすいストーカー規制法。加えてこのほかに、条例の活用もあります。条例は各都道府県によって内容は異なります。たとえば福岡県だったら福岡県迷惑行為防止条例といった条例も。ほかにも、民事の手続の活用もあるので順番に見ていきましょう。

一般法=刑法

まず、刑法での対応です。

刑法でつきまといに対して役に立つものと考えられる条文としては、住居侵入等があります。ポイントとしては2つ。1つは人の家や建物に侵入したときには刑罰が科されるというのと、もう1つは、「出て行ってくれ」と要求を受けても出て行かない・拒否をしたもの、これに対しても刑罰が科されるといった内容になっています。前者が住居侵入・建造物侵入、後者は不退去罪といわれます。

住居侵入について個人の家で考えると、つきまといのために庭や敷地内に入るというようなときには、住居侵入といえるケースはよくあります。

もう1つ、集合住宅・マンションのケースでは共用部分に入るということも正当な理由がないときには住居侵入。つまり、つきまといのためにオートロックのかかってる玄関の外側のホールに入って待ち伏せをするなどということでも、住居侵入で対応できるケースがありますので、これは覚えておくとよいでしょう。

同じく、庭とか共用部分とかに入られたあとに、「出て行ってくれ」ということを要求しても相手が従わないときに、警察に動いてもらえるという対応があります。まずこれが使えるのではないかと思います。

ただ、長所と短所があります。長所は、刑法なので罰則が強いという点。3年以下の懲役又は10万円以下の罰金。罰則が強く警察も動いてくれやすいのです。一方、短所としては、対象が狭いという点。つまり、今回でいうと「住居への侵入」です。門扉をくぐって中に入るなど(共用部分も)、広く解釈することで活用ができますが、それでも侵入というケースに限られているという点で対象が狭いという問題があります。

このほかに刑法では、業務妨害などです。営業してる店舗や事務所に何十回・何百回電話をかけてくるといったケース等には業務妨害などもありますが、それもそういう特別なケースに限られています。業務でないといけないため、個人のケースでは使えないなど、いずれにしても刑法については対象が狭いという問題があります。

どうしても罰則が強いと人の行動の自由を制限するという面があるため、その分対象を明確に狭めるという考え方、これは昔からの法律の基本です。そういった点で刑法には長所と短所があります。

特別法=ストーカー規制法

対象をもう少し広げようということで作られた法律が、ストーカー規制法。つきまといで使えそうな言葉としては、

何人も、つきまとい等又は位置情報無承諾取得等をして、その相手方に身体の安全、住居等の平穏若しくは名誉が害され、又は行動の自由が著しく害される不安を覚えさせてはならない。

と書かれています。さらにこれについても1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処するという罰則もあります。

どういうものかというと、「つきまといや位置情報無承諾取得などをしてはいけません。それをすると罰則になります」といった意味です。位置情報無承諾取得とは、スマートフォン等のGPSなどで位置情報をこっそり取るというような行動のことです。かなり使えそうですし、さらに罰則もあるのです。

住居侵入等では懲役3年のところ、ストーカー規制法では懲役1年に減りますが、罰則もあるということで、これも覚えておくとよいでしょう。

しかしここにもやはり制限があります。2つの制限があり、特に1つ目が厄介です。

1つ目は、つきまといなどで位置情報を得るのも同じですが、恋愛感情その他の好意の感情を持ってのつきまといあるいは位置情報の取得やGPSの取得、又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的での行動に制限されていること。

もう1つは、つきまといなどをする相手やその配偶者、あるいはお母さんや子供などの家族、もしくは社会生活において密接な関係を有する者、同棲している恋人やそういう対象に対してのつきまといなどの行為に限るということ。また対象の制限があります。

さらに、目的の制限も。特に目的の制限がネックになることが多いです。たとえば闇金等からの執拗な取り立て行為があったときなど、好意の感情かその裏返しでの恨みの感情、こういった目的がないと、このストーカーの行為で規制することはできないという点で、どうしても限界があります。

一方、好意による感情やその裏返しの行為であれば、建物の侵入ということ以外にも広く使えます。つきまとい行為やGPSの取得行為に関して広く使えるという点では活用できるケースも度々ありますので頭に入れておいてください。

条例

こういった問題でどうしても制限対象外になってしまうというようなケース。先ほどの執拗な取り立てもそうですけれど、意外と使えるのが条例です。都道府県が作るものですので都道府県によって違いますが、たとえば福岡県ではこういったものがあります。

「嫌がらせ行為の禁止」というタイトルで、誰でも正当な理由がなく誰かに対してこういったことをしてはいけないという内容です。つきまとい、待ち伏せ、進路に立ちふさがる行為、住居等の付近での見張り、又は住居等への押し掛けなどが、すべて嫌がらせ行為に含まれます。

行動場面としては非常に使えそうな気がしませんか。さらに2番以下にもいろいろな行為が列挙されています。そういった意味でつきまといや嫌がらせについて、正当な理由がないという制限はもちろんありますが、かなり対象が広くなっています。また、都道府県によって違うとお伝えしましたが、おおむねどこの都道府県も同じような条例があります。

このような条例があると、経験上、警察に動いてもらうというケースもあります。警察から警告を出してもらう、度が過ぎると立件ということもあるため、こういった規制を知っているか知らないかという違いで、できることは大きく変わってきます。

条例は、罰則は弱いのですが対象が広い。こういった長所と短所があります。先ほどの刑法とは、長所と短所が逆転してるので、さまざまなメニューの活用が考えられるでしょう。

その他

最後に、その他。どのようなものが該当するのか、具体的なケースを例に解説します。

たとえば、「ぶつかって怪我をした」と言って執拗に連絡をしてくる人。こうした人に対し、弁護士として筆者が経験上よくあるのは民事調停をしたり、賠償義務がないといったことの確認をしたり、調停で相手が応じなければ裁判をしたり。「なにかを支払え」という要求をする裁判ではなく、「いやいや払う必要がありません」ということを裁判所に認めてもらうこともできますし、あるいは逆に、あまりに状態がひどければそれによってこちらが損害を受けたと慰謝料を請求するということも考えられます。

また、債務整理も考えられます。普通の金融機関はつきまといなどは普通はしませんが、金融機関からの通知などがバンバン来て、でもお金を返すこともできないというときには、弁護士のほうから債務整理をします。「弁護士がつきました。これからそういう手続きをします」という通知を出すと、金融機関からは直接本人に請求することはできなくなります。その時点で不安な状態を解消することができるというメリットはあります。闇金のようなものであればなおさらです。

破産や民事個人再生のような手続きをしなくても、もうこちらからは返還する物はないんだと、金融機関からの本人への直接の請求ができない状態にすることが可能です。弁護士がつくことでお役に立てることはたくさんあります。

以上、「つきまといへの対応」について、一般法・特別法・条例・その他にわけ、解説してきました。それぞれ長所と短所があるため、使いわけることが大切です。お困りのことがありましたら、まずはお近くの弁護士にご相談ください。

田代 隼一郎

弁護士

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