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「親しくない人」との会話に、もう悩まない!<ちょうどいい雑談>ができる、魔法の質問【齋藤孝が解説】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年7月21日 8時0分

「親しくない人」との会話に、もう悩まない!<ちょうどいい雑談>ができる、魔法の質問【齋藤孝が解説】

(※写真はイメージです/PIXTA)

昨今はSNSの普及により「他人との適当な距離の取り方がわからない」という人が増えているようです。人間関係をうまく構築しようと意識するあまり、ストレスが大きくなることも。本記事では明治大学文学部教授の齋藤孝氏が、心地よい人間関係を構築するコツを解説します。

教える人、教わる人、双方が楽しくなるタイで出合った練習法

私は武道の心得があるので、タイを訪れた時に、ムエタイのジムで蹴りや肘打ちを教わったことがあります。基本練習から先生がテンポよく教えてくれるのですが、日本での武道の指導との違いに驚きました。

パンチの練習は、一分一分と変化していきます。ワンツー、ワンツースリー、フック、アッパー、蹴りと、メニューを次々増やしてゆくので、短時間で上達しているような快感がありました。もたっと停滞した空気感がなく、教える側、教えられる側双方に、楽しい気持ちが湧き上がってきます。

もちろんこういった技はすぐ身に付くわけではありません。しかし、一回のレッスンで、階段を上らせてくれる、いやむしろ階段ではなく、エレベーターでトップの風景を見せてくれるような感触がありました。指導者が、私を高みに連れて行ってくれる感覚があり、気分が明るくなりました。

スパーリングで打つパンチの、3分の1くらいに「イエース! OK!」と肯定してくれるので、打っているこちらにも勢いが出ます。スパーリングの最中もよく笑うので、教わるこちらも楽しくなってきます。

その時に、なるほど段取りを教えた後の指導は、「イエス!」だけでいいのだなと、感心しました。トライ&エラーではなく、トライ&イエス方式です。

タイのムエタイクラスの上達法を、コミュニケーションに応用

私の経験した日本の空手道場では、正拳突きだけで3ヵ月かけ、それが習得できたら次と、段階を踏んで、基礎を教えていました。きちんとしたやり方なのですが、これでは教わる側が上達感を得にくく、受講者が脱落し減ってしまいます。習っている人が辞めていってしまうのでは、元も子もありません。

先述のタイのムエタイクラスでは、日本の道場であれば3年かけて教える技術を、一回のレッスンで全部組み合わせていました。大変驚きましたが、優れた基本メニューの組み合わせやテンポを工夫すれば、指導の質はキープされるのです。

吸収が早い人には、通常はABCの順で進むところを、Cから開始するなど、あえて難しい方からやらせたりもする。個人の能力によって組み合わせを変えていくのです。このようなメニューの組み替えは、話をする場面でも応用できます。

A型通りの挨拶、B当たり障りのない雑談、C趣味の話……というのがふつうの会話の流れですが、この相手はリラックスした人だな、近づきたがっているなと感じたら、いきなり会話をCレベルから始め、相手との距離を一気に縮めてもよいのです。

人は自分が好きなものについては、誰とでも友達のように話せるものです。相手の好きなものと自分の好きなものを探りながら上手に擦り合わせ、これだという話題にスッといく。浅めの会話でスタートし、好きなものを語り合えたという印象を心理的に与えれば、距離を縮めることが可能になります。

ここで大事なのは、「プライベート」そのものではなく、あたかも親密な会話をしたかのような「プライベート感」なのです。

相手によって距離のとり方を変える

どこまで距離を詰めてよいかは人によって異なります。まだ親しくなっていない他人が入ってくることに、全く抵抗のない人もいますし、それが著しく苦手な人もいます。

最近はつきあう人を探すのに、出会い系アプリを利用する人が多いと聞きます。メッセージのやりとりの段階で、いきなりLINEのID交換を依頼したりすると、不必要に距離を詰めてきたと、相手に警戒されることが考えられます。実際に会ってからLINE交換という段取りのほうが、ふんわりしていてよいでしょう。

相手がどのようなタイプかを見極める一つの方法は、言葉数です。反応があまりに少なく、自分を開示してこない相手には、いきなり踏み込んではいけません。今の話題について相手から質問をしてくるのであれば、その話題を進めても問題ありませんが、うまく流れていないと感じたら、違う話題にふったほうが無難です。

相手が閉じているかどうかは、表情や声のトーンからもわかります。明るいトーンで話せるのが一番ふさわしい話題でしょうし、トーンが沈むようであればその話題は触れてほしくないと考えられます。身体から発せられるメッセージで判断していきましょう。

外側は柔らかく見えても、内側は硬い人もいます。一見応対に如才はないけれども、あるところから先に鉄壁のガードがあり、内部に入ってくるものを防御するタイプです。そういうタイプは、防御のためにおしゃべり上手だったりもするので、おしゃべりが盛り上がっているから受け入れてくれている、とは限りません。

そのような時は、急がずに徐々に質問を重ね、こちらも相手に共感を表明しながら、相手がどれくらい共感してくれるのかを図りましょう。

距離感やテンポがわからない時は

時には、「そこから先に入ってこないでください」というサインを出す人もいます。距離感がわからない相手に対しては、個人情報に触れないように会話を進めなければならないので、浅いレベルでできる話題を選ぶのがベターです。

そういう時によい質問は、「サブスクとかやりますか?」です。サブスクは無難且つ、漠然とした質問です。観ている番組や好きなジャンルがあれば、ふつうは具体的な返答があるものです。「いや、そうでもないですね」など、具体の答えがかえってこない場合は、質問が相手に入っていないので、こちらから「私はネットフリックスを観ています」「このドラマがよかった」など、3つくらいの情報を自己開示すると、相手から具体の答えが引き出せるかもしれません。

相手が自分に共感してくれているのかどうかもわからないとなると、つきあいは慎重に、型通りにいったほうがいいかもしれません。人は誰にでも、守りたい、触れられたくないことがあるものです。相手が何を守ろうとしているのかは、わかっておいたほうがよいでしょう。

人が避けたい話題は主に、学歴、お金、仕事上の立場、政治、宗教、家族などが考えられます。その人の中で触れても大丈夫な分野を見つけ、それ以外のところは触らないようにして様子を見ましょう。

相手との距離は、やりとりする時間の間隔によっても調整できます。返信をどのくらい寝かせるかは、人間関係をどう構築するかというメッセージでもあります。相手ごとに、返事の間隔をルール化しておくと、悩む必要がなくなりますから、ストレスは軽減されるはずです。お互いの合意があればゆるやかなやりとりは可能です。

齋藤孝

明治大学文学部教授

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